「石原昇の「21世紀の黒船たち」」

快走する現代自動車〜トヨタ最大のライバルに浮上

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2011年12月15日(木)

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 韓国の現代(HYUNDAI)自動車が世界中の市場を快走している。傘下の起亜(KIA)自動車を含めたグループの総販売台数は、2000年には世界11位の253万台だったものが、2011年は650万台を超え世界5位以内となる見込みだ。トヨタ自動車との差はわずか80〜90万台でしかない。中国、インドなどの新興国市場に加え、欧米でも販売を伸ばしている。現代自動車グループのクルマの品質は高く、デザインも洗練されている。仕様を、地域のニーズに合わせるなど製品戦略は柔軟だ。同社が短期間に急成長した背景には、ウォン安の追い風とともに、緻密なグローバル戦略があった。

赤字のトヨタを横目に業績は好調

 現代自動車グループの業績は、世界景気が停滞するなかでも好調だ。2011年7〜9月期の連結業績を見ると、現代自動車の売上高は前年同期比14.5%増の18兆9540億ウォン(1兆3000億円)、営業利益は18.9%増の1兆9948億ウォン(1370億円)。起亜自動車の売上高は14.9%増の9兆9900億ウォン(6850億円)、営業利益は21.9%増の8276億ウォン(567億円)を記録した。

 一方、トヨタ自動車の同じ期間の営業利益は、黒字化こそしたものの、前年同期比32.4%減だった。東日本大震災の影響が直撃した4〜6月期を加えた上半期累計(2011年4〜9月)で見ると、売上高は前年同期比17.2%減の8兆159億円、営業利益は325億円の赤字となった。タイの洪水被害の影響が出る10〜12月期は再び厳しい業績が予想される。

 現代自動車の2011年1〜11月累計の世界販売台数は367万9006台。通年目標の400万台を達成するのは確実だ。起亜自動車の250万台(見込み)を加えたグループの総販売台数は、650万台を超えるものと予想される。一方のトヨタ自動車は2011年度の総販売台数の見通しを、前年度比1%増の738万台に下方修正した。その差は年間100万台に満たない。

 こうした状況を、「為替や災害の影響による一時的なもの」とする見方もある。しかし、現代自動車グループの実力を侮ってはならない。

 2011年の世界自動車販売台数を6500万台とすると、現代自動車グループのシェアは10%に達する。前年にフォードを抜いて世界自動車メーカー5位に浮上した地位は盤石になった。2020年までにシェアを15%まで引き上げ、トヨタやフォルクスワーゲンと並ぶトップ3、さらには首位をも狙うシナリオが現実味を帯びてきた。

欧米市場で快進撃を続ける

 2011年は主戦場の米国で大きな成果を収めた。2011年1〜11月までの販売台数は、現代自動車が前年同期比20.6%増の59万4926台、起亜自動車が35.7%増の44万2102台、グループ合計で103万7028台となった。12月の実績を公表する前に、1986年に米国に進出して以来、悲願の年間100万台を突破した。

 車種別に見ると、現代自動車の中小型セダンの「ソナタ」や「エラントラ」、起亜自動車の「ソレント」や「ソウル」が売れている。現代自動車が打ち出しているデザイン哲学「Fluidic Sculpture」のシャープなデザインが好評だ。現代自動車グループは、日系メーカーが得意とする中小型セダン市場に立ちはだかる。

 現代自動車が米国で仕掛けたのは、卓越したマーケティングである。「10年間に10万マイルまで品質保証」や「ガソリン価格の上昇分負担」などのキャンペーンが話題を呼んだ。特に2008年末から始めた現代アシュアランス・プログラムは、リーマンショックを背景に予想外に多くの消費者が支持した。「失業したら、ローンで購入した自動車をコストなしで返却できる」というものだ。

2012年初めに欧州で発売する「i30」(現代本社の展示ブース)
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 欧州市場でも快進撃を続けている。2010年、現代自動車グループの欧州の販売台数は62万900台に達し、トヨタグループの60万300台を上回った。アジアメーカーで初めてトップに躍り出た。欧州市場でのシェアは2002年には2.1%だったが、今年8月には4.8%に上昇している。

 9月には欧州の消費者の嗜好に合わせて開発した「i40」を投入し、さらなるシェアアップを目指す。2011年の欧州における販売目標である前年比12.4%増の69万8000台は射程圏にある。2012年1月には欧州自動車工業会への加盟も認められ、欧州での地盤を着実にする予定だ。

中国やインドなど新興国市場で強みを発揮

 もともと後発メーカーである現代自動車は、新興国市場で強みを発揮してきた。近年、富裕層のみならず、中間層も取り込んで、急速に販売を伸ばしている。

 世界最大の自動車市場となった中国では、2011年、現代自動車グループのシェアは10%に達する見通しだ。8月の現代自動車のシェアは6.9%、起亜自動車は3.9%で、両社を合わせると10.8%のシェアとなった。戦略車として発売した小型車「K2(韓国名プライド)」や「ベルナ(韓国名アクセント)」「ソナタ」「K5」などの新車が貢献し、月間販売台数の自社の記録を塗り替えた。

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著者プロフィール

石原 昇(いしはら・のぼる)

石原 昇

国際経営コンサルタント。シー・サポートセンター代表。
1982年、横浜市立大学大学院経営学研究科修士課程修了。
通信自由化の黎明期に野村総合研究所で通信政策の立案に従事、NTT上場などを手がける。その後、野村證券チーフアナリストとして、内外のグローバル産業の調査研究に携わる。2004年に独立。東大先端研研究員、世銀グループコンサルタント、JETROや各種学会の委員などを歴任。法政大学大学院などで教鞭を執る。
現在、サイコム・ブレインズ、マスターピース・グループなどグローバル企業の社外役員、またベンチャーキャピタル、つくば市や福岡県のアドバイザーも兼務する。「アキバ在住アナリスト石原昇のブログ」でアキバ発イノベーションを発信中。
著書・翻訳書に、「塗りかわる世界の情報通信産業」(野村総合研究所)、「経営分析・日本のトップカンパニー」(共著 日本経済新聞社)、「フラッシュメモリビジネス最前線」(共著 工業調査会)、「イノベーション・パラドックス」(監訳、ファーストプレス社)、「ロボット.イノベーション」(共著、日刊工業新聞社)など。



このコラムについて

石原昇の「21世紀の黒船たち」

 バブル崩壊で失われた90年代から、さらに10年が経過し、日本は長期停滞が続いている。21世紀に入り新興国の勢いは加速し、新たな黒船として日本の前を行く。
 菅内閣は2010年6月に閣議決定した新成長戦略で、「元気な日本」を復活させるシナリオを満載した。「グリーン」と「ライフ」の2つのイノベーションを柱に、7つの戦略分野を掲げ、実行計画(工程表)も示した。
 しかしながら、政治が混迷しているなかで、計画は予定通り進まず、世界市場から日本企業が取り残される事態が相次いでいる。グローバル経済のパラダイム転換は速く、新産業、新市場を巡る世界の競争は熾烈である。失われた20年を経た日本は10年後に確固たるポジションを保持できるか? 現場取材を織り込み、アナリストの視点で、国家、産業、企業の新成長戦略に示唆を与えたい。

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