「成熟時代に突入した日本へのアジェンダ」

大学4年間で読む本の数、日本は100冊、米国は400冊

「大学生は必死で勉強するもの」を常識に!

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2012年1月13日(金)

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 前回、日本は今何よりも教育に投資しなければならないにもかかわらず、教育に対する公的支出のGDPに対する比率がOECD加盟国中で最低であることを指摘した。特に知識集約型産業を育成するためのカギとなる高等教育(大学)への支出はGDP比で0.5%。OECD加盟国平均(1.0%)の半分でしかないのは深刻な問題である。

 このデータを紹介した後、何人かの方からご指摘を頂いた。「日本の教育においては公的部門ではなく家計が大きな投資を行っている」というものである。

 この指摘はある意味では正しい。

 国家全体として教育に対して支出している総金額のうち、家計を中心とする私的支出が占める割合を見ると、OECD平均が16.5%であるのに対して日本は33.6%と2倍の水準にある。この数値はチリ(41.4%)、韓国(40.4%)に次いでOECD加盟国中3番目の高さである。また、これからの日本経済を支えていく知識集約型産業に直結する高等教育に限って見ると、公的支出は対GDP比で0.5%とOECD平均の1.0%の半分にすぎない。一方で高等教育に対する私的支出は対GDP比で1.0%と、OECD平均0.5%の2倍も負担しているのである。日本の教育は公的な財政支出の少なさを家計が補って支えていると言うことができるのである。

 この事実は国家の教育方針にとどまらず、社会構造に対して重大な影響を及ぼしていることに留意しなければならない。

家計依存は社会階層を固定化する

 その重大な影響とは「社会階層の固定化」の問題である。高いレベルの教育を受けるためには家計を中心とした多額の私的負担が必要となる――とすると、教育機会の獲得において裕福な家庭の子女の方が圧倒的に有利となる。裕福な家庭の子女は両親の経済力によって高度な教育を得て、高収入が得られる職業に就くことができる。

 一方、貧困層は高額な学費が負担できないため、高学歴−高収入のキャリアルートに入ることが難しい。その結果、裕福な家庭の子女はまた裕福になり、貧しい家庭の子女はやはり貧しいまま、という社会階層の固定化が発生することになる。教育支出における家計依存は社会階層が固定化する原因になっているのである。

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著者プロフィール

波頭 亮(はとう・りょう)

1957年生まれ。東京大学経済学部(マクロ経済理論及び経営戦略論専攻)を卒業後、マッキンゼー&カンパニー入社。1988年独立、経 営コンサルティング会社XEEDを設立。幅広い分野における戦略系コンサルティングの第一人者として活躍を続ける一方、明快で斬新なヴィジョンを提起するソシオエコノミストとしても注目されている。
主な著書に「プロフェッショナルコンサルティング」(冨山和彦氏との共著 東洋経済新報社)、「成熟日本への進路」(筑摩書房刊)、「プロフェッショナル原論」(筑摩書房刊)、「組織設計概論―戦略的組織制度の理論と実際」(産業能率大学出版部刊)、「戦略策定概論―企業戦略立案の理論と実際」(産業能率大学出版部刊)などがある。



このコラムについて

成熟時代に突入した日本へのアジェンダ

日本の成長が止まって15年になる。人口は既に減りつつあり、何とか日本を支えて来た個人金融資産も3年前からついに減り始めた。
15年前には、日本経済は世界の18%も占めていたのに、今やその半分の9%でしかない。GDPの金額が15年前と比べて低下している国はOECD30カ国の中で、日本ただ一国だけというありさまである。
明らかに国家のファンダメンタルズが成熟したのだ。なのに、日本は成熟フェーズを迎える覚悟も準備もできていない。
経済や産業が成熟し、人口もピークアウトしてきているのに、社会の仕組みも経済政策も、人々のライフスタイルまでも、成熟フェーズを迎える準備が何ひとつできていないのだ。
あと10年で総人口は440万人減る。その中で高齢者は650万人増え、働き手(雇用年齢人口)は770万人減るのだ。その時、日本の国民が安心して暮らしていくためには、社会の仕組みをどのように変えて、どのような政策を実現しなければならないのか? このコラムで明らかにしていく。

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