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ワークライフバランスは女性を幸せにするか?

母親には「育児ペナルティ」、父親には「育児ボーナス」という現実

2012年1月5日(木)

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 日本でも、出産後に育児休業を取り、時短などで仕事と育児を両立させる女性が増えてきた。ただ読者もご承知の通り、同じように働いていても、育児や家事の負担は女性により重くのしかかっているのが現実だ。

 さて、ここで少し読者に考えていただきたい。そういう人生を選択した女性たちは、本当に「幸せ」なのだろうか?

 仕事をするか育児をするかは、言うまでもなく個人の選択である。しかし、両立が難しくなっている現代においては、仕事を優先するばかりに出産・育児を見送る傾向が強まっており、ひいてはこれが少子化の原因になっている。

 つまりミクロの選択がマクロの問題を引き起こすので、仕事と子育ての調和が国の優先課題になってきた。内閣府の憲章では「(1)誰もがやりがいや充実感を感じながら働き、仕事上の責任を果たす一方で、(2)子育て・介護の時間や、家庭、地域、自己啓発等にかかる個人の時間を持てる、(3)健康で豊かな生活ができる社会」であることを提唱している。

 しかし、ワークライフバランスの議論で欠けている論点が一つあるように思われる。それは幸福度に関する考察である。

 いかにして仕事と子育てを両立させるかの議論は先行しているが、そもそも両立することが国民の幸せに結びついているかはよく理解されていない。上記憲章を単純に(1)仕事、(2)家庭、(3)幸せと区別してみよう。(1)と(2)が両立できれば自動的に(3)が実現するわけでは決してない。3つの条件を全て満たしてこそ初めてワークライフバランスが成功したと言えるわけだ。もっともこれは日本に限った欠点ではなく、欧米でも同じである。

 ここでは最近社会科学の分野で進んでいる幸福度の研究をいくつか紹介しつつ、ワークライフバランスと幸福度の接点について考えてみたい。

潜在的には妻に仕事をしてほしくないと思っている

 背景として、ノーベル賞経済学者、米シカゴ大学のゲイリー・ベッカー教授による家庭内分業理論から始めよう。まず夫婦の役割を仕事か家庭の2つに分ける。そして、片方が仕事に専念、もう片方が家庭に専念することがその家計の生産性を最も効率良くすると見なす。言うまでもなく戦後のサラリーマン世帯にはこの「完全分業モデル」が当てはまる。

 即ち、夫が仕事に専念し、妻が専業主婦に徹する世帯が定着し、この体制が長い間維持されてきた。完全分業の元では夫婦お互いの役割が明確で、とりわけ誤解の余地もなかった。だがその後女性の労働参画が進み、この完全分業体制が徐々に崩れ始めた。本来仕事だけしていれば家で感謝されていた男性は、仕事以外の領域でも貢献することが求められるようになった。

 夫婦間の役割分担が変化すれば、意識の違いなどから亀裂も生じる。これが夫婦不和の原因になることは、読者が身近で聞くこともあるかもしれない。この論点を研究した『家庭内分業と結婚の幸福度:日米比較』(小野・リー著,大竹文雄・白石小百合・筒井善郎編著)では、まさにこの「分業体制の歪み」が結婚の不幸の要因になっていることが、日米両国で確認された。

コメント26件コメント/レビュー

女性の幸せ度に注目した男女関係の議論は新鮮に感じました。いままであまり聞いたことがありません。そもそも女性の社会進出の話も、男女平等論からきていると思います。実際に職場での男女格差は少なくなったと言っても現在もあります。そこを是正しようとしているものです。だから、男女の格差をなくすという話はあっても女性が幸せになるという話はなかったと思います。△コメントにもありますが、女性の家事、育児の価値をもっと高く見るべきだと思います。ただ、男女平等の運動をしてきた人は職場での不平等の解消ばかりに気をとられていたので、女性が男性と同じように働けるようになることを目指したわけです。そろそろその考え方をあらためて、女性にとって何が一番よいのかという視点での男女平等運動が必要な時代になったということでしょう。△最近思っている育児に関することがらがあります。それは優秀な女性が社会進出して育児に専念する割合が少なくなったがことが、最近の若者の教育その他のレベル低下につなっているのではないかと感じるのです(ゆとり教育ばかりが原因ではなく)。優秀な女性の比率は変らないと思いますので、昔はその優秀な能力でしっかり子育てしていたので、その子供達は優秀だった。ところが優秀な女性が仕事にその能力を使うようになり、子育てのレベルが全体として低下したのではないかという思いです。(2012/01/11)

