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医療保険の拡大は医療費を増加させるのか?

国民皆保険の一方で医療費を抑える日本に世界が注目

  • 近藤 絢子

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2011年10月24日(月)

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 日本で1961年に国民皆保険が達成されてから50年が経つ。他の多くの先進国も、社会保険か公的医療供給かの形式の違いはあっても、何らかの形で国民全体をカバーする公的な医療制度を持っている。唯一の例外だった米国でも、オバマ政権下で2010年3月に成立した「患者保護および医療費負担適正化法(Patient Protection and Affordable Care Act)」によって、2014年までに事実上の皆保険を達成することが定められた。

 しかし、米国ではいまだに、医療保険の加入を義務付けることに対する反対意見が根強い。反対派の挙げる理由の一つが、皆保険の導入による医療需要の増加と、それに伴う医療費高騰だ。また、日本を含む他の先進国でも、高齢化社会を迎え、いかにして医療費の増加を抑えながら社会保障制度を維持していくかが、大きな懸案となっている。

医療制度改革をめぐる議論

 とはいえ、医療保険の拡大が医療費をより増大させるかどうかは、実は理論的には自明ではない。なぜならば、保険によって病気の初期段階で早めに治療を受けるようになれば、結果としてより高コストである重症患者が減り、医療費の総額は増えない可能性があるからだ。実際に、米国の皆保険推進派の一部は、皆保険の導入はむしろ医療費の抑制に役立つと主張している。

 一方で、医療保険の大規模な拡大による医療需要の大幅な増加が、新たな医療機関の参入や既存の医療機関の拡張を促し、その結果もたらされた供給力の増加によってさらなる需要が喚起される可能性もある。もしこうした需要と供給の相互作用が起こった場合、単にこれまで保険がなかった人だけでなく、もとから保険に入っていた人の医療サービス利用も増えてしまうため、爆発的に医療費が増えてしまう可能性がある。

 こうした議論をふまえて、経済学者による実証分析が近年盛んにおこなわれてきている。国や時代、対象となる年齢層や社会階層によって結果が異なる部分も多いものの、多くの研究に共通する頑健な結果もいくつか出てきつつある。

大規模な公的保険導入・拡大は医療需要を大幅に増加させる

 多くの研究に共通する結果として、大規模な公的保険の導入・拡大が医療需要を大幅に増加させるということがまず挙げられる。米マサチューセッツ工科大学のフィンケルスタイン教授は、1965年に米国で老人保険(Medicare)が導入された事例を分析し、医療サービスの利用と医療支出が保険の導入後に急速に拡大したことを示した。米ブラウン大学のチェイ教授らのグループも、同じ事例をより詳細なデータと厳密な手法で分析し、やはり保険の拡大によって医療サービスの利用が増えたと結論している。貧困層を対象とした老人保険を分析した研究も多数あるが、やはり同様の結果を示している。

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