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「アメリカが日本にTPP参加を強いる」との陰謀説は正しいか?

輸出こそ食料安全保障の基盤

  • 山下 一仁

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2011年10月12日(水)

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 既に説明した通り、TPP反対論の内容は裏づけもなく、想像で書かれているものが多い(「TPPは日本経済にイノベーションをもたらす」参照)。その中で、特に強調されるのが、「アメリカが日本を食い散らかそうとしている」というアメリカ陰謀説である。アメリカは輸出を増大させることで雇用を拡大しようとしている。「既にTPPに参加している多くの国はGDPが小さく、アメリカ産品の市場として不十分なので、日本をTPPに加入させようとしているのだ」と主張する。アメリカは日本市場を、日本の産業から奪おうとしているというのである。この説は、オバマ政権が輸出を倍増してGDPを増やそうとしていること(というよりそれだけ)を根拠にしている。

 しかし、オバマ政権がTPPに踏み込んだのは、現在交渉中の8カ国に工業分野で競争力のある国がなく、米民主党最大の支持団体である労働組合が容認したためだ。工業製品輸出国である日本を加盟国に含めたTPP構想を打ち出せば、労働組合や連邦議会の議員から猛反対を受けたに違いない。これが、ワシントンの通商政策に詳しい米国の専門家が一様に私に語る内容である。最近まで日米FTA(自由貿易協定)を積極的に推進していた米国人の友人は、日本のTPP参加について、かつて日米経済摩擦を経験した米国の関係業界などの反発が強いと話している。

日本向け輸出を増やしても米国の雇用拡大への影響は小さい

 TPP反対論者は、アメリカが一方的に日本市場に攻め込むと想像している。だが実態は、アメリカ市場での日本の工業製品の輸入増大につながる可能性があるのだ。TPPなどの国際協定は双方が義務を負うものだからだ。日本の関税もなくなるが、アメリカの関税もなくなる。

 真相は、日本がTPPに参加したいと言い出しただけで、アメリカが日本に参加を求めたわけではない。アメリカの輸出に占める対日輸出の割合は5%程度にすぎない。これをどれだけ増やしても、アメリカ全体の輸出が倍増するものではない。TPP参加8カ国のGDPは小さいが、これらの国への輸出額の方が、対日輸出より多いのである。

食肉以外の米国農業は日本のTPP参加で被害を受ける恐れ

 また、アメリカ陰謀説は「アメリカは農産物の対日輸出拡大を狙っている」という。工業製品に対する日本の関税は既に低いので、アメリカが輸出を拡大できるとすれば、農産物しかないと想像したのだろう。

 実は、日本のTPP参加表明で喜んでいるのはアメリカ農業界の一部だけ――牛肉や豚肉などの食肉業界――である。アメリカ最大の農産物輸出品目であるトウモロコシや大豆は、既に関税なしで日本に輸出しているので、何も変わらない。乳製品や砂糖についてアメリカは競争力がないので、TPPに加盟すれば豪州、ニュージーランドから米国市場への輸入が増大する。日本へ輸出するどころではない。

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