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「働かざる者も、食ってよし」という新しい規範への歴史的挑戦

ベーシックインカムが実現しない“本音”の反対に迫る

2011年12月16日(金)

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 前回詳しく説明したように、思想も経済政策も大きく異なる各派――社会保障や福祉を重視するコミュニタリアンから、可能な限り小さな政府が望ましいとするリバタリアン、さらには、経済活動は市場メカニズムを最大限に尊重すべしとするネオ・リベラリストまで――が、BIに対してはそろって賛同している。それにもかかわらず、BIはいまだどこの国でも実現していない。社会正義を満たし、数多くの現実的メリットを有し、しかも左派から右派までが支持するBIが実現していないのは、考えてみれば不思議である。

 今回はBIがなぜ実現しないのか、その現実的理由を考えてみよう。

 BIの説明の第2回目に、BIへの反対論を3点示した。

(1) 働かない人が増えるのではないか
(2) 社会が高コストになり、経済競争力が低下するのではないか
(3) 莫大なコストがかかるので、財政的に負担できないのではないか

 である。

 しかしそれぞれについて検証したように、これら3つの反対論はすべて一理あるものの、決して克服不可能なほどの決定的要因ではない。BIには、こうした懸念を補うに足るだけのメリットが存在する。こうした問題を解消する手立てがあることも具体的に示した。

BIが実現しない“本音”の理由

 にもかかわらずBIが実現していないのは、実はもっと深いところに大きな問題があると考えている。

 1つは、「働かざる者、食うべからず」という人々の意識。もう1つは、「簡素でシンプルな制度なため、恣意性や裁量が介在しないことに対する行政の抵抗」である。

 第2回目で示した3つのBIへの反対論は、主として学者による“建て前”としての理屈上の反対論である。一方、ここで挙げた2つの問題はBIに携わる主体者である国民と行政の“本音”の反対論である。こちらは主体者の本音の反対論であるがゆえに、先の3つの建て前の反対論よりも強力である。

 以下、これら2つの本音の反対論に対して私が考えるところを述べていこう。

「働かざる者、食うべからず」の規範と心情

 「働かざる者、食うべからず」という道徳律は、キリスト教の聖書にもこの文言が書かれているくらいに歴史が古く、洋の東西も問わない普遍的な規範である。この規範からすると、働こうが働かなかろうが等しく国民全員に生活できるだけのお金を配るBIは「働かなくても、食ってよし」を意味しているわけであるから、当然認められないわけである。汗水垂らして働いた人が、その対価として得た所得から払った税金で、働けるのに働きもせず、ブラブラしている人の生活費を賄うのだから、心情的に拒否感が生じるのは当然であろう。

 しかし、その一方で、世界の先進国が歴史的に見てかつてないほど豊かな水準に達しているという“歴史的”事実がある。歴史的に、人口を決定する最大のファクターは、ずっと食糧生産に代表される経済力であった。しかし、日本をはじめとする先進国は20世紀の終盤以降、ついにその制約を超越する水準にまで豊かになった。つまり、1人の人間が生み出す生産物(GDP)が、“食うためだけの水準”を大きく上回る時代に到達したのである。何千万人、何億人ものスケールの国々が、これほどの経済水準に達したのは人類史上初である。ならば、人類史上初の経済水準に見合った新しい規範と新しい社会保障制度があっても良いではないか、と私は考える。

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