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第17話「女はダメだな。せっかく今の地位まで昇って来たのに、って大泣きさ」

2012年5月21日(月)

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 「満田、ちょっと話がある。そっちに行っていいか?」
 総務部長の片岡からの電話だった。片岡は関連事業も兼任している。

 満田は内外海行の子会社である内外マリンの社長になったばかりだった。
 入社以来30年間、会社で立場が上下になったことは一度もなかった。しかし、子会社の社長になった満田にとって、今の片岡は上司ということになる。用事があれば呼びつけられて当然という関係だった。

 もっとも、満田の仕事は社長のお声がかりで始まった「内外・番外プロジェクト」の推進で、いわば社長であるあの男の直接の指揮のもとにある。その意味では、上下の関係のない部門にいる仲のよい同期生、という関係は変わっていないとも言えた。

 とにかく、向こうから来たいと言うのだ、拒む理由はさらさらなかった。

 数分して部屋に入ってくると片岡は、
 「やあ、落ち着いたようだな」
 穏やかな声をかけてきた。この男はいつもこうなのだ。

 「見てのとおりだ。ここは狭くってどうにもならん。この仕事じゃ一人ひとりと面接して、そいつの人生の秘密を話してもらうのが仕事みたいなもんだからな。どうしたって、天井まで仕切った、独立した部屋が一つ要るんだ。関連事業担当の執行役員さん、なんとかしてくれよ」

 満田は、窓際の自分の席にすわったまま、低いパティションで区切られた小さな区画をアゴでしゃくって示すと、わざとらしく苛立った声をあげてみせた。

 確かに、満田の机と向かい合うように、窓に向かって5、6人が仕事をしているほかには、申し訳のように安物のドアがついた応接スペースが一つあるきりの空間だった。
言われた片岡は、後ろを振り向くとそのドアのあたりに目をやってから、

 「いや、ここは天領だからな。社長直轄地ってことになる。関連事業部なんかの立ち入りが許される場所じゃない」
 冷静な声だった。

 (ああ、こいつ、俺に気をつかってるな。俺が、形の上では関連事業担当の執行役員のこいつの下に付いてるってことを、なんとか誤魔化してやろうってわけだ。こいつらしい)
 満田は微笑んだ。片岡もつられて微笑む。

 「どうしたんだい、わざわざ関連事業担当の執行役員殿が一子会社のむさくるしいところへお出かけになるなんて」

 片岡の表情が曇った。言葉が返ってこない。
 「ちょっと、出られるか?」
 それだけ言うのがやっとのようだった。

 二人で並んでエレベーターに乗りながら、満田は思い返していた。

 (こいつといっしょに時間中に会社から消えるってのも、ずいぶん久しぶりだな。
 こうやっていると、昔と少しも変わらない)

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