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TPPに参加しても日本の農業は壊滅しない

日本米には質・価格ともに競争力がある

  • 山下 一仁

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2011年10月4日(火)

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 米国などが参加するTPP(環太平洋パートナーシィプ協定)に参加すると日本の農業は壊滅すると、農林水産省や農協が叫んでいる。

 しかし、これは杞憂だ。1993年に妥結したウルグアイ・ラウンドの時に何が起きたか、思い出していただきたい。同交渉では、「一定量以上輸入しない」という数量制限を関税に置き換える「関税化」が大問題となった。農林水産省や農協に「関税では輸入が増えるのを止められない」と言われた農家は「関税化すると農業は壊滅する」と叫んだ。来日したGATT(関税および貿易に関する一般協定)事務局長が「内外価格差を関税に置き換えることが目的だ。1000%以上の関税でもよい」と言っていたのだが、農家には正しく伝わらなかった。

 結局、関税化は日本農業に何の影響も与えなかった。コンニャクイモに対する約2000%をはじめ、200%を超える高い関税を設定したからだ。

 唯一の例外として関税化を受け入れず、ミニマム・アクセス(低関税の輸入枠)を選択した米は、関税化していれば消費量の5%ですんだミニマム・アクセスを、ウルグアイ・ラウンド交渉で8%に拡大させられた。この負担に耐えかねて1999年、政府は米の関税化を受け入れた。しかし、関税化が遅れたペナルティとして、WTO農業協定の規定により5%ではなく7.2%のミニマム・アクセスが日本に課されることとなった。

 今回のTPPではどうか? 今回も、事実が正しく農家に伝わっていない。TPP反対集会に参加したネギ農家が、ネギの関税が3%だと知らなかったことが報道された。農業産出額で見て米を上回る野菜・果実について、関税はわずかだ。関税がゼロになっても影響ない。

 高い関税率の農作物についても、10年かけてゼロにしていけばよい。なのに、TPP参加と同時にゼロになると伝わっている。例えば米1俵(60キログラム)当たりの関税は現在2万円。輸入タイ米の輸入価格は4000円なので、関税と合わせて販売価格は2万4000円する。これに対して日本米の価格は1万3000円だ。5年後に関税が1万円になったとしても、品質的に日本米と競合しないタイ米ですら、その販売価格は1万4000円で日本米を上回る。対応には十分な時間があるのだ。

 また、世界的に品質の高い日本米は価格差が大きくても競争できる。しかも、最も脅威となる輸入中国米との品質の違いを考慮した実質的な価格差は、今では1.3倍(中国産米の国内販売価格を輸入価格で割ったもの)に縮小している。それにもかかわらず農林水産省は「米はほぼ壊滅する」と試算した。以下、詳しく見よう。

「農業壊滅」の議論は作物の種類、収量、品質を無視している

 100年前の柳田國男の時代と同じく、農業界は「日本農業は米国や豪州に比べて規模が小さいので、コストが高くなり競争できない」と主張している。農家1戸当たりの農地面積は、日本を1とすると、EU9、米国100、豪州1902である。

 確かに、規模は重要である。しかし、「日本の農業は規模が小さいので競争できない」という主張は正しくない。もし正しいのであれば、世界最大の農産物輸出国であるアメリカもオーストラリアの19分の1なので、オーストラリアと競争できないはずである。この主張は、各国が作っている作物、面積当たりの収量(単収)、品質の違いを無視している。

 アメリカは小麦、大豆やとうもろこしを作っている。オーストラリアは、牧草による畜産が主体である。どちらも、米作主体の日本農業と比較するのは妥当ではない。また、同じ作物でも単収や品質に大きな格差がある。フランスの小麦の単収はアメリカの3倍だ。フランスの100ヘクタールの農家の方がアメリカの200ヘクタールの農家より効率的なのである。

 次に品質について見よう。世界で4億5000万トンの米が生産されている。そのうち9割近くがタイ米のようなインディカタイプの長い米で1割ほどが日本米のようなジャポニカタイプである。1993年に米が不作になった時、日本は250万トンの米をタイなどから輸入した。ほとんどがインディカタイプだったため人気がでなかった。日本政府は日本米と混ぜて消費者に販売しようとしたが、売れ残った。

 さらに、ジャポニカタイプの中でも品質に大きなばらつきがある。日本国内で、同じ「コシヒカリ」でも、新潟県魚沼産と一般の産地のコシヒカリでは1.7~1.8倍の価格差がある。国際市場でも、日本のコシヒカリは最も高い評価を受けている。現在、香港市場における商社からの卸売価格は、キログラム当たり日本産コシヒカリ380円、カリフォルニア産コシヒカリ240円、中国産コシヒカリ150円、中国産一般ジャポニカ米100円となっている。

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