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TPPを巡る議論はエモーションから始めよう

そのためにリーダーがなすべき2つのこと

2011年10月28日(金)

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 中学生のころから、洋楽を一生懸命聞くようになったのだが、最初にはまったのは、米国の女性ロックシンガー、ジャニス・ジョップリンだった。1970年に27歳で夭折し、その翌年に出た「Pearl」というアルバム。当然CDではなくLP版のレコードで、文字通り、溝が擦り切れて、買い替えなくてはならなくなるほど、何度も何度も聞いていた。

 いまだに、「More over」(邦題:ジャニスの祈り)やクリス・クリストファーソン作曲の「Me and Bobby McGee」といった曲は、そらで歌えるし、少しお酒が入った帰り道、「Mercedes Benz」(邦題:ベンツが欲しい)を一人歩きながら口ずさんだりもする。落語家さんとご一緒に行う講演会(当方は、ビジネスや経済に関わる話をするだけで、素人落語を披露するわけではありません)で使う出囃子も、ジャニスの曲のイントロの部分だ。

 彼女は、1967年のモントレーポップフェスティバルで注目を浴び、その後、スターダムにのし上がった。白人のロックシンガーだが、ブルースに強い影響を受けている。そのおかげで、私自身がその後、ブルース、R&Bといった黒人音楽(当時は、アフロアメリカン音楽と呼ぶことが正しい、という向きが多かった)の深くて広い世界に少しずつ引き込まれていくキッカケにもなった。

 少し前だが、NHKのBS放送で、彼女の恋人だったことがある4人の男性が、ジャニスについて語り合う、という番組が放映された。一見豪放磊落なロックシンガーが、実際には、ものすごく繊細で傷つきやすく、人間関係を作り上げるのが苦手。人に愛され、周囲にも受け入れられたいのに、そうならない。どちらかというと、逆効果になりそうな行動ばかり取ってしまう。

 テキサス州ポートアーサーという保守的な田舎町で育ち、周りから一種浮いた存在だった思春期の話を含め、ジャニス・ジョップリンという天才アーチストの複雑な内面と、それ故の、個人としての愛すべき部分、魅力について、過去の恋人たち4人がそれぞれの表現で語り合っているのは、なかなか見ものだった。

私がジャニスに惹かれたワケ

 いまさらながら、なのだけれど、これを見ていて、自分自身が中学生のころに、なぜ、あれほどジャニス・ジョップリンにはまっていたのか、少し分かったような気がした。

 当時はきちんと整理して理解できるはずもなかったが、思春期特有な部分も含めて、周囲と自分との不整合感。それを表現したくても、うまく言えない焦燥感。こういったものに、苦しめられていた時期だった。

 実際には、今も変わらず、自分の中に残っている根っこのような部分でもあるけれど、中学生時代にはそれを飼いならすことも、ごまかすことも、いわんや肯定して受け入れることもできなかっただけに、強く大きな「意識下の力」として、存在していただけだ。

 ジャニス・ジョップリンが、自らの中にある制御しがたい「意識下の力」を、歌声、あるいは、シャウトする行為そのものを通して、外の世界に放出し、極東の一中学生も、自分の中に棲む同様のものとの呼応を無意識に感じて、「ああ、これだ」と大ファンになる。そんなことが、起こっていたように思えるのだ。もちろん、世界中で同様に感じた人は、たくさんいたに違いない。

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「TPPを巡る議論はエモーションから始めよう」の著者

御立 尚資

御立 尚資(みたち・たかし)

BCGシニア・パートナー

京都大学文学部卒。米ハーバード大学経営学修士。日本航空を経て現在に至る。事業戦略、グループ経営、M&Aなどの戦略策定・実行支援、経営人材育成、組織能力向上などのプロジェクトを手がける。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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