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「ワークライフバランスは女性を幸せにするか?」の著者

小野 浩

小野 浩(おの・ひろし)

米テキサスA&M大学准教授

米テキサスA&M大学社会学大学院准教授。1999年、米シカゴ大学社会学博士(Ph.D.)。ノーベル賞経済学者であるゲーリー・ベッカー米シカゴ大学教授に師事。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

女性の幸せ度に注目した男女関係の議論は新鮮に感じました。いままであまり聞いたことがありません。そもそも女性の社会進出の話も、男女平等論からきていると思います。実際に職場での男女格差は少なくなったと言っても現在もあります。そこを是正しようとしているものです。だから、男女の格差をなくすという話はあっても女性が幸せになるという話はなかったと思います。△コメントにもありますが、女性の家事、育児の価値をもっと高く見るべきだと思います。ただ、男女平等の運動をしてきた人は職場での不平等の解消ばかりに気をとられていたので、女性が男性と同じように働けるようになることを目指したわけです。そろそろその考え方をあらためて、女性にとって何が一番よいのかという視点での男女平等運動が必要な時代になったということでしょう。△最近思っている育児に関することがらがあります。それは優秀な女性が社会進出して育児に専念する割合が少なくなったがことが、最近の若者の教育その他のレベル低下につなっているのではないかと感じるのです(ゆとり教育ばかりが原因ではなく)。優秀な女性の比率は変らないと思いますので、昔はその優秀な能力でしっかり子育てしていたので、その子供達は優秀だった。ところが優秀な女性が仕事にその能力を使うようになり、子育てのレベルが全体として低下したのではないかという思いです。(2012/01/11)

私が「ジェンダーの非対称性」として言いたかった事は「終身雇用」「男女同一賃金」「同一労働同一賃金」の三者は、女子が妊娠・出産する限り両立しえないという事です。なぜなら妊娠・出産した時点で男女のキャリアを通じた「同一労働」が不可能となるからです。裏を返せば「同一労働同一賃金」と「男女同一賃金」の両立は「終身雇用」を前提としない欧米でしか通用しない概念という事になります。(2012/01/11)

男女が平等であることは当然であるが、こと妊娠、出産、子育てに関しては男と女では体の構造、生理、機能に大きな隔たりがあり絶対的に平等ではありえない。 にも拘らず、単純に平等であることを求め、そのような社会を作ろうと努力してもそれは無駄な努力に終わるしかない。 さらに悪いことに、女性がそのような絶対的な平等を求めれば、現実問題として実現不能な理想のために結婚・出産をためらい、子育てに専念することに罪悪感を抱かざるを得なくなり、未婚と少子化が進行する。 少子化を迎えていない北欧諸国の内情は、多くの性犯罪と、未婚の母、外国人移民の増加による福祉予算の増大、犯罪の増加を招いている現状をご存じであろうか? 女性が誇りと喜びを持って結婚、妊娠、出産を迎え専念できるよう、社会環境の精神的側面こそ国が支えるべきであろう。 そのような意味において筆者が否定的とらえていると思われる男の子育てボーナスこそが全うな在り方と思う。 男性も積極的に結婚を考え、結婚を支えるに必要な収入が得られるように準備し、女性にとって望ましい男になるよう努力し、妻を得ては妻が子を育てるに安心な環境の維持に必要な収入の確保と妻と子供の安定した生活の守護者となることに喜びを見いだせる男を育てなければならない。 識者の皆さんは全く違う方向に国民を誘導し、多くの女性に不幸をもたらしただけでなく男性にも不幸をもたらしていることを自覚して欲しい。(2012/01/09)

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