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また聞きで人は確信を持てない

あれから1年、正しく怖がる放射能【9】

2012年5月29日(火)

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 最初にちょっと本の告知をさせてください。この連載でも関連のドキュメントを書いたことのある浄土真宗のお寺と「雅楽法会」というものを作った5年越しの共同プロジェクトを記した本がやっと出ました。『笑う親鸞』(河出書房新社)がそれで、自分で言うのもなんですが、これは相当イイ本です。というのは、私は単に法要を作るべく作曲や演奏の準備をしただけで、それに先立って200年300年600年という伝統があり、それに学んでプロジェクトと並行して記したフィールドノートなので、お取次ぎをしている僕がどうこうではなく、価値ある内容をまとめる事が出来たと思っています。

「笑う親鸞」と人一人の生涯を越える伝承

 宗教というのは、人一人の生涯ではどうにもならない、長い年月や生命の連鎖を扱うことができる、言ってみれば精神の器です。僕の仕事、西欧のクラシック音楽もキリスト教会を母体として、人一人の命より長い時間を扱う芸術として発展してきました。僕も、特定の宗教音楽だけを書いているわけではありませんが、「笑う親鸞」の仕事でも、親鸞聖人750年忌お待ち受けの会として、名古屋東別院でお坊さんたちと正式の「清浄楽法要」を作らせて頂きました(5年ほど掛かった、そのメイキング・オブを本には書きました)。

 伝統の継承は、人一人の人生の長さでは足りないものを、それ以上の時間、継続させるという所に主眼があります。まさに「揺り篭から墓場まで」ひと一人の命の全体を支える以上の長い時間を扱うとき、伝統社会では宗教がその担い手になってきました。早い話が、お寺が学問を担ってきた。

 研究室では奈良や京都、各地のお寺で、法要の作法や講式と関連して伽藍の建築を調べる仕事もしています。現場では100年200年という話はザラで応仁の乱後に立てられた500年モノの建物、平安時代からの遺構、さらには法隆寺や東大寺など1500年に及ぶ歳月を経てきたお堂やその木材すら残っています。

 このように長い時間残ってきた建物、またそこで伝承されてきた宗教儀礼を、僕の仕事は音楽ですので文系でも理系でもなく、逆に言えば文系の学術も理系の学術も必要な範囲で正確に適用しながらプロジェクトを進める訳ですが、そこで痛感するのは「累代に及ぶ伝承」の重要さ、またその断絶による情報の欠如の大きさです。

 人という器を通じて、伝統は伝承されてゆきます。どんな古文書も十全ということはありません。それはメディアが録音やヴィデオになっても同様で、所詮は本物にかなうことはありません。

 長い時間、記録を保持し、記憶をとどめるには、人から人、世代から世代への確かな伝承、つまるところ「教育」が決定的に重要だと感じさせられます。

 この『長い時間』と「人間を器とする記憶・記録の伝承」を考えるとき、どうしても思い出してしまうのが「セシウム137 30年」といった放射性同位元素の半減期の長さです。

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