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「えっ、うちの会社も“背面飛行”?」

人ごとじゃないANAの人為ミス

2011年10月6日(木)

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 あのまま真っ逆さまに落ちていたら……。そう考えるだけでゾッとする。

 「ウソ? マジで??」と日本中を震撼させた、全日本空輸(ANA)の恐怖の“背面飛行”だ。

 事の詳細が判明したのは、先週のこと。奇しくも米ボーイングの最新鋭機787(別名ドリームライナー)の1号機が羽田空港に降り立ち、同社の伊東信一郎社長の満面の笑みがテレビ画面に映し出されたのと同じ日の出来事だった。

 国土交通省運輸安全委員会が9月28日に行った定例会見によれば、背面飛行は次のように起きた。

 9月6日午後10時50分ごろ、浜松市の南方約43キロの約1万2500メートル上空で、那覇発羽田行き全日空140便(ボーイング737―700型機、乗客乗員117人)が急降下した原因をフライトレコーダーなどから分析した結果、左側に最大約130度回転し、裏返しに近い状態だったことが明らかになった。

 背面飛行に近い格好のまま30秒間で1900メートル急降下し、元の姿勢に戻ったのは、「たまたま」で、あと10秒落下し続けたら、飛行機は空中分解した可能性もあるという。

 不幸中の幸い。いやいや、奇跡と言った方がいい。負傷者が出てしまったとはいえ、大きな事故にならなくてホントに良かったとつくづく思う。

背面飛行につながった「スイッチの押し間違え」

 そして、何よりも驚いたのが急降下した原因である。

 散々報道されて皆さんもあきれているかもしれないけれど、トイレから戻ってきた機長(64)のために、副操縦士(38)が着席したまま操縦室のドアを開けようとした際、解錠スイッチではなく、方向舵調整スイッチを誤って操作してしまったのだ。

 完全なる人為的事故。ヒューマンエラーだ。大惨事につながりかねない事態を、「スイッチの押し間違え」という、耳を疑いたくなるようなヒューマンエラーが引き起こしてしまったのである。

 「スイッチを押し間違えるなんてこと、本当にあるのかね?」
 「居眠りでもしてたんじゃないか?」
 「酸素マスクもしてなかったらしいじゃないか。たるんでいるんじゃないかね」(コックピットで1人になった時には、酸素マスク着用が義務づけられている)

 確かに、安全運航が最大の使命であるはずの航空会社で、「すみません。間違いました」で終わる話ではない。

 しかも、偶然とはいえ、「よし、これから最新鋭機で攻めるぞ!」とばかりに伊東社長が意欲満々の笑みを浮かべていた同じ日に、同社の長瀬眞副社長が深々と頭を下げていたのだから、「ANAは大丈夫なのか?」と心配にもなった。

 これまでにも華々しい成果の裏で、安全対策がおろそかになり事故が起こったことがあっただけに、老婆心ながらも不安になってしまったのだ。

 スイッチの押し間違え――。何度聞いても信じられないミスではある。でも人間がそこにいる限り、ヒューマンエラーは必ずや起きる。心と身体が周囲の環境によって無意識に操作されてしまうことのある人間にとって、ミスはつきものだ。

 「私は絶対にそんなミスは犯さない」と信じている人であっても、通常であれば「絶対に起こさないミス」を、犯してしまう状態に追い込まれることがある。ヒューマンエラーは、個人に資質以上に、その個人が置かれている状況によって引き起こされる。

コメント45件コメント/レビュー

河合 薫さんの記事は、分かりやすく具体的でためになります。また、実体験による、状況分析も、私の経験から同感です。(私の経験した業種、職種、職場環境はまったく違いますが)「ヒヤリ・ハット」も、医療現場での一例は、他業種企業(組織)でも、同じ様にあてはまる、と言えます。ハード面(安全、使いやすい・・他)はもとよりソフト面職場の人間関係、企業風土・・他)で様々な不具合などを防止できることは少なくありません。例えば、挨拶やマナーは、小学校から教えている事で、励行しないことの、見えない影響は、社会生活上や、職場の業務成果に、マイナス面として大きく出てくる。この記事が、当たり前すぎてという、ご意見は、おそろかにしている現状を、そんなことは、仕事に何の影響もないと重要視しないことに 通じるように思えます。なぜなら、人間関係や組織風土、職場環境はデーターとして、計測しにくいから 理解しづらいので。(2011/10/14)

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「「えっ、うちの会社も“背面飛行”?」」の著者

河合 薫

河合 薫(かわい・かおる)

健康社会学者(Ph.D.)

東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(Ph.D)。産業ストレスやポジティブ心理学など、健康生成論の視点から調査研究を進めている。働く人々のインタビューをフィールドワークとし、その数は600人に迫る。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

河合 薫さんの記事は、分かりやすく具体的でためになります。また、実体験による、状況分析も、私の経験から同感です。(私の経験した業種、職種、職場環境はまったく違いますが)「ヒヤリ・ハット」も、医療現場での一例は、他業種企業(組織)でも、同じ様にあてはまる、と言えます。ハード面(安全、使いやすい・・他)はもとよりソフト面職場の人間関係、企業風土・・他)で様々な不具合などを防止できることは少なくありません。例えば、挨拶やマナーは、小学校から教えている事で、励行しないことの、見えない影響は、社会生活上や、職場の業務成果に、マイナス面として大きく出てくる。この記事が、当たり前すぎてという、ご意見は、おそろかにしている現状を、そんなことは、仕事に何の影響もないと重要視しないことに 通じるように思えます。なぜなら、人間関係や組織風土、職場環境はデーターとして、計測しにくいから 理解しづらいので。(2011/10/14)

当たり前の話でつまらない。ヒューマンエラーはあると言う前提で、ハード・ソフトにフェールセーフの設計をするのが原則。方向舵のスイッチを誤って押しても、警告を発した上で、確認のため二度押ししないと動作しないとか。ビルの火災警報機なんかのスイッチも、意図的に強い力でカバーを破らないと、動作しないようになっているし。方向舵は頻繁に押すものなのでしょうか。その辺が知りたい。(2011/10/12)

少なくとも言えることは、副操縦士が素人だったということ。ラダートリムを押し間違えたことに気が付かなかっただけでなく、そこからの回復操作も不適切であった。シミュレーターからやり直しして欲しい。(2011/10/12)

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