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1冊の問題集で、被災地の子どもたちが勉強を始めた

「どうありたいか」に従えば、やれることはいっぱいある

  • 武田 斉紀

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2011年10月31日(月)

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大人でも解きたくなる川崎フロンターレの問題集

 東日本大震災から7カ月半がたつ。未曾有の大震災のその後を日本中の人々は忘れてはいないのだが、現地を直接訪れて支援する人は一時期に比べれば減った。だが、がれきの処理も産業の再生も、雇用の確保も遅々として進んではいない。復旧復興への道のりはまだ始まったばかりなのだ。

 そんな中で地道な支援を続けている組織がある。一般企業ではない、サッカーJリーグのチーム、川崎フロンターレだ。先週、テレビ朝日の「報道ステーション」内の、『松岡修造プレゼンツ「岩手県・陸前高田の子どもたちと川崎フロンターレの絆』(2011年10月24日)でも特集されていた。

 フロンターレが被災地・陸前高田と交流するきっかけとなった2つのキーワードがある。それは「1冊の問題集」と「地域密着の基本理念」だった。

 「1冊の問題集」は、「本業でできることを考えたら、やれることはいっぱいある」ことを私たちに教えてくれる。そして「地域密着の基本理念」は、一般企業で働く人にとっては、「普段から何を大切に活動しているのか」を問うきっかけになるだろう。

◇◇◇◇◇◇

 「1冊の問題集」とは、川崎フロンターレが小学6年生向けに作成している算数の補助教材、いわゆるドリルのことだ。

 表紙ではフロンターレの人気選手で、日本代表にも復帰した中村憲剛選手(背番号14)がボールを抱えてほほ笑んでいる。とはいえ、ただ選手の写真をドリル内にちりばめただけの問題集ではない。

 全40ページには、選手の背番号や特徴に関する数字を生かした問題や、サッカーのルールや川崎市に関わる問題が並ぶ。選手たちはそれらの内容に応じた結構おちゃめなポーズまでしてくれているので、自ずと親近感が湧く。苦手になりがちな算数を楽しく学びながら、同時にフロンターレや地元のことも学べる工夫がされているのだ。(写真はこちら

 問題は例えばこんな感じだ。「3の公倍数となる選手の背番号を選んでください」「サッカーのゴールはこんな形をしています。その体積を求めてみましょう」。「どちらが速いでしょう 黒津選手は30m走を秒速7.8m、魚のカツオは海中を分速400m」。この問題の横では、黒津選手がユニフォーム姿で大きなカツオを重そうに抱いている。そして「量の勉強は、(単位を)そろえることがポイントだ!」と解き方のコツまで教えてくれる。

 これならフロンターレファンの子どもでなくとも、ちょっと解いてみたくなるだろう。大人でさえ解いてみたくなる。が、残念ながら市販はされていない。川崎市内の小学6年生に無料で配られているだけだ。

 彼らはさらに「ドリル実践学習」と称する訪問学習も重ねている。ドリルの問題を小学生と一緒に確かめてみようという企画だ。選手の50m走と子どもたちの50m走、同時にゴールするためには選手がどれくらい後にスタートすればいいかを計算する。実際それぞれのタイムを計った後に、実験してみるのだ。両者がぴたりと合ってゴールする。子どもたちは盛り上がり、算数の面白さを知る(当日の様子はこちら)。

 算数ドリルの制作は、日本のプロスポーツチームでは初めての試みだったそうだ。フロンターレ算数ドリルが完成したのは2年半前の2009年4月のこと。今年で3年目になる。彼らはなぜこのような活動を始めたのだろうか。

 きっかけはJリーグが開催した欧州視察だった。フロンターレのスタッフも参加し、英プレミアリーグの人気チーム、アーセナルを視察した。そこで歴史も人気も世界に誇るチームが、地元の教育教材に登場して勉強をアシストしていることを知ったのだ。アーセナルの人気は当然のことと考えていたが、日頃の地道な活動あってこその人気であったことを知ったのだ。

 彼らは地元に戻り、川崎市でもやってみたいと考えた。もちろん小学生向けの算数ドリルとサッカーは、直接は関係ない。チームの人気向上を目指すなら、そんな地道な活動でなくとも他にもやり方はあるだろう。まして慣れないサッカー以外のことに手を出す必要などないのではないか。

 そこには、フロンターレがこだわり続けてきた「地域密着の基本理念」があったのだ。

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