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「成長論」から「分配論」へ移行しなければならないもう1つの理由

トリクルダウンの無効と格差・貧困の拡大

2011年11月11日(金)

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 これまで本コラムでは、日本が経済成長を図ることが構造的に難しくなってきたことを指摘して来た。それをふまえて、成熟段階を迎えたこれからは“手元にあるものをより賢く分配する”という分配論によって、豊かな生活と安定した社会を目指すべきであると提起した。この主張は主として、人口の減少、高齢化の急速な進展、主力産業の競争力低下、財政余力の限界、金融・財政政策の効力の消失など、マクロ的視点からの分析とアプローチによる結果であった。

 今回は「分配論」を基軸にした政策の必要性について、国民の日々の生活や所得の実態というミクロ的なスコープから検証してみよう。

戦後日本は分配論を基に“一億総中流”を実現した

 戦後日本社会の最も際立った特徴だと言われたのが“一億総中流”という分配形態である。国民皆が3C(カー、クーラー、カラーテレビ)を手に入れ、夏休みには2泊3日の家族旅行を楽しみ、98%が高校進学を果たす均質で平等な社会を実現した。所得格差を示すジニ係数は0.31と世界でも最も低い水準で、“世界で唯一成功した社会主義経済”と称されるほどであった。ちなみにジニ係数は所得の格差を示す指標で、値が大きいほど格差が大きい。0.4を超えると格差が顕在化してくると言われている。

 これは高度経済成長と、高額所得者には90%以上の懲罰的な高率の税金を課すなど結果平等型の分配政策の賜物であった。この分配論の背景には強力な再分配政策だけでなく、格差の小さい年功序列賃金制度が効いていた。戦前は新入社員の100倍と言われた大企業の社長の給料も、日本型社会モデルが完成した70年代には10倍程度と平準化が進んだ。つまりこうした分配政策の背景には、同じ日本人としてあまり大きな格差を良しとしない文化や価値観があったと考えられる。

 こうした日本型平等社会のメカニズムが90年代に入って変調をきたした。80年代の最後のイベントとしてのバブルが崩壊した後、失われた10年(後に20年と言われる)に突入した頃から一億総中流が崩れ始めた。一億総中流を実現してきた車の両輪が高度経済成長とジニ係数0.3そこそこの分配論だったのだから、その片輪である高度経済成長が止まってしまったらうまくいかなくなるのは当然である。

バブル崩壊後、日本はトリクルダウン政策に走った

 バブル崩壊以降、沈滞の続いていた日本が新局面を迎えたのは、失われた10年を経て2000年代に入った時である。バブル崩壊後の失われた10年の間、従来型の経済対策をあれもこれもとやってはみたものの、日本経済が再び成長軌道に戻ることはなかった。それどころか、バブル崩壊で大量に発生した不良債権の解消すら遅々として進まなかった。そこでEUの本格的始動や中国の台頭という経済競争激化のプレッシャーの下で、従来の日本型経済運営とは全く異なる経済政策アプローチに踏み切ったのである。それが、かつて一億総中流を実現した日本型経済政策の主柱であった平等型分配論との決別である。

 所得税と法人税の税率を下げ、規制緩和を推し進め、社会保障費をカットした。企業や高額所得者という競争強者にインセンティブを与えて、彼らの生み出すパイの拡大によって経済の活性化を図った。その恩恵が二次的には社会的弱者に及ぶという「トリクルダウン」と呼ばれる方法論である。

 この方法論は、80年代当初の米英が、社会/経済の構造的閉塞状況から抜け出すために、レーガノミクス、サッチャリズムの名の下に取った政策だ。中国の?小平が90年代初頭に、社会主義的経済政策の限界を突破するために採用した“黒い猫でも白い猫でも”政策もこの考え方に基づいている。

 トリクルダウン手法を一般論として全否定するべきではないとは思う。80年代のレーガノミクス、サッチャリズムも、90年代の“黒い猫でも白い猫でも”政策も実際に成果を上げ、社会と経済の沈滞から抜け出すことに成功したのだから。

 しかし、この新自由主義的な思想に則ったトリクルダウン政策は日本においてどういう結果をもたらしたのか? 言い換えると、従来からの結果平等型の分配論政策を逆転させることによって、日本は失われた10年/20年から脱却できたのか? 強者が牽引する経済活性化の恩恵が社会的弱者にも及んで、一億総中流が復活したのか? 結果は全くそうではなかった。

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