米国のウォール街に1カ月以上も座りこみをしているデモ隊は、「上位1%の富裕層ではなく、下位99%の人々のための政策を」と米国の所得格差に反対して行動を起こした。これは2001年にノーベル経済学賞を受賞したスティグリッツの論文に基づくスローガンである。この運動は10月17日現在、82カ国の地域の951カ所に広がったという。
米国人の所得の格差
米ニューヨーク・タイムズによると、米国で2011年発表された2005年の税金のデータでは、国民所得は1年に約9%増加したが、下から90%の人々の所得は前年より0.6%下落し、増加したのは上から10%の人たちだけであった。しかもその増加のほとんどは上位1%の人々の所得であり、約14%伸びて平均110万ドル(1ドル80円として8800万円)を超えた。

現状を分かりやすくするため、米国政府の発表した2007年の国民所得を基に、総人口を100人の分布にしてグラフを作成してみた。図1において、下から20%、すなわち最低所得を得ている20人のグループ全体の所得は、左端の0−20の色を塗った面積で、一人の平均はその20分の1である。
次の20人のグループの全所得は20−40の部分である。右端の99−100は上位1%、すなわち最高所得者の一人で得ている所得を表す。この人の所得が突出しているのが、一目瞭然である。
また、上から20人の所得はおおよそ全体の半分ぐらいの所得と同額であるのも分かる。なお縦軸は各グループの相対的平均所得水準を比較する以外にはあまり意味のある数字ではない。
米国人の生活の変化
米国では1万1000ドルの所得が貧困層の境界線だが、その半分の所得は極貧層と呼ばれ、2008年には人口の6.3%に達し、これは史上最高である。食費補助を受ける家庭は2010年史上最高の1170万人に上った。9%を超える高い失業率も続き、特に18歳から24歳までの若年層の失業率は20〜24%である。多額の奨学金を借金して、大学をようやっと出たが、職が見つからず、奨学金の返済が出来ない人たちが増えているという。25歳から34歳までの年齢層の46.3%が未だ一度の結婚もしていない。
マサチューセッツ大学のウルフ教授は、IT化によって生産性は上がっているのに、急激な社会の変化の中でなぜ自分の給料は上がらないのかをほとんどの労働者は分からず、自分自身を責め、自己尊厳の念を失っているという。そのフラストレーションを友達や家族に向ける人たちは、人間関係を不快なものにさせていく。その困難の矛先を移民や他のグループに向け、社会不安の要因ともなっている。2、30年前までは、米国は資本主義経済繁栄の中心のごとき存在で、誰が、今日の米国の状況を予測できたであろうか。
競争社会である米国にとって、貧富の差は歴史的に必要悪のようなものである。富を得ることが働くことの動機づけであり、富の蓄積は能力の差として正当化されてきたからである。しかし、これほど極端な富の偏在は2000年以降にみられるものである。2002年から2007年にかけての米国における所得集中の異常な加速は、規制緩和によって不動産や金融業界の利益の急増によって押し進められた。2008年の世界同時金融危機は、主として規制緩和された金融界が狂乱を演じた結果とされている。不動産や金融業界のバブルが2008年の金融危機を引き起こし、そのため多くの米国人が未だにその影響に苦しんでいるのである。
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