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TPPで心配すべきは、日本政府の交渉力

明確なビジョンさえあれば、日本をアピールするチャンス

  • 武田 斉紀

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2011年11月14日(月)

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早目に交渉に参加しても、主張できなければ意味がない

 野田佳彦首相は10日予定していた記者会見直前になって、表明を1日先送りしたものの、事前の宣言通り、TPP(環太平洋経済連携協定)交渉参加の方針を打ち出してAPEC(アジア太平洋経済協力会議)に臨んだ。

 推進派、反対派の議論は「参加」「不参加」に加え、「時期尚早」という“先送り”の三択だったように思う。だが一旦「不参加」と結論づけても、中国や韓国など主要国が参加したらいつまでも突っぱねているわけにいかなくなる。となれば詰まるところは、「いつ参加するのか」という時期の問題ということになる。

 重要なのは時期なのか。私にはいずれの時期に参加するにせよ、この政府が「しっかりとモノを言えるのかどうか」の方が気になってしょうがない。枕詞を付ければ、「昨年の尖閣諸島沖の中国漁船衝突問題では、明らかな証拠映像までありながら事実をひた隠し、一切中国に抗議もせずに容疑者を放免してしまった」この政府がだ。

 主張し交渉する力がなければ、いつ参加したところで同じではないか。いや、いずれ参加せざるを得ないのなら、少しでも早い方がより準備期間が確保できる。その点では野田さんの決断は評価できるが、「早く参加しないと日本の主張ができない」という説明はどうだろうか。

 中国や韓国は後から参加したとしても、米国に対しても独自の主張を堂々と展開するだろう。特に中国には、たとえ論理的な説明になっていなかったとしても、押し切ってしまうくらいの勢いを感じる。経済的な影響力が大きいからだけではない。経済力でいえば、日本はフランスや英国を大きく上回っているが、彼らに比べたら言いたいことの半分も言っていないだろう。

 日本人の謙虚で温厚な民族性は、この国の宝として今後も大切にしていきたいと思うが、それとこれとは別だ。国と国との交渉は国益に直結する。自国の事情や考え方をしっかりと主張できなければ、国益だけでなく、存在感も、信用さえも失うことになる。

 日本に主張し交渉する力が十分にないのであれば、早々に交渉に参加して枠組み作りから関わると、後から修正を提案しにくくなるかもしれない。途中参加の国からは「ここをこう修正してくれたら加わる」などと交渉が入る。その時に、「実は日本としてもここをこう修正してほしかったのだが」と言ったらどうなるか。

 一緒に枠組み作りをした国々からは、「だったら枠組み作りの段階で言ってくれよ」「あれは何のための会議だったんだ」「今さら何だ」と文句を言われるだろう。当然だ。日本は信用できない国になってしまう。TPPでのリーダーシップなど取れるはずもない。

 「交渉への参加は早ければ早い方がいい」という話は、一定の説得力を持って聞こえる。枠組み作りにも参加できるし、準備期間が確保できるということだ。だが特に前者のメリットはあくまで、参加各国に負けないくらい「主張し交渉する力」を発揮できるという前提での話だ。

 食の安全基準については、「米国が輸出したいがために、自国の基準を押し付けてくるのではないか」との懸念があるという。日本の食に対する安全性は世界が認めている。日本の考え方を主張して、「日本の基準が正しい、これを世界標準にするべきだ」と働きかければいい。

 皆保険制度についても、自由診療が基本の米国の制度に合わせろと要望してくるかもしれないという。特に年金保険制度については中身の見直しが急務だが、皆保険制度自体は国民の安心につながっている。日本が世界に誇ってよい制度だろう。バラク・オバマ大統領も認めているくらいなのだから、「この仕組みは譲れない、むしろTPPでノウハウを共有してはどうか」と提案すればいい。

 だがあなたにはこれまでの政府と民主党政権や過去の自民党政権を見ていて、そのように主張し、交渉している姿を想像できるだろうか。今となっては、野田さんが私の懸念を裏切ってくれることを祈るばかりだ。

