「成熟時代に突入した日本へのアジェンダ」

金貨つき個人向け国債は破綻のシグナルか?

日本の国家金融資本主義のしくみ

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2012年1月27日(金)

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 前回は、いま欧米で起きているソブリンリスクはオーバークレディット(過剰信用)リスクであり、2008年に起きたリーマンショックと同類・同根の問題であると説明した。実体経済の実力以上に信用を創造しようとしても、金融市場において必ず“ダウト”の声が掛かってしまう。金融技術を駆使しても身の丈以上の経済的果実を手に入れることはできないということである。

 では、日本はどうなのか、というのが今回のテーマである。

円高は信認の証しではない

 日本ではデフレ、低成長が15年以上続いているものの、今回のソブリンパニックには巻き込まれなかった。それどころか、欧米のソブリンリスクを嫌ったマネーが「円」に流れ込み、円相場は高騰、史上最高水準にある。

 ではこの円高は日本経済への信任と日本財政の盤石さを示しているのか? もちろんそんなことはない。

 国民経済の活力のバロメーターである株価を見れば明らかである。2008年のリーマンショック前の日経平均が1万2200円程度であったのに対して、2012年1月は8700円くらいと約30%も下落している。この間、アメリカのダウ平均は1万1400ドルから1万2400ドルへと約9%上昇しているのだ。これを見ても日本経済への評価は国際経済の中で明らかに低下している。

 日本の財政状況も似たようなものである。リーマンショックの時点でも日本の財政状況はかなり悪かった。公的債務の累積額は2008年時点で770兆円に達していたし、一般会計予算83兆円に対して税収は54兆円しかなかった。

 その後も、日本の財政状況は悪化の一途をたどっている。2011年度末の累積赤字額は100兆円以上も増加して894兆円に上る。この金額は対GDP比で189%。ソブリンリスクのシンボルと目されているイタリアの129%より高い水準である。財政破綻して実質的なデフォルトに追い込まれたギリシアの160%よりも悪い。しかも2011年の税収は41兆円と減る一方だ。財政支出の大盤振る舞いはさらに拡大し、2012年度の予算は90兆円規模になる見込みである。歳入・歳出ギャップが史上最大になるのは確実だ。

 これが日本経済・日本財政の実態である。

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著者プロフィール

波頭 亮(はとう・りょう)

1957年生まれ。東京大学経済学部(マクロ経済理論及び経営戦略論専攻)を卒業後、マッキンゼー&カンパニー入社。1988年独立、経 営コンサルティング会社XEEDを設立。幅広い分野における戦略系コンサルティングの第一人者として活躍を続ける一方、明快で斬新なヴィジョンを提起するソシオエコノミストとしても注目されている。
主な著書に「プロフェッショナルコンサルティング」(冨山和彦氏との共著 東洋経済新報社)、「成熟日本への進路」(筑摩書房刊)、「プロフェッショナル原論」(筑摩書房刊)、「組織設計概論―戦略的組織制度の理論と実際」(産業能率大学出版部刊)、「戦略策定概論―企業戦略立案の理論と実際」(産業能率大学出版部刊)などがある。



このコラムについて

成熟時代に突入した日本へのアジェンダ

日本の成長が止まって15年になる。人口は既に減りつつあり、何とか日本を支えて来た個人金融資産も3年前からついに減り始めた。
15年前には、日本経済は世界の18%も占めていたのに、今やその半分の9%でしかない。GDPの金額が15年前と比べて低下している国はOECD30カ国の中で、日本ただ一国だけというありさまである。
明らかに国家のファンダメンタルズが成熟したのだ。なのに、日本は成熟フェーズを迎える覚悟も準備もできていない。
経済や産業が成熟し、人口もピークアウトしてきているのに、社会の仕組みも経済政策も、人々のライフスタイルまでも、成熟フェーズを迎える準備が何ひとつできていないのだ。
あと10年で総人口は440万人減る。その中で高齢者は650万人増え、働き手(雇用年齢人口)は770万人減るのだ。その時、日本の国民が安心して暮らしていくためには、社会の仕組みをどのように変えて、どのような政策を実現しなければならないのか? このコラムで明らかにしていく。

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