「石原昇の「21世紀の黒船たち」」

押し寄せる「韓流」〜官民挙げた韓国の文化産業戦略

コンテンツ産業振興予算は217億円で日本の2.5倍

バックナンバー

2011年12月5日(月)

1/4ページ

印刷ページ

 テレビをつけると、ドラマやCMに韓流スターが現れる。ネットで人気を呼び、街中に流れる軽快なリズムはK−POPだ。韓流は今や、一部のファンが支える一過性のブームではなく、日常生活に浸透したものになっている。この原動力となっているのは、韓国の国策であり、韓国企業の巧妙な海外戦略である。「クールジャパン戦略」を掲げる日本は韓流とどう戦っていくのか。

映画・ドラマ、音楽から、アニメ、ゲームまで韓流が席捲

 韓国製のコンテンツは、日本では2000年代になって公開された「シュリ」や「猟奇的な彼女」などのヒット映画によって身近になった。テレビではドラマ「冬のソナタ」が社会現象となり、一般に韓流と呼ばれるようになった。同ドラマはNHKがBS で2003年4月から半年間、翌年4月からは地上波で放映した。

 韓流ドラマの放映は、2000年代はBSやCSが主流であったが、ここ数年は地上波における番組枠が増加している。フジテレビは平日午後に「韓流α」、TBSも平日午前に「韓流セレクト」と名づけた枠を設けている。地上波とBSを合わせると、関東地区においては、1週間におよそ100時間もの韓流ドラマが放映されている。こうした状況に対して、一部で批判が噴出している。

 CMでも韓流タレントが存在感を示している。BoAの自動車、ペ・ヨンジュンの眼鏡、チェ・ジウの化粧品の宣伝が話題を呼んだ。最近の大ヒットはチャン・グンソクである。彼を起用したサントリーは、「ソウルマッコリ」の年間出荷計画(35万ケース)を2カ月で達成した。チャン・グンソクはオリコンの写真集ランキングで1、2位を独占し、その広告価値は3500万ドルと言われている。

 音楽シーンでは、K-POPのアイドルが2000年代半ばから続々と日本でメジャーデビューを果たしている。かつては演歌歌手が主流だったが、状況は一変した。BoAや東方神起が先行し、2010年から2011年にかけては、少女時代やKARAがブレイクした。抜群のプロポーションと完璧なダンス、同じフレーズの繰り返しは頭に残る。10月にT‐araが、外国人アーチストとして、オリコンランキング史上初の女性デビューシングル初登場1位となった。

ソウルにある韓流スターの展示館「K☆STAR GALLERY」
画像のクリックで拡大表示

 ゲーム市場でも、80年代から韓国企業がビデオゲームの開発で実力をつけた。90年代末からは、オンラインゲームで飛躍している。今では韓国は、世界のオンラインゲーム売上の30%を占めるゲーム大国となっている。

 最大手のネクソンは、72カ国でオンラインゲームを提供している。2010年には日本のベストゲームを受賞した。2011年12月14日には、東証1部に上場する予定だ。2010年12月期の売上高は697億円、営業利益は301億円と高収益を誇り、時価総額は同業のグリーやDeNAに並ぶ6000億円規模が予想されている。同社は、上場で得た資金でM&Aをする可能性を示唆している。

 アニメやキャラクター分野でも韓国製品の海外進出は著しい。ペンギンを主人公にした韓国アニメの「ポロロ」は、韓国国内で人気を博し、80カ国に輸出されている。女の子のキャラクター「PUCCA」は、ウォルト・ディズニーがプロデュースし、ワーナーブラザースがライセンスしている。ベネトンを含む世界の500企業が3000アイテムに使用している。南米では日本のハローキティを上回る人気である。

コンテンツ振興は他産業へ波及し、国のブランド価値を向上

 韓国のコンテンツの市場規模は、ATカーニー社の推計(狭義の定義、テレビ、映画、音楽、出版、ゲーム、アニメ・キャラクター)によると、2010年に92億ドルとなった。日本の352億ドルと比べるとまだ小さいが、その成長力は力強い。リーマンショックを乗り越え、2007年以降の成長率は6%に達している――日本はマイナス1%。今後も年平均7%の成長を続け、2020年には現在の2倍近い175億ドルに達する見込みである。

ここから先は「日経ビジネスオンライン」の会員の方(登録は無料)、「日経ビジネス購読者限定サービス」の会員の方のみ、ご利用いただけます。ご登録のうえ、「ログイン」状態にしてご利用ください。登録(無料)やログインの方法は次ページをご覧ください。



関連記事

Feedback

  • コメントする
  • 皆様の評価を見る
内容は…
この記事は…
コメント11 件(コメントを読む)
トラックバック
著者プロフィール

石原 昇(いしはら・のぼる)

石原 昇

国際経営コンサルタント。シー・サポートセンター代表。
1982年、横浜市立大学大学院経営学研究科修士課程修了。
通信自由化の黎明期に野村総合研究所で通信政策の立案に従事、NTT上場などを手がける。その後、野村證券チーフアナリストとして、内外のグローバル産業の調査研究に携わる。2004年に独立。東大先端研研究員、世銀グループコンサルタント、JETROや各種学会の委員などを歴任。法政大学大学院などで教鞭を執る。
現在、サイコム・ブレインズ、マスターピース・グループなどグローバル企業の社外役員、またベンチャーキャピタル、つくば市や福岡県のアドバイザーも兼務する。「アキバ在住アナリスト石原昇のブログ」でアキバ発イノベーションを発信中。
著書・翻訳書に、「塗りかわる世界の情報通信産業」(野村総合研究所)、「経営分析・日本のトップカンパニー」(共著 日本経済新聞社)、「フラッシュメモリビジネス最前線」(共著 工業調査会)、「イノベーション・パラドックス」(監訳、ファーストプレス社)、「ロボット.イノベーション」(共著、日刊工業新聞社)など。



このコラムについて

石原昇の「21世紀の黒船たち」

 バブル崩壊で失われた90年代から、さらに10年が経過し、日本は長期停滞が続いている。21世紀に入り新興国の勢いは加速し、新たな黒船として日本の前を行く。
 菅内閣は2010年6月に閣議決定した新成長戦略で、「元気な日本」を復活させるシナリオを満載した。「グリーン」と「ライフ」の2つのイノベーションを柱に、7つの戦略分野を掲げ、実行計画(工程表)も示した。
 しかしながら、政治が混迷しているなかで、計画は予定通り進まず、世界市場から日本企業が取り残される事態が相次いでいる。グローバル経済のパラダイム転換は速く、新産業、新市場を巡る世界の競争は熾烈である。失われた20年を経た日本は10年後に確固たるポジションを保持できるか? 現場取材を織り込み、アナリストの視点で、国家、産業、企業の新成長戦略に示唆を与えたい。

⇒ 記事一覧

記事を探す

読みましたか〜読者注目の記事

  • いま、歩き出す未来への道 復興ニッポン