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従業員満足度を高める旅館

年間1200件の“カイゼン”メモ~おごと温泉・湯元舘

2011年11月22日(火)

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 観光立国の看板を掲げた途端、震災が襲い日本から外国人旅行客の足は遠のいてしまった。少子高齢化や消費低迷でただでさえ厳しかった旅館業の経営環境は一段と悪化している。

 そんな中で、顧客より、まずバックヤードの作業改善を進め、従業員の満足度を高める施策で、結果的にサービスを向上させることに成功した温泉旅館がある。その経営改革は「(重労働である)仕事を従業員にやらせたくない」という針谷了社長の思いから始まった。

 旅館の多くの仕事は肉体的な負担が大きい。宴会場での配膳や下膳は昔から骨の折れる仕事だ。滋賀県おごと温泉にある旅館「湯元舘」は、重労働に従事する従業員が少しでも作業しやすい職場環境にするため、施設改修や作業方法の改善活動を積極的に進めてきた。

湯元舘のフロント

従業員目線で作業方法を改善

 最近では厨房の横にある従業員専用のトイレを改修した。宿泊客が利用することがないにもかかわらず、最新の設備を入れて快適な環境を整えている。トイレから出るときに、アルコールで消毒しないとドアが開かないようにしているところのみ宿泊客用のトイレと違う点だ。

 料理の運搬は急いでやらなければ味に響く。従業員にとって負担の大きいこの業務を、より確実にできるよう料理は厨房から各宴会場までローラーコンベアで運ぶ。料理はバーコードで管理しており、厨房から出るときに場所が指定され、自動的に決められた宴会場の前で停止する。宴会場の中で働く従業員には、料理の到着を目立たないところにある赤ランプでそれを知らせる。

ローラーコンベア(左奥)による宴会場裏への食事運搬

 宴会場ではお座敷台車を活用してセッティングしていく。かつては食器などをそれぞれライン作業で並べていたが、中腰で大きな宴会場を移動しつづけなければならず、従業員にとっては腰痛や肩こりが絶えなかった。お座敷台車に複数の種類の食器を事前に乗せ、それを一人のスタッフがセル方式のようにまとめて並べるようにすることで肉体的な負担を軽減した。 この結果、作業効率は倍増し、宴会のセッティング時間を大きく短縮することができた。

 お座敷台車の導入に際して細かな工夫も凝らしている。移動の支障となる段差をなくし、宴会場に入る扉も開閉が楽な吊るし式の引き戸にした。従業員が出入りするとき、しばしば台車を出入り口にぶつけることから、間口は最低でも150センチと広めにし、什器や設備を破損しないようにしている。たとえぶつけたとしても簡単に修繕できるよう、出入り口には竹を張っている。スリッパを脱いだり履いたりするのも作業負担を増やすことから、それが不要なように施設レイアウトを改修した。

厨房での作業環境も気を使う。

厨房での調理作業

 厨房でも生産性を高めるための工夫がいたるところにみられる。まずは食器の整理・整頓の徹底。中が透けるプラスチック製の箱に食器等を収納し、どこに何が保管されているかを一目で分かるにしている。食用油も、かつては一斗缶で購入していたが、その缶自身がごみとなるだけでなく、油のロスも缶ごとに発生する。また日々の油の補給時に手が滑り危険であることから、今はその油を配管設備で厨房まで補給できるようにしている。

 手作業を極力機械化するのは食器洗浄も同様。この仕事に従業員の手をかけてもサービスの質は上がらないからだ。食器洗浄時に出る生ごみは、食洗機のラインの途中からごみ置き場に出せるよう作業動線を簡素化している。またロビーで出すコーヒーもかつてまとめてドリップしていたが、時間の経過で味が落ちるうえ、従業員の手を煩わせることではないと判断。今では注文ごとにコーヒーを淹れる機械を導入し、常においしい状態のコーヒーを宿泊客に提供できるようにした。

コメント5件コメント/レビュー

接客する側の心根、機嫌が悪かったり、疲弊感、失望感は敏感に利用客に伝わる。横柄な怠惰なんて論外だが執拗な気の使いすぎも客は嫌なものだ。この業界に限らず管理のための管理をして馬車馬の如く使い果たし疲弊させ達成感も得られない労務環境の職場、業界も参考になると思う。追い詰めて言い訳によるアウトプットより自主的創造性と常識規律を持って出すそれの方がはるかに良い。死んでゆく元名門企業や粉飾腐敗経営隠蔽請負者が上層部を占める人事となる構造に至った組織ではこれはできないでしょうね。(2011/11/22)

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「従業員満足度を高める旅館」の著者

内藤 耕

内藤 耕(ないとう・こう)

サービス産業革新推進機構代表理事

世界銀行グループ、独立行政法人産業技術総合研究所サービス工学研究センターを経て現職。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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いただいたコメント

接客する側の心根、機嫌が悪かったり、疲弊感、失望感は敏感に利用客に伝わる。横柄な怠惰なんて論外だが執拗な気の使いすぎも客は嫌なものだ。この業界に限らず管理のための管理をして馬車馬の如く使い果たし疲弊させ達成感も得られない労務環境の職場、業界も参考になると思う。追い詰めて言い訳によるアウトプットより自主的創造性と常識規律を持って出すそれの方がはるかに良い。死んでゆく元名門企業や粉飾腐敗経営隠蔽請負者が上層部を占める人事となる構造に至った組織ではこれはできないでしょうね。(2011/11/22)

客室を3倍に増やしたという結果から顧客満足を十分に獲得したということですね。他にもいろいろとあるかもしれませんが、わたしが旅館をリピートする第一条件は、接客です。設備は一流でも接客がよくない旅館が山ほどあります。やはり従業員満足をきちんと考えれば、従業員の心の余裕ができ、お客様への接し方も変わるという良い見本ではないかと思います。(2011/11/22)

企業の哲学は、「人・物・金」と成功した経営者は述べていますが、まさしくそのとおりで自社従業員の待遇・働きやすい職場システムが充実していると、作業能率UPして、顧客サービスの品質が向上するのは確実でしょう。しかし近状の経営利益が希薄になったのを理由にして、まず 「人」つまり従業員待遇をカット・セーブする経営者が殆どだ。経営者の知恵なんてすばらしいと評価できるのは微小であろう。現場で強い外風に当たっている者ほど改善意欲と実行力そして経営上の知恵の基礎を抱いているのです。このような事象に気がつかないか無視する企業ほど経営の危機に晒されるのだと自分は思います。本記事の旅館は繁盛すのだろうし、訪れて見たいと思いますね。(2011/11/22)

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