前編で、マクロ経済学が十分に金融危機を扱ってこなかったと書いた。しかし、マクロ経済学には、金融危機を扱う「バブルの理論」があるではないか、と指摘する読者もいるだろう。「バブル」は日常的に耳にする、良く知られた言葉だ。いわゆるバブルの理論は長い歴史があり、1950年代には成立していた。しかし初期のバブルの理論は今日あまり省みられない。それはなぜだろうか。
初期の理論によれば、バブルは基本的に「無価値な資産」であり、これを誰かが保有することは、基本的には、資源の無駄遣いに過ぎない。すると理論的には、バブルと不況が同時に発生する可能性が高いという帰結が得られる。これがあまりに現実離れしていると受け止められてきたからだ。
言うまでもなく、現実のバブルは好況期に発生しやすい。だからこそ、バブルと、バブルではない真の好景気との識別が難しい。
欠陥を抱える「新世代のバブル理論」
こうした景気循環とバブルとの正の相関関係を考慮したより現実的な「新世代のバブル理論」を、近年ヨーメ・ヴェンチューラ・スペイン・ポンペウ・ファブラ大学教授や青木浩介東京大学准教授らが精力的に研究している。「新世代のバブル理論」のモデルは、現実に資産価格ブームや信用ブームが発生するひとつのメカニズムを捉えており、極めて重要な研究成果だ。だが、この「新世代のバブル理論」にも以下3つの限界がある。
まず、「新世代のバブル理論」のバブルは、初期の理論におけるバブルと違い、何らかの理由でバブル資産を保有することで投資家が実質的な便益を得ると想定している。
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日本銀行金融研究所企画役。1996年東京大学経済学部卒。2002年米オハイオ州立大学Ph.D.。2006-2009年、IMF政策企画審査局エコノミスト。2010年からマクロエコノミック・アセスメントグループのメンバーとして国際的な新銀行規制「バーゼルIII」の策定に参画。著書『現代マクロ経済学講義』(東洋経済新報社)は全国の大学院で教科書として採用されている。

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