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「西のフランス、東の日本」と呼ばれる日は来るか

日本がGDP世界4位になっても、誇れる国であるために

  • 武田 斉紀

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2011年12月12日(月)

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イノベーター大賞を受賞したハードロック工業に見えるもの

 先日、日経BP社が主催する『第10回 日本イノベーター大賞』の授賞式を拝見した。この賞は「日本の産業界で活躍する独創的な人材にスポットを当てることにより、日本に活力を与えよう」という趣旨で、2002年に創設された。

 私はここでコラムを書いているから誘われたわけでも、招待状をいただいたわけでもないが、一般応募で何度か参加させていただいている。年間の大賞を含む何人かの方が登壇され、生の声が聞ける。イノベーティブ(独創的)な仕事に、大いに刺激をいただいている。

 大賞受賞者を振り返ると、この10年間の縮図が見える。栄えある第1回(2002年)は、スタジオジブリ・プロデューサーの鈴木敏夫さん、第3回(2004年)は楽天・会長兼社長の三木谷浩史さん、第5回(2006年)は旭山動物園・前園長の小菅正夫さん、そして昨年の第9回(2010年)は小惑星探査衛星「はやぶさ」プロジェクトリーダーの川口淳一郎さんだった。

 第10回の今年は、「絶対に緩まないネジ」で知られるハードロック工業(大阪府東大阪市)の創業者で社長の若林克彦さんだった。「絶対に緩まないネジ」ハードロックナットの名声はすでに業界では有名だったが、今年起こった東日本大震災で広く知られることになった。

 建設中のスカイツリーにも、数ある競合の中から選ばれて採用されていたのだが、大震災を経ても一本のネジさえ緩むことはなかった。震災発生時、稼働中だったエレベーターに乗っていた作業員の命も守った。

 同社のネジはほかにも、新幹線や瀬戸大橋やレインボーブリッジ、羽田空港、六本木ヒルズなど、「安全」が求められるさまざまな分野で採用されている。東日本大震災時に走行中だった、東北新幹線の乗客の命も守った。ハードロックナットは海外の多くの国でも、鉄道車両やアミューズメントパークなどで広く採用されている。これらの世界が認める技術を支えているのは、約50人の従業員だ。

 インタビューの中で、若林さんは「絶対に緩まない」構造のヒントを、日々考え続けている中、近所を歩いていて神社の鳥居から得たという。技術者らしい実直なしゃべり方が印象的だった。同社の企業理念には、「この社会は我が社のための道場であり見るもの触れるもの全てわが師である」と書かれている。若林さんの人柄に重なる。

 著書『絶対にゆるまないネジ ~小さな会社が「世界一」になる方法~』も読ませていただいたが、「絶対に緩みまへんというた以上、少しでも緩んだらあきまへんのです」と、ネジ一筋に長年、技術開発を地道に積み重ねて来た苦労が分かる。

 1台の新幹線では同社のネジが約2万本使われているそうだが、その1本でも緩むと即安全に関わる。“1本が緩まない”技術開発力だけでなく、“何万本あっても1本も緩まない”という製造技術の高さに、新興国のメーカーは追いつくことができないという。“技術”と“品質”へのブレないこだわりが伝わってくる。

 同社のある東大阪市といえば、東京の大田区と並んで地場の中小企業が立ち並ぶことで知られる。中には世界的な技術を持つ、知る人ぞ知る会社も少なくない。さらに地方にも新潟県燕市の洋食器や、福井県鯖江市のメガネ、愛媛県今治市のタオルなど、世界が認める職人的な地場産業が点在している。

 日本は昔も今も、一見地味に見えながらもさまざまなモノづくりの分野において “技術”と“品質”では世界一を保ち続けているのだ。地道で勤勉なこの国の国民性を背景にしながら。

 ハードロック工業の大賞受賞を目の当たりにし、また過去の受賞者の功績を振り返りながら考えた。この国は今後もGDPや売上高で世界No.1を目指していくべきなのだろうか。

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