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「TPP参加で食の安全基準が下がる」ことはない

現行の牛肉輸入規制は過剰

  • 山下 一仁

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2011年10月18日(火)

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 TPPに反対する主張に、「日本の食品安全規制が、アメリカの低い基準に引き下げられる」というものがある。今回は、この主張について考える。

 国家は、国民の生命や身体の安全、健康を守る主権的権利を持っている。他方、我々は貿易によって世界中から豊かな食品を輸入し消費している。食の安全だけを追求することは消費者の利益にならない。このため、食の安全という利益と食品の貿易・消費の利益を調和させることが必要になる。

 そもそも、食の安全の基準は絶対的なものではない。食料が満ち足りている時には、安全性の要求水準は高くなる。しかし、食料が十分に手に入らない状況では、安全よりも、カロリーを摂取するために量を確保することが重要となる。終戦後、ひもじさを満たすために人々は、安全性の観点からは問題の多い食品を闇市で購入して食べた。終戦後のように飢餓に直面している時には、空腹を満たすという消費の便益はきわめて高い。人々は、遺伝子組み替え食品であれ、全頭検査をしていないBSE(牛海綿状脳症)の恐れのある牛肉であれ、何のためらいもなく食べはずだ。

SPS措置の真偽は科学的に判断する

 「SPS措置が国内産業(農林水産業・食品業界)を保護するために使われている」という指摘がある。食品・動植物の輸入を通じて病気や病害虫が侵入することを防ぐために導入するSPS措置(Sanitary and Phytosanitary Measures:衛生植物検疫措置)は国民の生命・身体の安全や健康を守る正当な保護手段である。

 ところが、国際交渉によって、関税などの国内産業保護のための伝統的な貿易手段が使いにくくなっている。これに代えて、SPS措置を利用する動きがあるとの指摘がある。

 貿易自由化の観点からは、保護貿易の隠れ蓑として発動されるSPS措置の制限・撤廃が求められる。しかし、国民の生命・健康の保護を真の目的としたSPS措置であっても、貿易を制限する効果があることは疑いのないところである。このため、生命・健康の保護を目的とした真正の措置と、貿易制限を目的とした措置との区分は容易ではない。

 「国民の生命・健康の保護」と「貿易自由化の推進」という相矛盾する要請のバランスを図ろうとする試みが、GATTウルグアイ・ラウンド交渉の一環として行われた。その結果、1994年に合意されたWTO・SPS協定は、この矛盾の解決を「科学」に求めた。科学的根拠に基づかないSPS措置は認めないとしたのである。生命・健康へのリスク(危険性)が存在すること、そして当該SPS措置によってそのリスクが軽減されることについて、科学的根拠を示さない場合、その措置は国内産業を保護することを目的としたものと判断したのである。

 その上で、各国のSPS措置を国際基準と調和(ハーモナイゼイション)させることを目指した。各国の規制が統一されている方が、貿易の円滑化に資するからである。国際基準は、食品添加物や残留農薬・動物用医薬品など食品の安全性についてはコーデックス委員会(FAO/WHO合同食品規格委員会)が、BSEなど動物の健康についてはOIE(国際獣疫事務局)がそれぞれ作成するものである。

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