「特集「タイ洪水〜新たな日本の試練」」

常盤文克の「新・日本型経営を探る」

タイの洪水は経営改革の一大契機になる

企業の本質を浮かび上がらせる「分節」と「結節」の重要性

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2011年11月22日(火)

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 タイで発生した洪水が、自動車やハイテク産業など様々な分野に多大な影響を及ぼしています。タイ国内の工業団地が水没したり浸水したりした影響で、完成品のみならず、部品の工場も操業を停止しました。例えば、ハードディスク駆動装置(HDD)の工場が生産停止に追い込まれ、パソコンやデジタル家電の生産にしわ寄せが起きています。

 日本企業への影響も深刻です。タイには、日本の自動車メーカーとともに進出した部品メーカーや、町工場の主要拠点があります。その多くが稼働できなくなり、自動車のサプライチェーンが滞ってしまいました。これは東日本大震災の際に起きたサプライチェーンの寸断を思い起こさせます。

 いざ災害に直面して初めて、私たちが考えさせられることは少なくありません。サプライチェーンのあり方は、果たしてこれで良かったのか。取引先や生産拠点を、特定の地域に集中させるリスクが大きくはなかったか。効率第一の生産体制の弊害が出てしまったのではないか──。つまり、災害という非常に大きな問題が、実は経営の仕組みや考え方を見直す機会でもあるわけです。

 それには、企業活動を構成する要素について、改めて考えてみる必要があります。企業とは、研究開発や生産、物流、マーケティング、販売、人事、経理など、様々な要素が有機的につながった結合体です。時代の変化とともに企業の経営戦略が進化し、それに伴って事業の内容、仕事の取り組み方などが変われば、これらの要素も当然変化が求められます。

要素をバラバラにして組み直すことの重要性

 そこで一度、企業体を構成している要素に切り分け、そして新しい要素を外から加え、再び結び直すことが必要になってきます。以前の本コラム(関連記事:複雑化した今こそ考えたい「ほぐす」効用)で書いたように、物事を一度ほぐし、古い考え方では部分最適に陥りがちな要素の一つひとつを吟味し、新たな戦略や価値観に基づいて全体最適で組み換えてやるのです。

 過去に必要だったが、今は不要になった要素を捨て、さらに過去の成功体験やしがらみも捨てる。同時にこれまで持っていなかった要素を外部から積極的に取り込み、これらの要素を組み合わせて新しい仕事のかたまりをつくっていかねばなりません。

 物事を要素に分け、そして新たに要素を結んでいく。日本企業が大きな転換期に来ている今、この「分節」と「結節」こそが求められていると言って過言ではないでしょう。

 分節の方法は、まず仕事の流れを機能で切り分けてみることです。製造業であれば、研究開発や調達、生産、物流、販売など、上流から下流までを仕事の流れで切り、さらに人事や総務、経理といったサービス機能で切り分けてみることです。どのように切るかは各社各様で、それぞれの企業の個性の表れでもあります。切り方次第で、そこから生まれてくるものも違ってきます。

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著者プロフィール

常盤 文克(ときわ・ふみかつ)

元・花王会長
1957年東京理科大学卒業、花王入社。スタンフォード大学留学後、大阪大学にて理学博士。花王で研究所長などを経て、76年取締役。90〜97年まで社長、2000年まで会長。現在は企業の社外取締役、アドバイザリーボードメンバーなど幅広く活躍。著書に『モノづくりのこころ』(日経BP社)、『コトづくりのちから』(同)、『ヒトづくりのおもみ』(同)、『反経営学の経営』(共著、東洋経済新報社)、『いま・ここ経営論』(共著、同)など多数。

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