コメント33件コメント/レビュー

今、「あの人に任せてみよう」の第一人者は大阪の橋下市長候補ですね。確かに口は悪いですが、大阪の現状(財政再建団体直前の崖っぷち)を打破するにはあのぐらいの勢いは必要と大阪の人間は認めてます。完璧超人なんかいるわけ無いから、清濁併せ呑む技量を大阪市民が見せるかどうかが問われる状況です。■コメントにコメント返し。「農業の資本は土地」という固定観念はそろそろ捨てましょう。今は内陸でフグを養殖する時代ですよ。農地でなければ作物は作れないという時代ではありません。■日本の農業は国際競争力を持とうとしなかったから持ってないんですよ。輸出までやってる農業者もいますけど、彼らを見習おうともしなかったんじゃありませんか?■TPPのようなルール作りの場は、把握する所ではなく、掌握すべき場です。中国や韓国は掌握一本槍が過ぎて嫌われてますが、日本は把握一本槍で弱すぎです。(2011/11/17)

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今、「あの人に任せてみよう」の第一人者は大阪の橋下市長候補ですね。確かに口は悪いですが、大阪の現状(財政再建団体直前の崖っぷち)を打破するにはあのぐらいの勢いは必要と大阪の人間は認めてます。完璧超人なんかいるわけ無いから、清濁併せ呑む技量を大阪市民が見せるかどうかが問われる状況です。■コメントにコメント返し。「農業の資本は土地」という固定観念はそろそろ捨てましょう。今は内陸でフグを養殖する時代ですよ。農地でなければ作物は作れないという時代ではありません。■日本の農業は国際競争力を持とうとしなかったから持ってないんですよ。輸出までやってる農業者もいますけど、彼らを見習おうともしなかったんじゃありませんか?■TPPのようなルール作りの場は、把握する所ではなく、掌握すべき場です。中国や韓国は掌握一本槍が過ぎて嫌われてますが、日本は把握一本槍で弱すぎです。(2011/11/17)

野田首相は小渕首相を目標にしてるらしい素振りを見せてます。「ほほう? 国のために過労死する覚悟があるか?」っていう目で見てますが。振り返れば小泉首相だって「暗殺上等!」って覚悟を決めた態度でしたし、米国大統領が「国に命を捧げる(自分の命より国家国民優先)」と宣誓するのは有名です。■それぐらいの覚悟と、松下政経塾出身の能力が組み合わされば期待はできますが、果してまだ本人の口からそういう言葉は出てませんね。もうゴールまで来てるんだから、政治生命まで安全運転しなくていいと思うんですがねえ。「身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれ」■戦後日本は列強植民地だったアジア各国が自立できるように手を差し伸べてきました。ただ魚を与えるんじゃなく、釣竿をリースして釣りを教えるやり方。それが外国から見た日本の姿形でしょう。■これをTPPに当てはめれば、「自由貿易はルール無用の弱肉強食バトルロイヤルであってはならない。どこの国も餌食にされない(ゲームと言うならなおさら)公平さを保つルールが必要だ」と主張するのが日本らしさでしょう。■強者米国(の富裕層1%)はTPPで独り勝ちを狙ってるようですが、これを押しとどめるのは2位の日本が世界から期待される役割であり、国益に沿う行動だと思います。■農業に関しては、山裾に段々畑まで作ってみせた先祖の姿勢にならい、植物工場を使うぐらいのドラスティックな変化をやってみせる姿勢を見せてほしいところです。草葉の陰で先祖が泣いてるぞ。(2011/11/17)

日本がTPP交渉で主張すべき点は1点のみ。これさえ守れば農業から医療まで、ほとんどの制度が守り通せます。「TPP参加国の国民が、自国語しか使えない事で一切の不利益をこうむってはならない(つまり、外国語習得を強制されない)」言い換えれば、「外国の市場に参入する企業は、当該国の現地語で全ての事業を行わなければならない(現地語化条項)」日本が守りたい事の多くは、参入者に日本語使用を強制すれば守り通せます(翻訳コストが高いため、自腹で翻訳すると参入が割に合わない)。 だから、言語を守れば日本を守れます。 また、アジアの英語化・再植民地化をもこの一文で阻止できます。(2011/11/15)

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三品 和広 神戸大学教授