• ビジネス
  • IT
  • テクノロジー
  • 医療
  • 建設・不動産
  • TRENDY
  • WOMAN
  • ショッピング
  • 転職
  • ナショジオ
  • 日経電子版
  • 日経BP

ベーシックインカムの社会的正義と機能的合理性

制度的に有効である5つの理由

2011年11月25日(金)

  • TalknoteTalknote
  • チャットワークチャットワーク
  • Facebook messengerFacebook messenger
  • PocketPocket
  • YammerYammer

※ 灰色文字になっているものは会員限定機能となります

無料会員登録

close

 前回まで、成熟日本において国民が安心して生活を営むことができる安定した社会を実現するためには「分配論」を軸にした政策体系へ転換を図ること必要があると説明してきた。

「分配論」の切り札、ベーシックインカム(BI)

 今回は、国民の生活を保障し、公平かつ公正な社会の基礎的インフラとして注目を集めているベーシックインカム(BI)について考えてみよう。「分配論」の切り札とも言える政策だ。

 BIとは、「すべての国民に対して、(働かなくとも生活できる程度の)一定のお金を無条件で給付する制度」である。

 ポイントは、

(1) 年齢とか性別とか、その他の様々な属性や境遇に関係なく、「全員一律」であること。
(2) 働いていようが、働いてなかろうが関係なく、「無条件」であること。つまり「働かざる者、食うべからず」ではないこと。
(3) 給付されたBIは子供の教育に使おうが、パチンコに使おうが自由にできる、「現金給付」であること。

 の3点である。

 この3つの特徴から分かるように、BIは現行の社会保障、社会福祉の制度とは、考え方も仕組みも根本的に異なる制度である。現行の社会保障制度は、生活保護にしても、失業保険にしても、高齢者への年金にしても、一言で言うならニーズ対応型である。それぞれの個別の事情によって生活が困難な人に対して、それぞれの必要に応じて必要な現物給付と金額を選択的に配布しようとするものである。

 では、現行の制度があるにもかかわらず、なぜBIという考え方が登場し、注目を集めているのか? そこには、思想/理念的な理由と、制度としての合理性/有効性の観点からの理由がある。

社会正義の3つの要件

 まず思想/理念的な面から説明していこう。一言で言うと、BIは民主主義社会における社会正義に基づいている。では民主主義社会の正義とは何か? それを示してくれるのがジョン=ロールズによる「正義の原理」である。

 「正義の原理」とは、

(1) 個人の自由が全員平等に尊重されていること。
(2) 機会の平等が全員平等に与えられていること。
(3) 所得や生活水準を含め様々な格差がなるべく小さいこと。

 の3条件である。そしてこの3条件は(1)、(2)、(3)の順に優先される。

 この“正義の原理”に照らして現代社会のあるべき姿を考えると、(1)の自由と(2)の機会の平等を十分に確保した上で、(3)の格差の極小化を一層図る必要がある。

 (1)自由と(2)機会の平等をうたった自由民主主義社会であっても、生まれた家の所得や資産によって実質的には機会の平等が阻害されているのが現実である。それがひいては学歴格差や能力格差となって、貧しい人たちの職業選択の自由やライフスタイルの自由すらも阻んでしまっている。この現象は、日本においても現実化している。これまでのコラムで指摘して来たところである。

社会正義を実現するための分配論がBI

 こうした問題に対処しようとする1つの処方箋がBIなのである。本人の努力や資質と全く関係なく、結果としての完全平等の仕組みを指向してしまうと、それはかつての共産主義=コミュニズム的社会制度となってしまう。社会の活力を削いでしまうだけでなく、民主主義的正義のうち最も重視すべき“個人の自由”を阻害してしまうことになる。この問題点を勘案する中で、個人の自由を最大限尊重するためも、機会の平等をなるべく確保するためにも、すべての個人に最低限の生活を保障することが必要かつ有効であるという「正義の原理」が成立したのである。

 働かない自由、意にそぐわない仕事を強制されない自由を基本的人権として認める。しかも、その自由を享受しかつ様々な機会を担保するために、すべての個人に平等一律に “生活原資”を給付する。それがBIという制度なのである。

コメント10件コメント/レビュー

人頭税の制度的有効性1.シンプル全員一律、無条件2.運用コストが小さい。シンプルであるが故に制度の運用・実施にかかるコストが小さい。3.面倒な計算が不要シンプルであるが故に計算が簡単。4.働くインセンティブが守られる子供が多いと一生懸命働こうとする。5.個人の尊厳を傷つけない一般市民も大富豪と同額の納税と言っても人頭税には幾つかの考慮すべき批判があるが・・・(2011/11/28)

「成熟時代に突入した日本へのアジェンダ」のバックナンバー

一覧

日経ビジネスオンラインのトップページへ

記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

人頭税の制度的有効性1.シンプル全員一律、無条件2.運用コストが小さい。シンプルであるが故に制度の運用・実施にかかるコストが小さい。3.面倒な計算が不要シンプルであるが故に計算が簡単。4.働くインセンティブが守られる子供が多いと一生懸命働こうとする。5.個人の尊厳を傷つけない一般市民も大富豪と同額の納税と言っても人頭税には幾つかの考慮すべき批判があるが・・・(2011/11/28)

BIの概念については一定の理解ができる反面、労働のインセンティブについては疑問が残ります。弱者救済事業のさらには産業構造の変革の中で大きく労働意識の転換を図っていくことで可能になる方法もあるかもしれません。しかしながら、次回のディメリットの論考を読まないとBIについての全体像がつかめません。また、中間的な介在者がいないのもメリットのようですが、より意識の高い人間の集団・コミュニティが介在というより仲間として接することが実はこのBIを円滑に実行できる潤滑油であるともいます。これも次回掲載以降の問題でしょうか。(2011/11/25)

本文には1つ気になる部分がある。平等と機会均等の考え方を重視している文章中の重要な単語がカタカナ外国語になっているのは、論説主張と文章行為が矛盾しているのではないだろうか。つまり用語の理解について筆者は読者に一定の水準を課しているということになる。国民全員を平等に捉えようとはしていない様に見える。どうして母国語で国民全員に理解できる言葉を用いて語らないのか。その上、文中の”インセンティヴ”は殆ど”動機づけ”と言う意味以外には用いられていないから、わざわざ経済学用語を使う必要は無いのではなかろうか。(2011/11/25)

ビジネストレンド

ビジネストレンド一覧

閉じる

いいねして最新記事をチェック

閉じる

日経ビジネスオンライン

広告をスキップ

名言~日経ビジネス語録

組織を正しい方向に導き、 作り変えていける人が、優れたリーダーです。

ジェニー・ダロック 米ピーター・F・ドラッカー伊藤雅俊経営大学院学長