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真の農政改革のための3ステップ

政府の基本方針ではTPPに参加しようがしまいが農業は縮小・衰退するしかない

  • 山下 一仁

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2011年11月1日(火)

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 政府の「食と農林漁業の再生実現会議」が10月25日、我が国の食と農林漁業の再生のための基本方針・行動計画をまとめた。「高いレベルの経済連携と両立しうる持続可能な農林漁業を実現する」ため、水田農業の規模を今の10倍の20~30ヘクタールに拡大するのだという。同会議で野田佳彦首相も「(TPPなどの)経済連携と農業再生を両立しなければならない」と強調した。

 しかし、鹿野道彦・農林水産大臣らは、「基本方針案はTPP参加を見据えたものではなく、別個のものであると(同再生実現会議で)確認した」と説明している。

 鹿野農水相の言う通りである。この基本方針案はTPPなどの貿易自由化と相いれない。

TPPに参加するということは減反を廃止するということ

 「関税は独占(カルテル)の母」という経済学の言葉がある。今の米価1万3000円(60キログラム当たり)は、減反という供給制限カルテルによって人為的に高く維持しているものだ。自由貿易を進め、関税をなくし、外国から1万円で米が輸入されるようになれば、この米価は維持できない。つまり、関税の撤廃が要求されるTPPに参加するということは、減反を廃止し米価を引き下げる必要があるということである。減反を廃止しなければ、TPPには参加できない。

 しかし、基本方針では、農家の減反参加を支給条件とした「戸別所得補償」は継続する。与野党合意で「戸別所得補償」の見直しを検討することになっているが、農協と一緒に減反・高米価政策を推進してきた自民党が減反廃止を受け入れるはずがない。与野党とも減反維持には農林族議員のコンセンサスがある。政策論理的に言って、野田首相は自身の主張を基本方針に盛り込むことができなかったのだ。

米価を上げても規模拡大は実現できない

 では、基本方針案によって水田農業の規模を20~30ヘクタールに拡大することができるのだろうか。規模拡大の必要性は農林水産省も否定しない。今では、農協さえも建前上はこの必要性を唱えるようになった。農林水産省や一部の識者は、民主党の「戸別所得補償」によって規模拡大が進むと唱えてきた。

 農地の出し手に協力金を出せば、規模拡大がさらに進むのだろうか?

 この真偽を検討する前に「戸別所得補償」について説明しておこう。EUが農産物価格を引き下げて所得補償に切り替えたのと違って、日本は減反政策で米価を維持したうえに戸別所得補償を上乗せする(関連記事「なぜ、アメリカやEUのように「直接支払い」に移行できないのか?」)。

 「戸別所得補償政策」は「米生産はコスト割れしているので、コストと米価の差を、零細兼業農家を含めたほとんどすべての米農家に支払う」というものだ。しかし、コスト割れしているのなら、そもそも生産できないはずだ。「コスト」が米価より高い理由は、この「コスト」が架空のコストだからである。肥料、農薬など実際にかかった“本当の経費”――「物財費」という――に、“労働費”――勤労者には所得に当たる――を加えて農水省が算出した。

 農水省の統計でもコスト割れなどしていない。販売収入から物財費を引いた米農家の農業所得は、20ヘクタール以上の農地を持つ農家の場合1200万円である(零細な兼業農家が多いので平均は39万円)。

 米価が低下すると戸別所得補償が増額され、逆に米価が上がっても、戸別所得補償は減額されない。つまり、農家には、この架空のコストを最低水準として、それ以上の実質米価引き上げとなる。

 農林水産省などは、「戸別所得補償」によって実質米価を引き上げれば規模の大きい農家がますます有利となって規模拡大が進むと主張する。農業所得は、米価からコストを減じたもの。コストを低く抑えられる規模の大きい農家の方が、所得が大きくなるからだ。

 しかし、食管制度の時代も米価を高くすることで農家の所得を補償しようとしたが、規模は拡大しなかった。というより、零細兼業農家が滞留し、農地は主業農家の方に流れなかった。

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