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【最終回】日本には「こうなりたい」が足りない

「ブレない組織、ブレない生き方」実現のためのヒント(2/2)

  • 武田 斉紀

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2011年12月26日(月)

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「こうなりたい」が明確な会社が元気な理由

 このコラムシリーズは、今年(2011年)の冒頭から、「ブレない組織、ブレない生き方」というテーマで書いてきた。前回に引き続き、「ブレない組織、ブレない生き方」になる(する)ためのヒントについてお話したい。

 前回はフェイスブックを一例に、現状について「しっかりとメリットとデメリットの両サイドを捉えて判断すること」の必要性をご紹介した。だがある会社の新人事制度導入プロジェクトを通して、「ブレない組織、ブレない生き方」を実現するには、それだけでは足りないことも見えてきた。

 ブレない組織やブレない自分でいるためには、現状を前にどう判断するかの明確な規準=「会社としてどうなりたいのか」「自分はどうなりたいのか」が必要なのだ。現状がいくら分かったところで、明確な判断規準がなければ流されるだけ。その都度ブレてしまう。

 今回はこの「あらかじめ明確な判断規準を持っておく」ということについて、お話ししていく。効用としては個人はもちろん、会社などの組織、果てはこの国の未来についてのヒントにもなると思う。

******

 最初は、会社などの組織が、「会社としてどうなりたいのか」をあらかじめ明確にしておくことについて。

 私は普段、企業理念の共有浸透コンサルティングという仕事をしている。「会社としてどうなりたいのか」をあらかじめ明確にして、企業理念という言葉にしておき、これに共感する人を集める。理念を全体で共有浸透させながら、なりたい方向に向かって力を合わせていくことのお手伝いだ。

 基本的な考え方として、「会社=労働を売って対価を得るだけの場所」とは捉えていない。私たちは労働の先で、何かの商品を生み出したり、何かのサービスを提供して、顧客や社会に価値を届けている。「どんな価値を届けたいのか」は、会社によって異なる。同じ商品でも各社で生み出す商品の魅力が異なるように。

 自動車でいえば、クルマが趣味という人を別にすれば、基本的にまず安全で、環境基準を満たしていて、求められる機能もほぼ似たようにも見える。しかしいざ買うとなると、何人乗りか、居住性は、積載性は、走りは、そして全体や細部のデザインはどうか。買う側のチョイスにはそれぞれの好みが表れる。

 各メーカーが提供する車種のラインナップごとにも特徴があるが、各メーカーの特徴も色濃く反映されている。その背景には各社が「自動車メーカーとしてどうなりたいのか」があるようだ。

 トヨタ自動車は、創業以来経営の核として貫いてきたとする『豊田綱領』の一行目に「至誠業務に服し、産業報国の実を挙ぐべし」と掲げる。真面目にクルマ作りに取り組み、社会や国のためになりたいとする姿勢だ。三行目の「華美を戒め、質実剛健たるべし」と合わせれば、同社が生み出すクルマに共通する特徴と重なる。

 ホンダはホンダ・フィロソフィ(ホンダ哲学)の冒頭で、「夢へのチャレンジとその実現で、世界に喜びと感動を」と掲げる。同社の運営方針の一行目には「常に夢と若さを保つこと」とある。日産自動車はビジョンに「人々の生活を豊かに」を、ミッションに「独自性に溢れ、革新的なクルマやサービスを創造し」と記している。

 ここ数十年を振り返ると、各社の「どうなりたいか」が明確に表れている時は、顧客にしっかりと価値が伝わっているようだ。逆にそうでない時には、「らしさが見えない」「商品に魅力がない」と言われたり、時には大きなリコール問題なども引き起こしている。「特徴に縛られ過ぎて殻を破れていない」とする見方もあるだろうが、まずは「こうなりたい」に裏打ちされた「強み」や「らしさ」を生かせなければ、新たな魅力も伝えられない。

 理念の共有浸透を支援してきた私が言えることは、“「会社としてどうなりたいのか」が明確で、全社で共有浸透できている会社は元気がある”ということだ。

 基本方針が明確でブレなければ、社員は自分に合っている会社かどうかを判断できる。中には待遇やイメージだけで選んで苦しんでいる人もいるが、クルマ作りを通して目指す目的や、大切にする価値観が共有できているとストレスが少ない

 それらを共有できていれば、上から支持されなくとも、自分たちで考え判断することもできる。権限委譲を許す会社では、仕事の手応えをより感じられて楽しいはずだ。何より自分たちが信じ追求している価値が顧客や社会に伝わり、認められるのがうれしい。

 会社は次第に「会社=労働を売って対価を得るだけの場所」ではなくなっていく。

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