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マスコミが「政治報道」できなくなった理由

御厨貴・東京大学先端科学技術研究センター教授に聞く【第3回】

2011年12月1日(木)

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 毎年のように変わる日本の首相。日本の「首相の器」が小さくなったのはなぜか?

 歴代首相にロングインタビューを行ってきたオーラルヒストリーの第一人者、御厨貴東大教授と池上彰さんが探るシリーズ第3回。今回俎上にあげられるのは、マスコミの政治報道の問題です。

 「政治」ではなく「政局」のすったもんだを興味本位のみで報道する姿勢。政治家の一言を切り取って「失言問題」に仕立て、芸能人のスキャンダル報道のような扇情的なニュースとして取り上げるやり方。政治報道とは、本来、マスコミによる権力の監視機能であり、基本的には日本国の政治を良き方向に導くのが目的のはず。「首相の器」と同時に「メディアの器」について、考えます。

池上:さて、「首相の器」の問題を取り上げたからには、返す刀で自らを一度切る必要があります。「マスコミの政治報道」姿勢について、です。

 今の政治家は政治をやっていない、選挙活動と政局ばかりを気にする「政局家」になっている、とよく言われますが、マスコミの報道自体が、本来の政治報道から離れ、政局の報道ばかりに終始している印象があります。

 もっと言えば、政治家個人についての報道、政治家の人間性についての報道があまりに多い。政治家の発言を切り取って「失言問題」に仕立てる様は、ほとんど芸能人のスキャンダル報道と同レベルです。私もかつてはマスメディアに属していましたし、今マスコミで仕事をしているので、自戒を込めての話、なのですが……。

御厨 貴(みくりや・たかし)
1951年東京都生まれ。1975年東京大学法学部卒。同助手、東京都立大学法学部教授、ハーバード大学客員研究員、政策研究大学院大学教授を経て現職。復興構想会議議長代理、TBS「時事放談」キャスターも務める。主な著作に、『政策の総合と権力』(1996年、東京大学出版会)。『馬場恒吾の面目』(中央公論新社)などがある。
(写真:大槻 純一、以下同)

御厨:質が低下しているのは、政治家の方ばかりではない。マスコミの報道のほうにも問題があるのでは、ということですね。原因は、実はとてもはっきりしています。

池上:といいますと?

御厨:テレビで政治家のぶらさがり会見をご覧下さい。大臣の周りで質問したり、ICレコーダーを向けたり、メモを取っている記者をみれば、一目瞭然。日本の政治記者は20代から30代前半の若手が大半なのです。30代後半以降のベテランになるにつれ、日本の記者制度では、デスクになって現場には出てこなくなる。若手記者の原稿をチェックするほうが仕事になってしまうんですね。

池上:確かに日本の政治担当記者は若いです。米国の大統領記者会見で、大統領に向かって質問をしている記者は、白髪頭か禿頭が大半(笑)。超のつくベテラン記者ばかりですよね。ビル・クリントンやバラク・オバマのような40代の大統領はもちろん、50代後半のジョージ・W・ブッシュよりも年上で米国政治の変遷について生き字引のような記者がごろごろしている。

御厨:日本の政治記者と米国の政治記者とでは親子ほどの年の差がある。その差がそのまま政治ジャーナリストとしての経験値の差でもある。正確にいえば経験不足ということが大きいと思います。

池上:政治記者が若手ばかり、という問題は、たしかに以前からありました。NHKや大手新聞各社の場合、新入社員はまず地方へ配属されて数年たって東京へ戻ってくると、いきなり政治担当というケースが多い。民放の報道局の場合は、地方配属がないので入社と同時に政治担当記者になることもままあります。20代前半でいきなり政治家を取材するわけです。

御厨:若さそのものが悪いわけではないのですが、政治報道の現場に経験豊富な記者が少ない、というのはやはり問題です。正しい政治報道には場数と知識量がかなり必要ですから。

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「マスコミが「政治報道」できなくなった理由」の著者

池上 彰

池上 彰(いけがみ・あきら)

ジャーナリスト

1950年生まれ。慶応義塾大学経済学部卒業後、NHK入局。報道局主幹を経て、2005年3月よりフリージャーナリストとして活躍中。2012年4月から東京工業大学で東工大生に「教養」を教えている。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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