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ひとりの失敗をみんなの宝に変える老舗旅館

リーマンショック後も二ケタ増収維持~東山温泉・向瀧(後編)

2012年2月14日(火)

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 大きな危機が訪れたが、裕一氏も調理場に入り、残ったスタッフと一緒にそれまで思い描いたこづゆ、ニシンの山椒漬け、鯉の甘煮、会津の夏野菜の蒸し焼き、鯉のたたきを中心とした会津の郷土料理に変更した。

向瀧で提供される郷土料理

 同じ2002年には、玄関横にあったタバコとコーヒーの自動販売機を撤去した。飲み物は人が人へと手で運ぶものと考え、冷蔵庫での販売も止めた。かつて売店があり、いろんな土産物を売っていたが、今は向瀧でしか買えない商品に絞った。

 「マイナスをゼロにするのが掃除で、作った時よりも輝く状態にするのが磨きである」――

 こう考え、従業員がはたき、ほうき、ぞうきん、タオルを持って建物を磨きはじめた。建物は時間の経過とともに価値は下がっていくが、向瀧は同じ客が再び宿泊した時に魅力が増すように磨き続けている。

美しく磨かれた向瀧の廊下
向瀧の従業員による磨き

手間をかけるための効率経営

 向瀧は効率経営にも注力した。かつて40人のスタッフのうち客室係が18人いた。今はパートを含めスタッフ23人のうち客室係8人で24室の向瀧を運営している。平均年齢も57歳から32歳になった。スタッフを採用するとき、前職での経験値を持つ者ではなく、異業種から、できれば新卒社員を雇う。

 2001年以前は、冷凍食品や既製品を多く仕入れ、それを切って盛り付けるだけの料理も多かった。加工品はおいしくないだけでなく、仕入れ価格も高い。今の向瀧はほとんどを素材から仕入れる。そして手間をかけて全ての料理を調理していく。日々使う野菜の安定調達のために、地元の公設市場、農家、農協と複数の供給源を分散している。旅行は季節を先取りしないといけないので、もし地元の食材が入らないときは大規模流通にも頼る。

向滝で提供する手作りの羊羹

 チェックイン時に出す茶菓子も、かつては売店で売っている既製品の菓子だったが、今は手作り羊羹に変え、桜、リンゴ、ズンダなど、旬の素材で季節感を出すようにした。羊羹作りは厨房のピーク時間の合間を縫って実施していることから労働時間を増やすことなく、高付加価値を生み出している。

 手間をかけるために、向瀧はスタッフの効率的な働き方を追求し続けている。少しでも早くできるよう、一つ一つの業務を見直しているが、これは経費節減が主な目的ではなく、あくまでも早く調理し、おいしい料理を出すことが目的である。

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「ひとりの失敗をみんなの宝に変える老舗旅館」の著者

内藤 耕

内藤 耕(ないとう・こう)

サービス産業革新推進機構代表理事

世界銀行グループ、独立行政法人産業技術総合研究所サービス工学研究センターを経て現職。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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中谷 巌 「不識塾」塾長、一橋大学名誉教授