• BPnet
  • ビジネス
  • IT
  • テクノロジー
  • 医療
  • 建設・不動産
  • TRENDY
  • WOMAN
  • ショッピング
  • 転職
  • ナショジオ
  • 日経電子版

真の農政改革のための3ステップ

政府の基本方針ではTPPに参加しようがしまいが農業は縮小・衰退するしかない

  • 山下 一仁

バックナンバー

2011年11月1日(火)

  • TalknoteTalknote
  • チャットワークチャットワーク
  • Facebook messengerFacebook messenger
  • PocketPocket
  • YammerYammer

※ 灰色文字になっているものは会員限定機能となります

無料会員登録

close

 政府の「食と農林漁業の再生実現会議」が10月25日、我が国の食と農林漁業の再生のための基本方針・行動計画をまとめた。「高いレベルの経済連携と両立しうる持続可能な農林漁業を実現する」ため、水田農業の規模を今の10倍の20~30ヘクタールに拡大するのだという。同会議で野田佳彦首相も「(TPPなどの)経済連携と農業再生を両立しなければならない」と強調した。

 しかし、鹿野道彦・農林水産大臣らは、「基本方針案はTPP参加を見据えたものではなく、別個のものであると(同再生実現会議で)確認した」と説明している。

 鹿野農水相の言う通りである。この基本方針案はTPPなどの貿易自由化と相いれない。

TPPに参加するということは減反を廃止するということ

 「関税は独占(カルテル)の母」という経済学の言葉がある。今の米価1万3000円(60キログラム当たり)は、減反という供給制限カルテルによって人為的に高く維持しているものだ。自由貿易を進め、関税をなくし、外国から1万円で米が輸入されるようになれば、この米価は維持できない。つまり、関税の撤廃が要求されるTPPに参加するということは、減反を廃止し米価を引き下げる必要があるということである。減反を廃止しなければ、TPPには参加できない。

 しかし、基本方針では、農家の減反参加を支給条件とした「戸別所得補償」は継続する。与野党合意で「戸別所得補償」の見直しを検討することになっているが、農協と一緒に減反・高米価政策を推進してきた自民党が減反廃止を受け入れるはずがない。与野党とも減反維持には農林族議員のコンセンサスがある。政策論理的に言って、野田首相は自身の主張を基本方針に盛り込むことができなかったのだ。

米価を上げても規模拡大は実現できない

 では、基本方針案によって水田農業の規模を20~30ヘクタールに拡大することができるのだろうか。規模拡大の必要性は農林水産省も否定しない。今では、農協さえも建前上はこの必要性を唱えるようになった。農林水産省や一部の識者は、民主党の「戸別所得補償」によって規模拡大が進むと唱えてきた。

 農地の出し手に協力金を出せば、規模拡大がさらに進むのだろうか?

 この真偽を検討する前に「戸別所得補償」について説明しておこう。EUが農産物価格を引き下げて所得補償に切り替えたのと違って、日本は減反政策で米価を維持したうえに戸別所得補償を上乗せする(関連記事「なぜ、アメリカやEUのように「直接支払い」に移行できないのか?」)。

 「戸別所得補償政策」は「米生産はコスト割れしているので、コストと米価の差を、零細兼業農家を含めたほとんどすべての米農家に支払う」というものだ。しかし、コスト割れしているのなら、そもそも生産できないはずだ。「コスト」が米価より高い理由は、この「コスト」が架空のコストだからである。肥料、農薬など実際にかかった“本当の経費”――「物財費」という――に、“労働費”――勤労者には所得に当たる――を加えて農水省が算出した。

 農水省の統計でもコスト割れなどしていない。販売収入から物財費を引いた米農家の農業所得は、20ヘクタール以上の農地を持つ農家の場合1200万円である(零細な兼業農家が多いので平均は39万円)。

 米価が低下すると戸別所得補償が増額され、逆に米価が上がっても、戸別所得補償は減額されない。つまり、農家には、この架空のコストを最低水準として、それ以上の実質米価引き上げとなる。

 農林水産省などは、「戸別所得補償」によって実質米価を引き上げれば規模の大きい農家がますます有利となって規模拡大が進むと主張する。農業所得は、米価からコストを減じたもの。コストを低く抑えられる規模の大きい農家の方が、所得が大きくなるからだ。

 しかし、食管制度の時代も米価を高くすることで農家の所得を補償しようとしたが、規模は拡大しなかった。というより、零細兼業農家が滞留し、農地は主業農家の方に流れなかった。

コメント9件コメント/レビュー

「農地(田んぼ)は命を懸けて守るもの」→「一所懸命」という思想はまだまだ根強いということです。農業が主たる産業でなくなって、まだ50年程度。思想が転換するには短すぎます。(2011/11/01)

「山下一仁の農業政策研究所」のバックナンバー

一覧

日経ビジネスオンラインのトップページへ

記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

「農地(田んぼ)は命を懸けて守るもの」→「一所懸命」という思想はまだまだ根強いということです。農業が主たる産業でなくなって、まだ50年程度。思想が転換するには短すぎます。(2011/11/01)

私の散歩コースは田んぼの中を通っている。そこを歩く度に収穫されない野菜や蓮華草が雑草と共に生い茂っている『休耕田』を多く見る。一昔前と比べて休耕田の比率は明らかに多くなっている。 それらの田んぼで『減反補助金』を受け取っているという考えられない無駄金使いをしている。どの様な発想で『減反補助金』の制度が出来たのか、発案者の意見を聞いてみたいものだ。 農産物が生産過剰でどうしようもないなら未だ少しは理解で可きるが、米以外の農作物は殆ど全て輸入で補っている。市場原理を全く無視した米価格制度でつり上げられた米以外を兼業農家は作る気がないのだ。農地所有者が小規模のまま兼業で農業を続けると損をし、専業農家に委託すれば得をする仕組みを作るしかないのではないか。 専業農家を育てる観点からは農地がバラバラで無く、地続きにし易い様な仕組みを用意すべきだ。 例えば農地は個別の地主と農家の間で行うのではなく、委託は形式上市町村等の自治体に対して行い、自治体が最寄りの専業農家に貸与する。記事で指摘している農地の『市街化調整区域』への転用ももっと厳しく制限すべきである。 私の家の近くでも農地に大きく立派な住宅が建てられたりしているが、人の話では市会議員等に頼んで転用を可能としているらしい。 明らかな犯罪である。この様な議員の日常活動も当然何等かの見返りを期待したものであり許しがたい。 『減反補助金』は即刻廃止すべきだ。その上でTPPに取り組めば良い。TPP推進派の人達もTPPはあくまでも『環太平洋』諸国が対象であり、日本にとって最大の海外市場となった中国はTPPではない地域の経済協定の締結を欲している事ももっと考慮して良い。(2011/11/01)

TPPに反対しても、農業に未来はない。反対するなら、内需立国による未来図を描かなければいけない。しかし、農業は変わらずの補助金=税金食い虫であれば、財政とともにいずれ崩壊するのは目に見えている。輸出のできる農業の可能性は十分にあると思う。「戦略」を作ることだ。農水省の怠惰は国民への背信行為と思う。(2011/11/01)

ビジネストレンド

ビジネストレンド一覧

閉じる

いいねして最新記事をチェック

閉じる

日経ビジネスオンライン

広告をスキップ

名言~日経ビジネス語録

リクルートは企業文化そのものが競争力です。企業文化はシステムではないため、模倣困難性も著しく高い。

峰岸 真澄 リクルートホールディングス社長