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「隣の人」との比較が豊かさの尺度になる

成熟社会では「成長論」から「分配論」へシフトすべし

2011年11月4日(金)

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 前回までに説明したように、人口成長が止まった社会において「成長論」主体の経済政策を続けることは、国民生活の安定のためにも、経済効率的にも正しいとは言えない。人口が減っていくことは経済成長が構造的に難しくなるわけであるから、強引に経済を成長させようとする政策は当然非効率であり、貴重な経済資源の浪費になってしまうからである。

成熟社会では分配論が重要

 一方、社会が成熟段階になって来ると重要になるのが「分配論」である。

 経済のパイが拡大しない環境の中で、1人でも多くの人が少しでも豊かな生活を営めるようにするためには、社会全体で生み出した価値(GDP)をどのように分け合うのかが重要な政策テーマとなる。

 国全体で生み出した価値が十分に大きかったとしても、もし上位1割の人が9割の富を独占しているようでは、残りの9割の国民は安心して生活するのも難しいほどの貧しい生活を強いられてしまう。また上位1割の人と残りの9割の人たちとの格差が10倍にも開いてしまうというのは、あまりにも平等性を欠く。こうした富の配分は、大多数の人々の幸福感の面でも、社会の安定性の面でも失敗である。このような分配にならないように、つまり社会全体としては富や価値の総量が同じでも、賢く合理的に分配することによって、その社会の人々が享受できる豊かさは大きく異なってくるし、社会を安定させることができるるのだ。これが「分配論」の効力である。

豊かさは「昨日の自分」と「隣の人」との比較

 人は“何か”と比べて自分は豊かだとか貧しいとか感じるものである。その“何か”には2つある。一つは「昨日の自分」であり、もう一つは「隣の人」である。成長フェーズにおいては、誰もが「昨日の自分」と比べて豊かになることができたので、豊かさを実感することができ、明日への希望を持つことができた。そして日本の場合は“一億総中流”の分配論をとってきたので「隣の人」との格差も気にならなかった。

 しかし、成長が止まって成熟フェーズに入ると「昨日の自分」との比較で豊かさを感じることができなくなるので、「隣の人」との格差がとても気になってくるものである。従って、成長期以上に“公平性”が社会的な重要性を増してくる。

 それゆえ、成熟フェーズに達した社会において人々が公平感を感じられる安定した社会を実現するためには、生み出した価値を国民の間でどのように分け合うかが、大切な政策テーマとなる。つまり誰がどれくらい税金を負担し、誰がどれくらい公的サービスを受けるのかという「所得の再配分」を決める「分配論」が経済政策の主役となるのである。

社会の安定のためにも所得の再分配が必要

 ちなみに「所得の再配分」とは、分かりやすく言うと、お金持ちや生活に余裕のある人から貧しくて生活に困っている人に対して「所得移転」を行うことである。政府が“税金”としてお金持ちからお金を集め、生活に困っている人に“手当て”としてお金を支給することが所得移転であり、この機能が「所得の再配分」である。

 「国民の誰もが医・食・住を保証される国づくり」は、所得の再配分政策そのものである。自分の働きだけでは日々の生活を賄えない人たちや、病気になっても貧しいために医者にかかれなかったりする人たちに対して、生活に余裕のある人たちの所得の一部を移転して、国民の誰もが安心して生活できる、安定した社会を実現しようとするのがこのビジョンの意味するところである。

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