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なぜイスラム教は原理主義に走るのか?

カダフィの最期とグローバル・シナリオ(5)

2011年11月22日(火)

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 このところ欧州から見た「あるべきイスラム像」を再検討している訳ですが、それと並行して統一欧州の通過「ユーロ」の苦境が日々報道されるのは、なんとも皮肉な気がします。

 ヨーロッパから見たイスラムとは何か? 少なくとも近代に関していえば、それは1にも2にもトルコ、つまりオスマン・トルコ大帝国であり、20世紀初頭に行われたその解体の歴史を再確認する中から、これから21世紀の流れを一定、占うことが出来るように思うのです。

誰にとっての地中海か?

 いま仮に、時計の文字盤を考えて、大まかに「1時から8時まで」というと、どれくらいの割合になるでしょう?7時間分ですから角度でいえば210度、12分の7というと過半数に当たるとクリアに判ります。

 いま、こんな変な喩えを出してみたのは「地中海」を考えたかったのです。仮にイタリア半島、ローマあたりを文字盤の12時として地中海を時計に見立てると、19世紀までの地中海は1時から8時くらいまでのエリアを一つの巨大な帝国が領有していた。いうまでもなく、先ほどから触れてきた「オスマン・トルコ」にほかなりません。

 イタリア半島とアドリア海を挟んですぐ対岸、クロアチア、モンテネグロ、セルヴィア、コソヴォあたり「世界の火薬庫」などとも呼ばれるバルカン半島から始まって、時計の針を進めるならギリシャ、キプロスあたりを通ってアナトリア半島から小アジアはそもそものトルコの故地にほかならず、「3時」ごろにあたるパレスチナ、「4時」ごろでガザ地区あたり、東にはアラビア半島も広がり、「5時」ごろにシナイ半島を通り過ぎればアフリカ大陸、「6時」はエジプト、「7時」はリビアで「8時」がチュニジアからアルジェリアといった所でしょうか。

 17世紀から19世紀にかけての時期、これらのすべてのエリアが「オスマン・トルコ」という一つの帝国に支配されていたのです。更にいえばアルジェリアの先「9時」ごろにあたるモロッコは17世紀から現在までアラブ・イスラムのアラウィー朝モロッコ王国が支配しています。地中海南岸は完全にイスラム一色、さらにジブラルタル海峡を越えて、時計の文字盤で言えば「10時」に当たるイベリア半島、現在のスペイン、ポルトガルなど西欧地域も、8世紀、アッバース朝イスラム帝国から亡命してきたイドリース朝を皮切りに10世紀の後ウマイア朝から15世紀末カトリックのスペインに滅ぼされたナスル朝まで700年来イスラムの文化圏で埋め尽くされていた。

 時計でいえば「11時」のフランスと「12時」のイタリアが、辛うじてローマ・カトリックつまり一貫して西欧キリスト教圏だった訳ですが、それ以外の「1時」から「10時」までのエリアは中世から近代を通じて、いやそれどころか東欧は20世紀初頭まで、またアフリカ大陸側は全面的にイスラム地域である、ということに、改めて注目しておいて良いと思います。実際には1時から10時までべったりイスラムという時期は短く、スペインによるナスル朝の都グラナダの陥落は1492年、一方オスマントルコの東欧進出は1360年ごろに始まり1451年までにはブルガリアやギリシャ地域、1481年までにはルーマニアやセルヴィア、ボスニア=ヘルツエゴビナ、クロアチアなどをメフメトII世のもとで押さえ、時計の針の「1時」以東はイスラム圏になってしまいます。

 この直後の1492年、西ではスペインがイベリア半島を奪還するわけですが、並行して東ではオスマントルコの進出は続き、1541年にはハンガリーの東側3分の2まで占有してしまいます。

 このとき、ハンガリーの残り西側3分の1はどうなったかというと、戦っていた相手が占領してしまうんですね。ハンガリー分割、もう一方の強国はハプスブルク家の神聖ローマ帝国でした。

