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自殺大国ニッポン、どうしたら悲劇を減らせるのか

経済学から考える「自殺のインセンティブ」軽減の処方箋

2012年3月28日(水)

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 以前、東北大学の北川章臣教授からご教示いただいたのだが、今昔物語に「御読経の僧が平茸にあたる話」というのがある。僧が平茸にあたって亡くなってしまったところ、左大臣が同情して手厚く葬った。それを聞いた他の僧が一生懸命に平茸を食っている。「なぜそんな危ないことをするのか」と聞いてみると、「手厚く葬ってもらいたくて平茸にあたって死のうと思った」という話である。

 何百年も前の書物に、自殺の経済インセンティブ(動機)に関わる記述が残っていることに驚く。この僧に「そんな危ないことはおやめなさい」と言うべきなのだろうか?。そうだとすれば、その根拠はどこにあるのだろうか?。そして、どうすれば自殺を抑止することができるのだろうか?。今回はこれらの点について考えてみたい。

 言うまでもなく今の日本において自殺は最も深刻な社会問題の1つだ。そこでは、3つの特徴を挙げることができる。

13年間、毎日90人が自殺している国

 第1に、1997年から98年にかけての「急増」、第2に、98年から13年間にわたり年間の自殺者数が3万人を超えるという「恒常性」、第3に、自殺者の「若年化」だ。警察統計によると、2011年の日本の全自殺者数は3万651人であり、13年間、毎日およそ90人もの人々が自殺していることになる。そうした問題から、2006年に自殺対策基本法が成立し、さまざまな自殺防止の取り組みが始まった。

 では、そもそもなぜ自殺「対策」が必要なのだろうか。宗教的な立場から自殺を禁じることに対し、16-17世紀の詩人ジョン・ダンは自殺を弁護する理論を展開した。また、現代でも自殺は個人の自由であるとする考え方も根強い。日本では、新渡戸稲造著(矢内原忠雄訳・岩波文庫)『武士道』第12章「自殺および復仇の制度」にも表れているように、伝統的には切腹を正当化する考え方があり、神風特別攻撃隊のように自殺を賛美する考え方さえもあった。そうだとすれば、一体なぜ自殺を食い止めるための「対策」が必要なのだろうか。

 自殺「対策」が必要と考えられる理由として、第1に自殺が大きな「負の外部性」を生み出すことがある。その1つとして、著名人の自殺など自殺報道によって誘発される後追い自殺のことを「ウェルテル効果」と呼んでおり、韓国ではそうした効果を統計的に見出だした研究結果もある。ここでは、自殺が同時に遺族を生みだし、遺族に対して及ぼす深刻な心理的精神的影響・経済的な「負の外部性」を生み出す点に注目したい。

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「自殺大国ニッポン、どうしたら悲劇を減らせるのか」の著者

澤田 康幸

澤田 康幸(さわだ・やすゆき)

東京大学大学院経済学研究科教授

1990年慶応大学経済学部卒業。大阪大学大学院・東京大学大学院を経て99年米スタンフォード大学経済学部博士課程修了(Ph.D.)。同年より東京大学助教授・准教授を経て、現在同大学経済学研究科教授。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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