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「心のケア」を連呼する偽善と埋まらぬ“傷穴”

「共に生きていく」ことで寄り添い、少しでも重みを分かち合う

2012年3月8日(木)

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 私たちには被災した方たちの悲しみを取り除くことはできないけれど、共に生きることは十分できる。

 今、そして、これから私たちにできること。それは『共に生きる』ことだ。

 これは昨年の3月24日。東日本大震災から2週間が経とうとしていた時に書いたものである(関連記事:被災者支援、「力になろう」と思っちゃダメ!)。

 あれから1年。私たちは、ホントに『共に生きてきた』のだろうか? がれきの処理が一向に進まない現実、保育園に福島の子供が受け入れを拒否されたという報道……。『共に生きる』どころか、被災した方たちの悲しみを増幅してはいまいか?

 特に、「心のケア」という言葉が、やたらにあちらこちらで使われていることには、正直、違和感すら抱いている。

 「これからはやはり、被災した方たちの心のケアが必要ですね」

 訳知り顔でそうコメントしている人たちを見るたびに、「心のケア」という曖昧な言葉だけが、一人歩きしているように思えてならない。

 「心のケア」という言葉が、被災者の方々の間では必ずしも快く受け入れられていないという実情もある。

 「気持ちは、うれしいけど……」。こう言って、言葉を濁す人も少なくないのだ。

大きな災害や事件が起きるたびに多用されるが……

 もともと「心のケア」という言葉は、1995年の阪神・淡路大震災を受けて、神戸大学医学部の精神科医らが中心になって、災害後の心的外傷後ストレス障害(PTSD)の研究が進んだことに由来する。

 復興費として精神保健分野に予算がつき、「兵庫県こころのケアセンター」が設立され、PTSDの専門的研究や治療の専門家の育成が行われた。このセンターの名称にも使われた「こころのケア」という言葉がメディアでも用いられ、世間に広まった。その結果、「PTSDの予防や治療」という本来の意味が失われ、取り方次第でどうにでも受け止められる一般的な言葉になってしまったのである。

 大きな災害や事件が起きるたびに繰り返される、心のケア。それっていったい何なんだ? ケアって何? 心って何?

 ケア(care)は、世話、注意、配慮? いったい何なの?

 今日の4日後は3月11日。そう東日本大震災からちょうど1年が経つ。そこで今回は、「心のケア」について、考えてみようと思う。

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「河合薫の新・リーダー術 上司と部下の力学」のバックナンバー

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「「心のケア」を連呼する偽善と埋まらぬ“傷穴”」の著者

河合 薫

河合 薫(かわい・かおる)

健康社会学者(Ph.D.)

東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(Ph.D)。産業ストレスやポジティブ心理学など、健康生成論の視点から調査研究を進めている。働く人々のインタビューをフィールドワークとし、その数は600人に迫る。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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名和 利男 サイバーディフェンス研究所上級分析官