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お酒から分かる新興国市場の意外な姿

その消費や購買行動の変化に経験則は通用しない

2012年3月12日(月)

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 ワインの歴史は、古い。東京経済大学教授で作家の大岡玲氏の著書『ワインという物語:聖書、神話、文学をワインで読む』(文春新書)で知ったのだが、古代バビロニアの「ギルガメッシュ叙事詩」にワインについての記述があり、これがワインの登場する最古の文献だという。

 少し調べてみたのだが、ギルガメッシュとは、紀元前2600年頃のバビロニア王。そして、紀元前2000年頃に流布していたというシュメール語版の写本の中で、ギルガメッシュ王が洪水に備えて大きな船を作らせ、船大工たちにワインをふるまった、という記述があるらしい。

 これは、ノアの洪水を思わせる話。旧約聖書の創世記の中でも、第9章20節に、洪水の後にノアがワイン用のブドウ畑をつくり始めた、という記述があり、同24節ではノアがワインの酔いから覚めた時の話が出てくる。

 こういった記述と考古学的な証拠を併せて考えると、紀元前3000年頃がブドウ栽培の起源であり、ワインもその頃から造られていたと考えられているようだ。もっとも、自然界にある糖分を酵母がアルコールに変えるという意味では、もっともっと古い時期から、ハチミツ酒などが存在し、人類はそれを発見した後に、自らの手で醸造酒を造り始めたとされている。

中世の錬金術師たちによって考案された蒸留酒

 一方、ブランデー、ウイスキー、あるいはウオッカといった蒸留酒の歴史は、相当新しい。こちらは、英エコノミスト誌のテクノロジー担当ライターであるトム・スタンデージ氏の著書“A History of the World in 6 Glasses”(Randomhouse)=邦訳版は『世界を変えた6つの飲み物 - ビール、ワイン、蒸留酒、コーヒー、紅茶、コーラが語るもうひとつの歴史』(インターシフト)=によれば、比較的アルコール度の低い醸造酒を蒸留することで、高アルコールの酒を作るという技術は、中世の錬金術師たちによって考案されたらしい。

 アルコール(Alcohol)という単語同様、アレンビック(Alembic=蒸留器)という言葉は、アラブ世界からもたらされたもので、お酒の蒸留技術は、紀元1000年頃、アラブ世界の一大学術都市であったスペインのコルドバで、大きく進化したという。

 火をつけると燃える水を意味する「アクア・アーデンス(aqua ardens)」というのは、いかにも錬金術師にふさわしい気がする。その後、蒸留酒は、薬として使われるようになり、「アクア・ビタエ(aqua vitae=命の水)」と呼ばれるようになった。現在でも使われるフランス語の「オー・ド・ヴィー(Eau de vie)」といった言葉に直接つながっているのだろう。

 香水を作るための蒸留、あるいは海水を蒸留することで真水を得る、といったことは、より古い時代から行われていたようだが、ことお酒については、11世紀頃からのことで、ワインと比べれば数千年以上の時を経てからのこととなる。

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「お酒から分かる新興国市場の意外な姿」の著者

御立 尚資

御立 尚資(みたち・たかし)

BCGシニア・パートナー

京都大学文学部卒。米ハーバード大学経営学修士。日本航空を経て現在に至る。事業戦略、グループ経営、M&Aなどの戦略策定・実行支援、経営人材育成、組織能力向上などのプロジェクトを手がける。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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