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ダメなマニュアルを“翻訳”して分かったこと

読めない日本語を読めるようにする

  • 津川 雅良

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2011年11月4日(金)

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 ひょんなことで問屋からコンピューター販売会社に出向しプログラマーをやっていたある日、「オフコンシステム研修会」への出席を命じられました。これはプログラマーがSE(システムズエンジニア)になるための研修会でした。

 研修会であれこれ講義を受け、筆記試験や面接を受け、何とかSEの免状を受け取りました。研修を終える時、講師から「今回出席したプログラマーの中でシステムの領域計算ができなかったものが1人だけいる」と言われました。

 それは私でした。仕事で必要になると勉強するという泥縄式でコンピューターの知識を仕入れていたので基本となる領域計算を知らなかったのです。泥縄式の限界を痛感しました。

 そのかわり講師から「ユーザーとの交渉力は100点満点で120点」と褒められました。これは本当だそうです。電機メーカーや問屋で営業をしていたのですから当然かもしれません。

 曲がりなりにもSEを名乗れるようになって出向先のコンピューター販売会社に戻るとSEの辞令が出てそれまでとは別のチームへ異動を命じられました。

 SEになって最初の仕事は「オペレーション・マニュアルの翻訳」でした。渡された資料はすべて日本語で書かれていますが「翻訳せよ」と命じられました。

 資料を読んで納得しました。その資料を書いた本人でさえ、おそらく理解できないと推測される文章が並んでいました。このマニュアルを受け取った顧客が怒り「こんなものは使えない」と送り返してきたようです。顧客が分かるように“翻訳”するのがSEとしての初仕事でした。

日本語なのに読めないマニュアル

 最初にしたのは表題を「オペレーション・マニュアル」から「操作説明書」に改めることでした。次に読めない原本を無理矢理めくって中身をのぞき内容を整理してみました。

 さっぱり分からない理由は大きく2つありました。情報システムの操作方法を説明しているわけですが文章に流れがありません。そのシステムを作ったプログラマーが顧客とのやりとりをそのまま文字にしていたからです。

 顧客の担当者は「○を△にしろ」と言ってきます。別な担当者は「□を■にしろ」と言ってきます。それぞれ自分が担当している仕事について要求を出してくるので一つひとつは正しくても、それらをまとめるだけでは仕事の流れにならないのです。

 顧客の意見は重要ですが書き留めるだけではフローが形成されず何も解決しません。仕事もプログラムも流れが重要です。

 もう1つの問題は記述の対象があいまいで操作を担当する顧客が理解しにくい文章になっていたことです。例えば顧客が「間違いに気づいたら前に戻れるようにしてほしい」と要求したとします。プログラムの仕様書には「○○キーの押し下げで1つ前の入力に戻る」と記述され、それを読んだプログラマーがその機能を実装します。

 操作説明書を読む顧客は「間違いを戻す」やり方を知りたいのですから「間違った入力を元に戻す」という項を立てて説明しなければなりません。それを抜きにしていきなり操作方法を記述しても分かってもらえません。

 文章を読む相手が顧客なのかプログラマーなのかを明確にしないと読み手の理解を得にくいということです。ですから顧客に渡した資料とプログラマーへの改修依頼書を兼用するのは危険を伴います。情報を渡す相手が異なる時には別々に記述しなければなりません。

 業務の流れを考えて操作説明書の文章を入れ替えたり、顧客が読むことを前提に記述を改めました。その上で目次と索引を追加しました。こうしてなんとか読める操作説明書に“翻訳”でき、SEの初仕事を終えました。

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