“彼ら”が部下になった時、彼らは自分の上司を、「真の上司」として受け入れることができるのだろうか?
次世代のリーダーを育成する目的で2006年4月に開校した中高一貫校「海陽学園」が、この春に初めての卒業生を送り出すことになった。オトナたちが「リーダーを作りたい」と願って設立し、学生たちも「リーダーになりたい」と願って入学した学校から輩出される、最初の“理想のリーダー”予備軍である。
同校はトヨタ自動車、中部電力、JR東海を中心に約80社からの寄付で設立された全寮制の男子校で、設立当初から話題になった。1学年の募集人員は120人。1期生のうち約20人が中学から高校に進学する時点で転校してしまったり、年約300万円という高額の授業料が敬遠され入学者が定員割れしたりと、紆余曲折もあったものの、現在の在校生は616人で、そのうち約100人がこの3月に卒業する。
英国の男子全寮制パブリックスクールの名門「イートン校」をモデルにしたというこの学園で、“理想のリーダー”予備軍たちは共同生活を送っている。さまざまな人たちと共に生活することで、他人と折り合い、渡り合える能力、異質なものと交わるコミュニケーション力を身につけてもらうことを狙いとしているそうだ。寮では協力企業から派遣されている20代の独身男性約30人も滞在し、生活習慣や規律、勉強、さらにはキャリア観についてもきめ細かく指導しているという。
なんだか……すごい。中学校の時には、「リーダー」の存在すらまともに理解していなかったノー天気な私としては、「すごい」という言葉以外に二の句が継げない。「欧米に比べてリーダーを育成する機会のない日本の中で、期待のできる取り組みですね」などと、したり顔でコメントすることはできるかもしれないけれど──。
ただ、本音をポロリと、ほんの少しだけ言わせていただけるなら……、「そんなリーダーのエリートが部下になったら……、イヤだなぁ」と思ってしまうのである。
“真のリーダー”予備軍に感じる脅威
現実には、天と地が引っくり返っても私の部下になる可能性はないのではあるけれど、やっぱりイヤ、だ。
だって、「うちの上司はリーダーとして、なってない」と言われそうだし、「そんなことも知らないで上司なのかよ。チッ」などと舌打ちされそうな気がしてしまうし、とにかく脅威というか、恐怖を感じる。
それは、例えば日本人の前で英語を話す時と似た緊張感だ。「帰国子女の割には、発音が悪い」「帰国子女の割には、文法がおかしい」。そう非難されるんじゃないかと、気が張り詰めるいや~な感覚。
それと同じように、「上司の割には、リーダーの役目が分かっていない」「上司の割には、仕事のやり方がおかしい」などと言われそうな気がして、緊張する。「自分を『上司として』受け入れてくれるのだろうか?」と不安に駆られてしまうのである。
企業で、既に部下を持つ方であっても同じような気分になるに違いない。ただでさえ最近は、時代の価値観が変わってきた影響もあってか、部下との関わり方に悩む上司が増えているわけで。私と同じように、「リーダー」としての英才教育を受けてきた部下を持つことを「脅威」と感じる方もきっといるはずだ。
いずれにしても、部下がリーダー予備軍であれ、ごくごくフツーの部下であれ、「上司として受け入れてもらいたい」と願うのは、上司にとっては当然のこと。別に自分が志願してなった“上司”であろうとなかろうと、上司になった以上、自分の存在意義を確認したいと思うのが、人間の性だ。
そこで今回は、「部下が上司と認める瞬間」について、考えてみようと思う。
そこまで能力が無いと良い上司ではないのですか?そんな人は居ないと思いますよ。 個人的には普通にマネジメントをやってくれればそれで良い上司です。(2012/02/10)