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もう一つの「1%対99%」問題

データが示すTPP以前に壊滅している日本の農業

  • 吉田 耕作

バックナンバー

2011年12月15日(木)

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 前回は米国における所得の格差に関して、上位1%対下位99%の格差の問題を述べた。

 今回は異なる意味での日本の1%対99%の話をしたい。それは国内総生産(GDP)のうち、農業の占める割合は1%であるのに対して、非農業部門生産高は99%だという話である。

 最近、TPP(環太平洋経済連携協定)に関する議論が喧しい。特に私の注目を引いたのが、民主党内のTPP参加賛成派と反対派の議論を公平にするためということで、賛成派と反対派の議員を同数に絞って委員会を立ち上げるという記事であった。そこで、私は日本全体の経済のなかで農業はどういう地位を占めているのだろうかという疑問を持ち、日本のGDPのデータを集めてみた。それが表1である。

表1 国内総生産(GDP、名目)
構成比(パーセンテージ)表示

項目 1999年 2009年
1.産業 93.3 89.9
(1)農林水産業 1.9 1.4
  a.農業 1.4 1.1
  b.林業 0.2 0.1
  c.水産業 0.3 0.2
(2)鉱業 0.1 0.1
(3)製造業 22.1 18.0
(4)建設業 7.7 6.2
(5)電気・ガス・水道業 2.8 2.3
(6)卸売・小売業 14.7 12.5
(7)金融・保険業 6.1 5.8
(8)不動産業 11.4 13.2
(9)運輸・通信業 7.0 6.8
(10)サービス業 19.5 23.5
2.政府サービス生産者 9.2 10.0
3.対家計民間非営利サービス生産者 1.9 2.3
小計 104.4 102.1
輸入品に課せられる税・関税 -4.7 -4.0
その他微調整 0.3 1.9
国内総生産 100.0 100.0

(資料:平成23年版国民経済計算年報 内閣府経済社会総合研究所)

 表1から明らかなように、2009年度のGDPの中で、農林水産業の占める割合は1.4%であり、農業に限ると1.1%となる。議論のために、経済面だけに焦点を絞り極論すると、農業を放棄し、輸出産業、運輸・通信業、卸売・小売、建設業、サービス業など、ほかの日本の競争力のある分野において、関税面で不利な扱いを受けずに、海外に打って出るとするならば、1%どころか数%の雇用を生み、国内総生産も増加し、農業で失うものを補って余りあることになるだろう。日本の経済は大きな成長を遂げる可能性がある。

 したがって、TPPの賛否を論ずる委員会では、最大の問題は農業であるから、賛成派99%の人達と反対派1%の人達で議論するのが合理的なのではないのだろうかと考えたわけである。

兼業農家は雇用機会が増え所得が増える可能性も

 しかし、これは少々乱暴な議論であり、農業の特殊性を考えると、農業関係者のみならず、国民の大反対を受けるのは間違いなかろう。経済的には合理的であっても、政治的には非常に受け入れにくい解決策だと思う。そこでもう少し詳しく、日本の農業はどんな問題を抱えているのか、そして長年にわたって農業は国際競争力がないと言われてきているが、これの抜本的改革が行うことはできるのかなどに関して少々考えてみたい。

 まず、そもそもどの位の農家数があるのかを見てみよう。

表2 農家数

年次 農家数(百万戸)
専業・兼業別
総数 専業農家 兼業農家
第1種 第2種
1985 4.3 0.6 3.7 0.7 3.0
1990 3.8 0.6 3.2 0.5 2.7
1995 2.6 0.4 2.2 0.5 1.7
2000 2.3 0.4 1.9 0.3 1.6
2005 1.9 0.4 1.5 0.3 1.2
2009 1.7 0.4 1.3 0.2 1.1

(資料:日本の統計2011、総務省統計局)

 表2における「農家」とは経営耕地面積が10アール以上をいう。兼業農家の第1種は農業所得を主とする農家で、第2種は農業所得を従とする農家である。なんと、全農家数が1985年から2009年までの間に6割も減少している。しかも2009年に現存する農家のうち、専業農家はその4分の1にも満たない。

 兼業農家のうちでも、農業所得を従とする農家が圧倒的に多い。つまり大部分の農家は主たる仕事がほかにあって、収入を補う目的で農業を行っている。もちろん、そもそもは専業農家として食べていけないがために、兼業農家が増加したのであろう。

 しかし、それは農業の非効率化というよりも、むしろ社会全体の工業化への構造変化による影響の方が大きいと考える。したがって、全農家の4分の3である兼業農家は、日本がTPPに参加することによって、むしろ雇用の機会は増え、所得も増える可能性がある。兼業農家は多くの保護を必要としないと思われる。

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