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原発立地をめぐる利権と電源三法

田中角栄の中央への反骨から自らの中央化まで

  • 山岡 淳一郎

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2011年10月5日(水)

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 原発事故の発生以降、福島には電力供給を負担させられてきた東京への怨念のような感情が渦巻いている。7万人もが、未だに生活を破壊され、避難をしているのだから……。一方、東京側には、原発のある地域は経済的利益を得てきたではないか、という暗黙の反感が巣くう。沖縄の基地問題と似た根の深い問題が、そこには横たわっている。

 とはいえ、放射線被害がどこまで拡大するか予想もつかない状況に至り、電力供給と多大なリスクを「お金」で調整しようとする発想は、もはや立ち行かなくなった。

 もう一度、問い返したい。なぜ、福島県や新潟県、福井県などに原発は集まったのか。

 原発誘致を、やや俯瞰してみると国土開発、産業インフラ整備における中央と地方の長きにわたる桎梏に気づく。

 福島県は、戦前の猪苗代湖の水力発電から、戦中には陸軍「二号研究」の原爆開発のためのウラン探鉱(石川町)、戦後復興期の只見川電源開発と「後進県からの脱出」を期して中央に協力してきた。歴代の県知事、なかでも木村守江(1964~76年在職)は、原発誘致に奮闘した。政界、建設・通産両省、双葉海岸に広大な塩田跡地(大熊町)を所有する堤康次郎(西武グループ創業者)らとの人脈を生かし、原発を招き寄せた。堤の土地とその周辺が買収され、福島第一原発は67(昭和42)年に着工されたのだった。

 都会しか知らない人は、この経緯をみて、福島県が一方的に中央に懐柔され、取り込まれてきたと思うかもしれない。だが、必ずしもそうではない。

 社会学者の開沼博は、むしろ「反中央」のエートス(ある社会集団・民俗を支配する倫理的な心的態度)があったと『「フクシマ」論』で指摘する。

 『……ここでいう「反中央」とは、当然「中央や国家をつぶしてやろう」というあり様ではない。そうではなく、中央―地方の圧倒的な力量差の中にあって、ただ無条件に服従をするのではなく、あえて自らの主導のもとで地方の側から中央に対峙する関係性をつくっていこうとするあり方だ。(中略)農村の開発が立ち遅れ、他方で三割自治といわれる地方自治の自由が限定されているなかにおいて、原子力開発だろうが他の手段であろうが、いかに地域開発を持ち込むかということこそが重要であったと言える。そのために、中央とのコネクション、利害の一致を懸命に探しながら自らの欲望を実現させていった』

 この「反中央」のエートスは、戦後の国土開発→電源開発→原発誘致を貫くひとつの軸であった。全国各地で中央への「反骨」をバネに地域開発が行われた。

 そして、そのなかから、ひとりの規格外の政治家が立ち現われる。
 新潟三区から中央政界に打って出て、70年代に宰相の座にのぼりつめる田中角栄(1918~1993)である。田中は、ふたつの側面から原発を推進させた。まず、彼の持論「日本列島改造論」の根底にある国土開発への信認によって、原発誘致のカラクリをこしらえたこと。土地への執着とカネ、土地利用の日本的弱点がそこから浮かんでくる。

 もうひとつが、首相在任中に行った資源外交だ。石油ショックに襲われた日本は、エネルギー源の多角化を国是とし、原発増設の路線が敷かれていった。
 本稿では、まず田中を通して、国土開発、土地利用と原発の関係を検証してみよう。

* * * * *

(文中敬称略)

 田中の中央への「反骨」は、1946年6月、初めて挑んだ総選挙の演説に滲んでいる。

 「みなさーんッ。この新潟と群馬の境にある三国峠を崩してしまう。そうすれば、日本海の季節風は太平洋に抜けて、越後に雪は降らなくなる。みんなが大雪に苦しむことがなくなるのであります。なに、切り崩した土砂は日本海にもっていく。埋め立てて新潟と佐渡を陸続きにしてしまえばいいのであります」

 豪雪地帯の情念を背負った田中は、翌年、二度目の総選挙で当選する。その後は連戦連勝、「20代で代議士、30代で大臣、40代で幹事長、50代で総理大臣になる」と豪語し、そのとおり政界の階段を駆け上がっていく。

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