コメント5件コメント/レビュー

伊東氏の『常識の源流』は毎回欠かさず拝読していますが、今回の「イスラム原理主義とキリスト教原理主義」についてのご指摘には、目からうろこが落ちる思いでした。これは日本の「権威ある学者」の口からはとても出て来ない内容で、あげ足をとられることなど意に介さず、イスラム原理主義の源流をつきとめようとする、伊東氏ならではの力作と感服しました。読書の醍醐味は、それによって知識を得ることもさることながら、著者の発言に触発され、それまでもやもやしていたものがすっと腑に落ちるところにあると思います。続編を心待ちにしています。なお一頁目で「イドリース朝が8世紀のイベリア半島を支配していた」、「イベリア半島は15世紀末までイスラム文化圏であった」と読めますが、これは定説とはすこし異なるように思います。ただこれも伊東氏が強調しようとしておられる、イスラム勢力圏がアフリカ北岸からイベリア半島にまで広く及んでいた時期が中世にあった、という事実に比べれば枝葉末節のことがらではありますが、スペイン史に興味を持つ小生としては、ちょっと気になるところです。伊東氏の著書はさいきん何冊か読ませて頂き、いずれも感服しています。これだけの内容を日本語ですっと読めるのは有難い、とつくづく思います。なお日経ビジネスへのお願いですが、伊東氏の記事はNBオンライン会員向けに限定されていた時期があり、友人たちに読ませようとURLをメール転送したら、該当記事が開けないと苦情を受けたことがありました。さいきんの記事は会員限定ではないようですが、今後ともこの方針を続けて頂ければ幸いです。またNBオンラインは、日経新聞とはすこし違った読者を開拓しているという気がします。今後の記事を楽しみにしています。(2011/11/24)

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伊東氏の『常識の源流』は毎回欠かさず拝読していますが、今回の「イスラム原理主義とキリスト教原理主義」についてのご指摘には、目からうろこが落ちる思いでした。これは日本の「権威ある学者」の口からはとても出て来ない内容で、あげ足をとられることなど意に介さず、イスラム原理主義の源流をつきとめようとする、伊東氏ならではの力作と感服しました。読書の醍醐味は、それによって知識を得ることもさることながら、著者の発言に触発され、それまでもやもやしていたものがすっと腑に落ちるところにあると思います。続編を心待ちにしています。なお一頁目で「イドリース朝が8世紀のイベリア半島を支配していた」、「イベリア半島は15世紀末までイスラム文化圏であった」と読めますが、これは定説とはすこし異なるように思います。ただこれも伊東氏が強調しようとしておられる、イスラム勢力圏がアフリカ北岸からイベリア半島にまで広く及んでいた時期が中世にあった、という事実に比べれば枝葉末節のことがらではありますが、スペイン史に興味を持つ小生としては、ちょっと気になるところです。伊東氏の著書はさいきん何冊か読ませて頂き、いずれも感服しています。これだけの内容を日本語ですっと読めるのは有難い、とつくづく思います。なお日経ビジネスへのお願いですが、伊東氏の記事はNBオンライン会員向けに限定されていた時期があり、友人たちに読ませようとURLをメール転送したら、該当記事が開けないと苦情を受けたことがありました。さいきんの記事は会員限定ではないようですが、今後ともこの方針を続けて頂ければ幸いです。またNBオンラインは、日経新聞とはすこし違った読者を開拓しているという気がします。今後の記事を楽しみにしています。(2011/11/24)

まぜっかえしですけど、世界3大宗教のもう一つの宗教の仏教にも教皇に相当する人物は居ないなあと。教皇が居るキリスト教の方が少数派なんですよ。■仏教・キリスト教・イスラム。どれも始祖が残した言葉からは「真理の探究者」の側面が見られます。まだ当時は科学という言葉も概念も無い時代。「真理」自体も自然法則と精神世界の区別がついてませんでした。それでも真理を突いてる部分は多々あったので今の時代でもその教えが残り、多くの信奉者が居るんでしょうね。■ガリレオの「それでも地球は回るのだ」って言葉は、自然法則という「神」への信奉の言葉、キリスト教である「信仰の告白」だったんだろうなとか。ガリレオは敬虔なキリスト教信者だったそうですが、あの言葉もキリスト教のスタイルだろうと思うと、日本的な負け惜しみ発言と捉えちゃいかんなとか。(自然法則を神のように言うのはアインシュタインにも見られるスタイルですね。神はサイコロを振らないとか)(2011/11/23)

歴史と現状認識の説明だけで、原理原則に言及していない、薄っぺらい内容だと思いました。現代社会にありがちな「権威や権力」のある人が言う事は正しい、と言うのはある種の錯覚であり、本当の真理というのは別の所にあると思います。(2011/11/23)

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三品 和広 神戸大学教授