• BPnet
  • ビジネス
  • IT
  • テクノロジー
  • 医療
  • 建設・不動産
  • TRENDY
  • WOMAN
  • ショッピング
  • 転職
  • ナショジオ
  • 日経電子版

エッ、社長って短命じゃなく“長生き”するって本当?

人間の生命力を引き出す「選択の自由」の不思議な力

2012年1月12日(木)

  • TalknoteTalknote
  • チャットワークチャットワーク
  • Facebook messengerFacebook messenger
  • PocketPocket
  • YammerYammer

※ 灰色文字になっているものは会員限定機能となります

無料会員登録

close

 企業のトップの方が、下々の従業員たちよりずっと長生きする――。これって、ホントの話なんだろうか?

 「確かに元気だ。アマゾンの秘薬とか飲んでるんじゃないのか? なんて思うことあるし」
 「うちのトップも、『肉体的にも、精神的にもしんどくなってきたから、あとせいぜい頑張れて10年だ』って、こないだ残念そうに話してたなぁ。アッハハ、今、既に75歳だけどね」
 「トップになった時は、ストレスで胃にポリープができたり白髪が急に増えたりしてたけど、しんどそうなのは最初だけだったかも。最近はパワー全開で、何かこちらのパワーまで吸い取られている気がする」
 「っていうかさ~、もともと生命力の強い人がトップになるってことなんじゃないの? うちの会社も先代は101歳まで生きたし、トップは金も持ってるから最新の医療も受けれるし」

 元気“すぎる”トップに少々食傷気味の人であれば、こんなことをついつい口走ってしまうことだろう。「お前ら! 俺の苦労も知らずに勝手なこと言うな! どんだけストレスを感じてるか、お前たちは分かっているのか!」とトップは怒るかもしれないけれど、長生きするかどうかは別として、私自身もこれまでにもたくさんの驚くほど元気なトップにお目にかかったことがある。

 で、「トップの寿命が長い」という話の真偽はというと、ホントである。いや、デリケートな問題なので厳密にいうと、「組織のトップは組織の下層で働く人たちよりも、寿命が長い傾向にある」ことが、英国の大規模調査である「ホワイト・ホール・スタディー」によって示されているのだ(詳細は後ほど)。

 この結果は、格差研究やストレス研究に関わる研究者たちに大きな影響をもたらし、米コロンビア大学経営大学院で教鞭を執る社会心理学者のシーナ・アイエンガー教授は、「選択(choose)」というキーワードでこの結果を論じている。一昨年には著書『選択の科学』(文藝春秋)が日本でも発売され、先年末からNHK教育テレビで講義の様子を紹介する『コロンビア白熱教室』という番組も放送されているので、同教授について既にご存じの方も多いかもしれない。

ストレスの雨に対峙する傘となる「裁量権」

 「選択」をテーマに研究を続けるアイエンガー教授は、動物園の動物の寿命が、野生の動物よりはるかに短いのも「選択の自由」がないからであり、ストレスの多いはずのトップの寿命が長いのも、「自分でさまざまなことを決めることができる選択の自由があるからだ」と結論づけた。

 アイエンガー教授の説く「選択の自由」とは、産業ストレスの分野では裁量権、あるいは機会、心理学ではローカス・オブ・コントロール、などが類似概念となる。これらは簡単にいうと、「自分で自由に決めることができる権利」、あるいは「その感覚」のことで、一般的には「裁量権」という言葉が用いられるケースが多い。

 いずれにしても、この「自分で自由に決めることができる権利があるという感覚」はストレスの雨に対峙するための大きな傘であるとともに、働く人のやる気を喚起し、職務満足感や人生の満足度を高めるうえで非常に重要な役目を担うことが、これまで多くの調査結果で示されてきた。

 そして、恐らくこれから組織を動かしていくうえでも、個人の働き方を追求するうえでもキーワードになる。少なくとも、私はそう考えている。上司と部下の関係に代表される組織風土や人間関係と同程度、あるいはそれ以上に重要な、ストレスの雨に対峙する傘となることだろう。

 例えば、「自分で自由に決めることができる権利があるという感覚」を社員に持たせることができたトップは、自らの寿命だけでなく、会社の寿命を延ばすことが可能になるはずだ。

コメント29

「河合薫の新・リーダー術 上司と部下の力学」のバックナンバー

一覧

「エッ、社長って短命じゃなく“長生き”するって本当?」の著者

河合 薫

河合 薫(かわい・かおる)

健康社会学者(Ph.D.)

東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(Ph.D)。産業ストレスやポジティブ心理学など、健康生成論の視点から調査研究を進めている。働く人々のインタビューをフィールドワークとし、その数は600人に迫る。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

日経ビジネスオンラインのトップページへ

記事のレビュー・コメント投稿機能は会員の方のみご利用いただけます

レビューを投稿する

この記事は参考になりましたか?
この記事をお薦めしますか?
読者レビューを見る

コメントを書く

ビジネストレンド

ビジネストレンド一覧

閉じる

いいねして最新記事をチェック

日経ビジネスオンライン

広告をスキップ

名言~日経ビジネス語録

定年後の社会との断絶はシニアの心身の健康を急速に衰えさせる要因となっている。

檜山 敦 東京大学先端科学技術研究センター 講師