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老舗旅館、450年目の復活劇

客室減らして売上高倍増~湯主一條

2012年1月10日(火)

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 旅館が国内で減り続けている。厚生労働省「2010年度衛生行政報告」によれば、1980年代に8万軒強でピークを迎えた旅館数であったが、それ以降毎年1400~1900軒が世の中から消え、2011年3月末時点で4万7000軒弱にまで減った。2010年度は前の年度に比べ2060軒も減少し、いよいよ減少幅が2000軒台に乗った。

 おそらく状況はもっと深刻と思われる。昨年3月11日に発生した東日本大震災後の影響で、宮城県や福島県の一部の数字が入っていないからだ。地震の直接的な被害だけでなく、全国に波及した消費の自粛、原発等の風評被害が2011年に東日本の多くの旅館に重くのしかかり、おそらく2011年度の減少幅はさらに大きいことが容易に想像される。

 長期的な旅館数の減少には構造的な問題がある。バブル経済が崩壊した頃から宿泊客が団体客から個人客へとシフトし、多くの旅館がその変化についていけていないのである。効率性を追求して大型化し、一つの装置産業となってしまい、逆に市場の変化へ対応しきれなくなったのだ。サービスの品質向上への努力を怠ってきたところも多く、同じようなサービスを提供する旅館が多くの温泉地に現れ、し烈な低価格競争が至る所に押し寄せている。集客できない旅館、効率経営できない旅館がどんどん淘汰され、旅館数の激減につながっているといえる。

 厳しい旅館業界で、客室稼働率や宿泊単価を上げている老舗旅館が宮城県白石市の鎌先温泉にある。「時音の宿 湯主一條」の経営改革への取り組みを紹介する。

600年続く温泉地にある老舗旅館

 湯主一條がある鎌先温泉は全国ブランドでもない小さな温泉地である。谷に沿って自動車もすれ違えない細い1本道に5軒の旅館が立ち並び、その一番奥に佇むのが「時音の宿 湯主一條」である。

 山に入った農夫が、作業中に山肌から温泉が湧くのを鎌の先で発見したという伝説が鎌先温泉に残る。開湯は1428年という記録があり、600年近く続く古い名湯だ。湯主一條の当主を代々務める一條家はもともと京都の公家の出身であったが、桶狭間の戦いで破れ、今の旅館がある地を訪れ温泉で傷を癒したという。その後、温泉の権利を地元の農夫から譲り受け、湯小屋を建て1560年に湯治宿を始めた。伊達正宗も入湯したという伝説を持つ歴史ある温泉旅館である。

 この一條家は長男だけが湯主一條の当主を継ぐことができる。今の当主の一條達也氏は20代目になる。湯主一條は長い歴史を持つが、経営が大変に厳しい時代もあった。特に一條氏が19代目から経営を引き継いだときはあらゆる面で危機的な状況であった。

 湯主一條は、長くは湯治宿であった。全国の温泉地が鉄道網の整備で宿泊客によってにぎわうようになった大正時代になると、湯主一條も1925年から、1929年、1939年と3回に分け、宮大工に依頼して木造3階建てで厨房や事務所、客室が41ある今の本館を建設した。戦前から戦後にかけて多くの湯治客が湯主一條を訪れ、6畳の客室を相部屋で提供するときもあったという。

 さらに農林水産業から製造業へ産業構造が転換し、また社会保険が整備され始めると湯治宿の需要が激減し、湯主一條は道路を挟んで本館の反対側に渡り廊下で結ぶ鉄筋コンクリート製の別館を1963年に建築し、それを旅館部として観光客を受け入れるようになった。

道路を挟んである本館と別館

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「老舗旅館、450年目の復活劇」の著者

内藤 耕

内藤 耕(ないとう・こう)

サービス産業革新推進機構代表理事

世界銀行グループ、独立行政法人産業技術総合研究所サービス工学研究センターを経て現職。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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