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部下の独り立ちに「DOはご法度」

顧客も部下も、僕の顔しか見なくなった

2011年10月14日(金)

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 組織人事コンサルタントの僕は、部下と共にクライアントの会議に出席していた。人事制度設計プロジェクトのマネジメントが我々のミッションである。

 コンサルタントの仕事は、議論のたたき台となる素案を作ることと、会議を仕切るファシリテーションの2つだ。部下のコンサルタント杉山さん(仮名)と僕は、事前に打ち合わせをし、作り込んだ資料をもとに会議に臨むこととした。

これはまずいぞ…

 「杉山さん。この案の通りにすると、給与が下がる人が出てきちゃいますよね。それじゃあ、その人のモチベーションはどうするんですか」

 顧客のプロジェクトメンバーの1人がそう質問をした。杉山さんは「そうですよねぇ。下がっちゃいますよねぇ」と曖昧な同意をした。「人事制度を改定して、逆にモチベーションが下がっちゃったら意味がないですよね」。別のメンバーが口をはさんだ。杉山さんはそれにも同意する。「そうですね」。

 黙って後ろで聞いていた僕は「これはまずい…」と思った。論点が曖昧なまま「感想レベル」の意見を追認してはならない。ファシリテーションの鉄則である。

 「給与が下がっちゃう人がいるから、給与制度を改定せず今のまま保守的に運用するのか」「給与が下がっちゃう人が出るが、その他の人(もしくは優秀者の)モチベーションアップを優先させて給与改定をするのか」。そのどちらかを選ばなくてはならない。

 どちらを選ぶか、はコンサルタントが決めることではない。クライアントが決めることだ。両極端ではなく、その中間に着地させるにしても、その頃合いはクライアントが決めるべきだ。ただし、コンサルタントは意見の裏側に潜むリスクをあぶり出して事前に伝えなくてはならない。

 「何かを得るためには何かを失う」「何も失っていないように見える案も、目に見えない潜在的機会を失っている」。そういうことがある。それを白日のもとにさらけ出した上で、意思決定を支援する。それがコンサルタントの役割だ。情緒的な感想を追認しているだけではクライアントの意思決定に資することはできない。

 しかし我が社のコンサルタント杉山さんは、そんな僕の意を知らず、ふわふわと意見をすべて追認し、明確な対立構図を示せないままにいた。じりじりと時間だけが過ぎていた。僕は後ろでイライラしながら、上出来とはいえないファシリテーションを見守っていた。

僕の顔しか見ないクライアント

 すると、人事部長の鋭い視線がこちらに飛んで来た。「小倉さん。この議論、まずいんじゃないの」。部長の顔にはそう書いてあった。僕はたまらず、介入することにした。「ちょっと、いいですか」会議のメンバーは一斉に僕の方を見た。「今までの議論を整理すると、こうなりますね」。僕はホワイトボードにチャート図を書きながら議論を整理していった。

 「なるほど。確かにそうですね」。一通り僕の説明が終わった後に、先に意見を述べた人たちの表情が変わっていた。「これまでの給与制度が必ずしも万能だったわけではないんですね」。それぞれに策のメリット、デメリットを明確にすることで、議論が一層深まっているのが分かった。

 コンサルタントの杉山さんも、大きくうなずいている。人事部長の表情も満足そうだ。どうやら、あい路に入りかけていた議論が復活したようだ。僕はクライアントの役に立てたことがうれしかった。しかし…。

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「部下の独り立ちに「DOはご法度」」の著者

小倉広

小倉広(おぐら・ひろし)

組織人事コンサルタント

小倉広事務所代表取締役。組織人事コンサルタント、アドラー派の心理カウンセラー。大学卒業後、リクルート入社。ソースネクスト常務などを経て現職。対立を合意に導く「コンセンサスビルディング」の技術を確立。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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