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「実はお金があったから、科学も哲学も文学も民主主義も生まれたのです」

岩井克人×池上彰対談(3)

2012年1月30日(月)

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池上前回、米国の経済危機の原因の1つに、金融機関の経営者たちの暴走が上げられました。しかも彼らはサラリーマンにして巨額の収入を得ている。なぜ、創業者でもない彼らが、べらぼうな高給を取ることができるようになったのか? そして、なぜ暴走してしまったのか? ここで大きな疑問が浮かびます。米国は、株主による経営のチェック、いわゆるコーポレートガバナンス(企業統治)が厳しいはずです。

岩井:そういうことになっています。

会社と経営者の関係を人形浄瑠璃で例えると・・・

池上:オリンパスの経営陣による損失隠し事件でも、「日本のコーポレートガバナンスはなっていない。もっと米国型の株主主導のガバナンスが必要だ」との声がわき上がりました。ところがその米国で、なぜ金融機関のサラリーマン経営者に対して、株主による経営陣へのチェックが機能しなかったのでしょうか?

いわい・かつひと氏
1947年、東京都生まれ。東京大学経済学部卒業。マサチューセッツ工科大学Ph.D.。イェール大学助教授、東京大学経済学部教授などを経て、現在は国際基督教大学客員教授、武蔵野大学特任教授、東京財団上席研究員も務める。"Disequilibrium Dynamics"にて日経経済図書文化賞特賞、『貨幣論』にてサントリー学芸賞、『会社はこれからどうなるのか』にて小林秀雄賞受賞、ほか著書多数。(写真:丸毛 透、以下同)

岩井:会社と経営者の関係を、人形浄瑠璃における人形と浄瑠璃使いの関係に例えると、問題の構造が見えてきます。

 人形浄瑠璃とは、ご存じのように、人形が人間のように、いや人間以上に人間的に演技することによって観客に感動を与えます。当然ですが、その舞台には人形を操る浄瑠璃使いが絶対に必要です。会社とは人形浄瑠璃の人形と同じです。なぜなら、単なる「法人」にすぎないからです。法律の上では人間ですが、実際は契約に署名する手も、従業員を管理する目も、裁判で訴える口もない。会社が経済という舞台でちゃんと演技するためには、それを人間のように動かす浄瑠璃使いが絶対に必要なのです。それが経営者なのです。

 では、人形=会社と、浄瑠璃使い=経営者とが、契約を結ぶとしたら、どうなるでしょうか。浄瑠璃使いが人形の手を取って契約書を書くことになりますね。なにせ、浄瑠璃使いがいなければ、人形=法人は動きませんから。すると、悪意のある経営者ならば、自分に有利な契約書を書くに決まっています。

池上:いくら株主によるコーポレートガバナンスが形式的に厳しくても、結局、会社という「人形」を操るのは「経営者」。その経営者の一存で決められることの方がとても大きい、というわけですか。

岩井:ええ。もちろん、この構造自体が悪い、というわけではありません。

 大半の経営者は、トップとしての良心にしたがって経営します。最初から悪いことをしようと思っている経営者は滅多にいません。そもそも、金融機関に限らず、会社はみんな社会的公器という側面を持っています。特に公開会社は、株式市場で多くの人からお金を集めており、より強い公共性を持っています。

池上:となると、公共性を持つ会社のトップとして、経営者も必然的に良心が求められるわけですね。でも、必ずしも経営者が常に良心に基づいて倫理的に行動するとは限りません。米国におけるエンロン事件、日本におけるオリンパス事件、いずれも経営者の背任行為が会社と市場に著しい損害を与えました。そんな「例外」的な事件も起き得るのではないですか?

岩井:はい。だからこそ、経営者の倫理的な行動は、なんと「忠実義務」として会社法で規定されています。経営者は、自分の利益は抑えて、会社の利益に忠実に経営するという義務を、法律で課せられているのです。ここが会社と法の関係の不思議な点です。法一般の論理で考えれば、倫理を法律として会社に課すのは実に奇妙な話ですから。そして、この忠実義務に違反すると「特別背任罪」として牢屋に入れられてしまいます。

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「「実はお金があったから、科学も哲学も文学も民主主義も生まれたのです」」の著者

池上 彰

池上 彰(いけがみ・あきら)

ジャーナリスト

1950年生まれ。慶応義塾大学経済学部卒業後、NHK入局。報道局主幹を経て、2005年3月よりフリージャーナリストとして活躍中。2012年4月から東京工業大学で東工大生に「教養」を教えている。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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