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なぜ“首相育成システム”は崩壊したのか

御厨貴・東京大学先端科学技術研究センター教授に聞く【第2回】

2011年11月16日(水)

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 毎年毎年変わる日本の首相。日本の「首相の器」が小さくなったのはなぜか? その理由を歴代の数々の首相にロングインタビューを行ってきたオーラルヒストリーの第一人者、御厨貴東大教授に、池上彰さんが聞くシリーズ第2回。今回は、首相になるような人材を輩出する「政治家育成システム」が日本の政治の世界から消えていった理由を追いかけます。そんな中、一人(?)気を吐く松下政経塾。野田佳彦首相は第1期卒業生。政経塾に御厨教授はどんな判断を下すのか?

野田首相への野次が証明する、自民党の「首相教育システム」崩壊

池上:野田佳彦首相が就任したときの所信表明演説ですが、野党の野次がひどかったですね。演説が聞こえないほど品のない野次を飛ばすさまを見て、情けなくなりました。

御厨 貴(みくりや・たかし)
1951年東京都生まれ。1975年東京大学法学部卒。同助手、東京都立大学法学部教授、ハーバード大学客員研究員、政策研究大学院大学教授を経て現職。復興構想会議議長代理、TBS「時事放談」キャスターも務める。主な著作に、『政策の総合と権力』(1996年、東京大学出版会)。『馬場恒吾の面目』(中央公論新社)などがある。
(写真:大槻 純一、以下同)

御厨:かつて与党だった自民党が野に下ったとたんにこれです。自分たちがどう見られているのか、という意識がまったくない。自分たちの下品な野次を飛ばしている様子が、海外へ立ちどころに伝わるという発想がない。品のない野次で、日本がどんな印象を持たれるか、考えが及んでいない証拠です。首相の器以前に、政治家たちの資質が大いに問われてしまう実態がメディアを通じて日本はもちろん世界に流れてしまいました。

池上:すでに就任から時間がたった首相の政治手腕に対して野次を飛ばすなら、まだわからなくもない。ですが、就任したばかりの首相に対しては「まずは話を聞きましょう」というのが礼儀ではないでしょうか。

御厨:「政治の作法」がすっかり消えてしまいました。1年に1人のタイミングで次々と首相が交代しているうちに、首相の存在自体が軽くなってしまったことも大いに影響しています。「政治家ならば誰でも首相になれる」というイメージが付いてしまったことで、「自分にもできる」と思わせてしまっている。首相の存在が軽いから、罵詈雑言が飛び出す。しかし、その罵詈雑言を口にする政治家たち自身には実は「いつかは自分も首相に」という気概がない。悪循環ですね。

池上:昭和の歴代の首相は、権力闘争の末に派閥の長の座をもぎ取り、その結果、首相の座についた人たちが大半でした。そのプロセスの是非はさておき、彼らはいずれも「自分が首相になったら何をしようか」とイメージトレーニングを重ね、リーダーシップを体得し、日本のトップとなったはずです。

 振り返ってみると、大平正芳氏が逝去して、首相のポストが転がり込んできた鈴木善幸氏が、自民党のなかで、「誰でも首相になれる」という印象を最初につけた人だった気がします。鈴木さんは外交に疎く、日米同盟についての国会答弁でしどろもどろになってしまったのを覚えています。

竹下登が予言した「首相の器」の終わり

御厨:鈴木善幸氏が首相になったのは1つの節目でしたね。その後の中曽根康弘氏、竹下登氏は本格派でしたが、むしろあの二人が最後の伝統的な首相だったと考えるべきかもしれません。

 その竹下さんに、1995年にインタビューしたときのことです。宮沢喜一内閣のあと、自民党が野に下って細川護煕政権が誕生した後、新生党の羽田孜首相、社会党の村山富市首相と次々に首相の顔ぶれが変わり、首相のイメージが軽くなっていったわけですね。

 「この先、首相は誰がなるんですか?」
 と竹下さんに聞くと、
 「橋本龍太郎の後は多分、小渕(恵三)だろうな。そこまでは読めるな。だが、その先は見えない」

 と言われたんです。

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「なぜ“首相育成システム”は崩壊したのか」の著者

池上 彰

池上 彰(いけがみ・あきら)

ジャーナリスト

1950年生まれ。慶応義塾大学経済学部卒業後、NHK入局。報道局主幹を経て、2005年3月よりフリージャーナリストとして活躍中。2012年4月から東京工業大学で東工大生に「教養」を教えている。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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中谷 巌 「不識塾」塾長、一橋大学名誉教授