「河合薫の新・リーダー術 上司と部下の力学」

社員も会社も不幸にする「生産性向上!」という呪文

本当の豊かさを実現する“健康職場モデル”とは

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2011年12月1日(木)

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 「生産性を上げろ!」

 中間管理職の方なら、こんなゲキをトップや上司から飛ばされた経験が、一度はあるのではないだろうか。

 しかも、最近のその“ゲキ”とセットで使われるのが、「早く結果を出せ!」というひと言。

 効率を上げて、生産性を高め、早く結果を出せ!

 そんな無理難題をトップから突きつけられて苦労している中間管理職の方に、最近やたらとお目にかかることが増えた。

 恐らくその背景には、今年に入って難問が次々と持ち上がっていることがあるのだろう。東日本大震災、超円高、タイの大洪水、TPP(環太平洋経済連携協定)などなど。生産性とスピードをこれまで以上に意識せざるを得なくなった、というわけだ。

 生産性を上げる――。

 経営者であれば、生産性にこだわるのは当然のことだとは、分かってはいる。だが、「効率を上げろ!」「生産性を上げろ!」という言葉を聞くたびに、なぜかイヤな気分になる。うまく言えないけれど、「人」が「人」として扱われていないような気になってしまうのだ。

 そもそも生産性を上げるって、どういうことなのか?

 無駄な時間をなくして、時間効率を良くしろってこと? もっと集中力を高めて能率を上げろってこと?

 あるいは、「それまで3人でやっていたことを1人でやれ!」「少ない人数で中国人や韓国人、インド人に負けないように死ぬ気で働け!」と激務を強いるってことなのか?

 生産性を上げて、豊かになるのは会社? トップ? それとも働く人? 

 最近やたらと言われている「生産性を上げる」という言葉の意味が、申し訳ないけど私にはよく分からない。いや、果たしてその意味を理解している人がどれほどいるのだろうか。

 そこで今回は、「生産性」という言葉について、考えてみようと思う。

49歳の部長が漏らした職場の惨状

 「恐らくどこの会社でも同じだと思うんですけど、2008年のリーマンショック以降、これ以上カットするところはないくらいカットしてきました。社員の人数だって3年前の半分になっていますし、残業だって制限していますから、人件費も残業代もこれ以上減らすのは到底無理。手をつけられるところは、とことん無駄を削減してきました」

 「当然ながら、利益を増やすために営業力を高めて仕事だって増やしましたよ。でも、それで生産性が上がるかっていうとダメなんです。つまり、市場単価が下がっているんで、利益はカスカス。人数が減る一方で、以前よりも多くの仕事をこなしている。なのに、利益は増えない。忙しいから儲かっているように見えて、ちっとも数字に反映されない。今までやっていたペースよりも、短時間で多くの仕事をこなしているのに、生産性が全く向上しないんです」

 「しかも、絶対に部下から訴えられるような働かせ方はさせちゃダメ、パワハラもダメ、心理的にプレッシャーをかけるのもダメ、のダメダメ尽くしです。部下の健康は完全に守りながら、生産性も上げろっていうわけです。部下が壊れる前に、私が壊れそうですよ。管理職はみな僕と同じようにストレスを感じているから、人間関係だって悪くなりますからね」

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著者プロフィール

河合 薫(かわい・かおる)

河合 薫博士(Ph.D.、保健学)・東京大学非常勤講師・気象予報士。千葉県生まれ。1988年、千葉大学教育学部を卒業後、全日本空輸に入社。気象予報士としてテレビ朝日系「ニュースステーション」などに出演。2004年、東京大学大学院医学系研究科修士課程修了、2007年博士課程修了。長岡技術科学大学非常勤講師、東京大学非常勤講師、早稲田大学エクステンションセンター講師などを務める。医療・健康に関する様々な学会に所属。主な著書に『「なりたい自分」に変わる9:1の法則』(東洋経済新報社)、『上司の前で泣く女』『私が絶望しない理由』(ともにプレジデント社)、『<他人力>を使えない上司はいらない!』(PHP新書604)



このコラムについて

河合薫の新・リーダー術 上司と部下の力学

上司と部下が、職場でいい人間関係を築けるかどうか。それは、日常のコミュニケーションにかかっている。このコラムでは、上司の立場、部下の立場をふまえて、真のリーダーとは何かについて考えてみたい。

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