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「オレって必要?」 誰もが存在意義を自問する社会の“異常”

意義を感じさせる周りの一言が生きる力を取り戻す契機になる

2012年3月29日(木)

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 3月が間もなく終わる。あっという間だ。毎年、この月になると「書こう」と思いながら、どう書いていいのか悩むテーマがある。今年も、書こうか、書くまいか悩みながら、とうとう最終週になってしまった。

 で、こんな前置きを書いているのだから、今年は書くつもりだ。はい、書きます(前置きが長くてすみません)。

 テーマは、「存在意義を感じられない時」について、である。

 今から3年前。社会人を対象とした講座を持っていた時に、受講生だった方が話してくれた内容からお話ししよう。その男性は、当時45歳。某証券会社に勤め、役職は課長だったと記憶している。

 「課長に昇進して最初に任された職場で、部下が自殺したんです。私よりも3つ年下で、仕事もマジメにやるし、後輩の面倒見もいい穏やかな男性でした。あまりに突然の出来事で、自分も、会社も、彼のご家族も、ただただ驚くばかりでした。なぜ、彼が死を選ぶほど追い詰められていたのか? 必死に考えましたけど、思い当たることがない。本当に、何も思い当たることがなかったんです」

 「周りの社員たちに聞いても、悩んでいるようには見えなかったし、ふさぎ込んでいる様子もなかったと言う。だから余計に、なぜ死んでしまったのか、自分は彼に対して、何かしてしまっていたんじゃないか、と。考えれば考えるほど分からなくて。どうすることもできない自分に、はがゆさと後ろめたさをずっと感じていました」

後で気づいた部下の言葉の重み

 「で、彼が亡くなって随分とたってから、ある会話を思い出した。飲みに行った時に彼が、『自分がいなくとも、仕事って結構、回るんですよね』ってボソッとつぶやいたことがあったんです。当時、私は課長になり立てで、課長という立場になかなかなじめず、結構、悩んでいたので、『課長がいなくとも、チームは回る。そういうチームを作ることができれば、リーダーとしては成功なんだろうね』と、彼の言葉をそのまま自分に置き換えてしまったんです」

 「でも、あの時、彼はひょっとすると、自分の存在意義を感じられずに悩んでいたんじゃないか、と。もし、僕が『たとえ仕事は回っても、キミがいなくなったら僕は困る』と彼に言っていたら、もっと違う結末になっていたんじゃないかって。彼がいなくなってから、私も会社でいろいろとありまして、自分の居場所というか、自分の存在意義を感じられない経験を何度かしました。それで、やっと彼の言葉の重さに気づきました」

 男性によれば、部下の自殺の原因は最後まで分からなかったそうだ。当初、会社は社内で何らかの問題があったのではないかと考え、彼も含め関係する社員たちへのヒアリングが繰り返された。独身だったことから、「仕事に原因がある」と多くの人が考えたそうだ。

 一般的に、自殺に至る原因は複数あると言われており、それぞれが時に複雑に絡み合う。遺書などがあれば、原因を推察することも可能だが、彼の部下のケースでは、遺書はなかった。「発作的に死を選択した」という感じでもなかった。

 だから余計に、部下の死に上司の彼は苦しんだ。自分も何かしら彼を苦しめていたのではないか? 自分は彼のサインを見逃していたのではないか? 時間がたつにつれて、彼の死を意識的に忘れようとしている自分に苦悩したそうだ。

コメント60件コメント/レビュー

自分って他人から見て 必要とされているのかな?なんて常に考えていたら 自己はなくなってしまいますよ。自分のことを自分が必要と思える ということじゃないですか?自分のやっていることに 意味を持てれば他人の評価を気にしてばかりの社会なんて楽しいですか?(2013/04/01)

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「「オレって必要?」 誰もが存在意義を自問する社会の“異常”」の著者

河合 薫

河合 薫(かわい・かおる)

健康社会学者(Ph.D.)

東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(Ph.D)。産業ストレスやポジティブ心理学など、健康生成論の視点から調査研究を進めている。働く人々のインタビューをフィールドワークとし、その数は600人に迫る。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

自分って他人から見て 必要とされているのかな?なんて常に考えていたら 自己はなくなってしまいますよ。自分のことを自分が必要と思える ということじゃないですか?自分のやっていることに 意味を持てれば他人の評価を気にしてばかりの社会なんて楽しいですか?(2013/04/01)

乙武洋匡さんの著書「自分を愛する力」ででてくる「自己肯定感」がすくない人が増えているんでしょうね。私自身も、劣等感が強く、自己肯定感が少ない方で、いなくなってしまいたい、と思うことが何度もありました。日本特有の恥や謙遜の文化。この文化の良い面もある一方で、悪い面が出てきてしまっているように思えてなりません。身内などの近しい人を褒めるのが恥ずかしいから、上司も、親も、「君がいてくれてよかった」的な発言をしてもらった経験が少なく、部下や子供に、そのような言葉をかけられないのだと思います。(2013/03/29)

「子供たちは、大人社会の縮図」と言う専門家の話がありますが、まるで判ってないなと思いますね。大まかに言えば、子供は他者からの排斥による孤独感。大人は緩やかな無関心による孤独感。と私は考えているのですが、違うかな? それと、潜在的に「死にたい」と考えて生きている者も相当数居るはずです。生きる権利だけでなく死ぬ権利も必要と私は考えます。(2012/04/24)

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三品 和広 神戸大学教授