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2012年 池上彰×岩井克人 新春対談 お金の正体(その1)

ユーロ危機とアメリカ金融危機から見えるもの

2012年1月4日(水)

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 2011年、欧州ではユーロ危機が起き、米国ではウォール街で経済格差の是正を訴えるデモが起きました。

 どちらも騒動の主役は「お金」です。2002年に誕生したヨーロッパの統合通貨ユーロ。そのユーロがつくりあげた経済圏が、参加国の財政破たんなどを機に崩壊の危機に瀕しています。一方、市場経済の極みともいうべきアメリカの金融市場は、ユーロ危機より前の2008年に起きたいわゆるリーマンショックでその土台がぐらつきました。さらに2011年には、相変わらず高給を食む金融関係者や企業経営者に対し、はっきりと反旗を翻す動きがウォール街をはじめアメリカの各所で起きています。

 この危機と騒動の本質は何か? 私たちが「正しい経済」を手に入れるにはどうすればいいのか? そのためにはどうやら「お金の正体」を改めて知る必要がありそうです。そこで今回は、『貨幣論』『二十一世紀の資本主義論』『会社はこれからどうなるか』などの著作で、「お金と資本主義と会社の関係」を考え抜いてきた岩井克人東大名誉教授にご登場いただきます。「お金の正体」、迫ってみましょう。

ユーロ危機はなぜ起きたか?――知性の失敗

池上:昨年2011年は、経済の側面で見ると岩井先生のご専門である『お金』そのもの価値が揺らいだ年でした。そのひとつの象徴がユーロ危機です。「ユーロ」が参加国の従来の通貨を統合して法定通貨となったのは2002年1月ですから、今から10年前ですね。誕生から10年という節目に、ユーロという枠組み自体が破綻の危機にあります。複数の国に共通の通貨を使わせるという仕組みはなぜうまくいかないのでしょうか?

岩井:たしかに統一通貨ユーロの試みは、今のところうまくいっていません。でも、複数の国の通貨を共通化する政策がうまくいったケースもあるのです。例えば、明治維新の日本がそれです。江戸時代には、江戸は金、大阪は銀と、事実上一国に2種類の貨幣単位が存在していました。

江戸の日本はかつての欧州 統一通貨「円」はなぜ成功した?

池上:そのうえ、江戸時代には、藩札もありましたね。今でいう地域通貨です。明治維新前の日本はユーロ統一前のヨーロッパのような通貨体制だったわけですね。藩札はどんな役割を担っていたのでしょうか?

いわい・かつひと氏
1947年、東京都生まれ。東京大学経済学部卒業。マサチューセッツ工科大学Ph.D.。イェール大学助教授、東京大学経済学部教授などを経て、現在は国際基督教大学客員教授、武蔵野大学特任教授、東京財団上席研究員も務める。"Disequilibrium Dynamics"にて日経経済図書文化賞特賞、『貨幣論』にてサントリー学芸賞、『会社はこれからどうなるのか』にて小林秀雄賞受賞、ほか著書多数。(写真:丸毛 透、以下同)

岩井:私の両親は島根県出身ですので島根を例にお話ししましょう。かつて出雲地方を統治していた松江藩ですね。松江藩の経済状況が悪くなると、松江の藩札をたくさん発行します。それは結果として出雲地方に流通するお金の価値を下げることになる。そして江戸に対して、あるいは大阪に対して、藩の産品を輸出しやすくして、「外貨」を稼ぐ。一方、藩札の価値が下がるので、江戸や大阪、あるいは他の藩からの輸入は減らざるを得ない。結果、藩内の雇用をある程度確保することになるわけです。

池上:国をあげて輸出を増やし、安い輸入品が入ってこないようにする現在の政策と変わらなかったんですね。藩ごとの藩札、共通通貨の江戸の金、大阪の銀が混在していたのが江戸時代までの日本の通貨事情だった。

岩井:だから、こうした複数の通貨の両替を生業とする人たちもいました。いわゆる両替商、為替商です。それが明治維新を経て、「円」という通貨に全国統一されました。いろいろな失敗もありましたが、ひとまず通貨を統一して、そしてその統一がある程度うまくいったがゆえに、日本は近代国家として、経済的そして産業的に発達できましたわけです。

池上:なぜ明治維新の日本では、通貨統一がうまくいったのでしょうか?

「労働力の移動」が統一通貨が成立する絶対条件

岩井:それは、通貨の統一と同時に「労働力の移動」が頻繁に起きたからです。ご存知の通り、江戸時代まで、人々は自分の住んでいる藩に縛りつけられていました。明治政府は、通貨統一と相前後して、人々の移動の自由を認めるようになったのです。日本人はどこに住んでもどこで働いてもよくなりました。

 経済学用語に「最適通貨圏」という考え方があります。ある地域で共通通貨を維持するためには、その地域内では、資本や労働力が自由に動くことが前提となるんです。

 明治期の日本では、通貨の統一と同時に、人々と資本とが移動し、経済活動が活発なところに労働力と資本とが投下されるようになりました。それが成功の大きな要因といっていいでしょう。最適通貨圏の模範でした。

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「2012年 池上彰×岩井克人 新春対談 お金の正体(その1)」の著者

池上 彰

池上 彰(いけがみ・あきら)

ジャーナリスト

1950年生まれ。慶応義塾大学経済学部卒業後、NHK入局。報道局主幹を経て、2005年3月よりフリージャーナリストとして活躍中。2012年4月から東京工業大学で東工大生に「教養」を教えている。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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檜山 敦 東京大学先端科学技術研究センター 講師