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「教養を学ぶにはどうすればいい? 3教授が答えます」

特別講座 桑子敏雄×上田紀行×池上彰 第3部

2012年6月25日(月)

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池上:さて、ここからは質疑応答の時間です。

 まずは、ニコニコ生放送をご覧の方からの質問をお受けして、それから会場からの質問にお答えします。ああ、1万6000人もの方がご覧になっているそうで、コメント数も6000以上寄せられました。ありがとうございます。(会場拍手)。こうなると全ての質問に答えることはできませんが、時間の許す限りお答えしたいと思います。

「大学の教養の講義はつまらなくて何も学べないのでは?」

池上:最初は「現代の大学のほとんどの教養の講義からは何も生まれない、教養の授業はつまらないものだというと偏見を持っています」という方からの質問です。

「大学に於ける教養は大学の外にのみ存在するのではないでしょうか?」

 いきなり辛口の質問ですね。桑子先生、いかがですか?

桑子 敏雄(くわこ・としお)
哲学者。東京工業大学大学院教授、同リベラルアーツセンター長。博士(文学)。1951年群馬県生まれ、75年東京大学文学部哲学科卒業、同大学院人文科学研究科哲学専修課程、博士課程修了。南山大学助教授などを経て東工大へ。2012年4月よりリベラルアーツセンターを率い、東工大生の「教養」力向上に務める。著書に『西行の風景』『感性の哲学』(日本放送出版協会)、『風景のなかの環境哲学』(東京大学出版会)、『空間の履歴』(東信堂)など多数。
(写真:丸毛 透、以下同)

桑子:教養が大学の中にのみあるのではないのと同じように、教養が外にのみあるわけでもないでしょう。まず、「大学の中」なのか「大学の外」なのかという発想そのものが既存の枠組みに過ぎません。そんな枠組みそのものを破る思考が大切だと思います。私たちの常識を縛っている枠をまずは認識し、その境目を弱め、流動性を高めていく。これが教養教育の第一歩です。

上田:この方は大学の教養の授業が「つまらない」と指摘している。でも、僕は、どんなにつまらないことにも相当の意味があると思っています。なぜならば、「つまらない」ものを経験しないと、人間、何が面白いかもわからないからです。例えば映画を10本観て、そのうち8本がつまらないから、2本が自分の好みに合うということがわかる。つまらない、に出会う経験を惜しんではなりません。それは、面白い、に出会うために必須の道なのです。

 学校の講義もそうです。とりわけ大学にはいろいろな講義があるからこそ自分で選ぶことができる。だからこそ、「つまらない」講義を知るのも重要なんです。「つまらないけど単位が取りやすい」講義を自動的に選んでしまうという、自分の行動原理の見直しにもなります。そのうえで大学に面白いものがなければ外へ出てみればいいし、外に面白さを見つけられなければ、またどこかへいけばいい。世の中そんなに面白いことばかりではないですよ。で、何が言いたいかというと、つまらない講義にも意味があるということです。

桑子:さらにですね、つまらないことを言う人、それから文句ばかりを言う人、ネガティブなことを言う人には、それなりの理由があるんです。この先生の講義はつまらないなと思ったら、なぜつまらないのか自体を考えてみる――というのは面白いですよ。

上田:そもそも教養課程の先生は孤独なんです。学生に対しても「どうせオレの講義内容には興味がなく、点数だけが単位だけがほしいんだろう」とひがんでしまったりする。そこへ、その先生が書いた本を一冊読んで「ここがわからないんです」などと質問をしたらどうなるか。その先生の心の中に花が咲きます。コミットメントは学生側からも必要なんです。そうしなければ、教養の先生の授業から面白いものなんてそう簡単に出ませんよ。

池上:つまり、「いい質問をしろ」ということですよね(笑)。

 私も先日の授業で新入生たちにこう言いました。東工大の先生の中には、自分は研究者であって教育者は片手間と思っている人もいるかもしれません。もしそれで講義がつまらないと思ったら、なぜつまらないのかを分析すれば、その分析自体が大変面白くて先生も反面教師になってくれて自分には力がつくんだよと。すると大学には、ためになる先生ばかりがいることになります(笑)。

「社会に入るための教養、自由で豊かになるための教養、どちらが大事?」

池上:さて、次の質問にいきましょう。

「教養には、社会を形成する一員となるために必要なことを学ぶ面と、自由で豊かな人間性を学ぶ面と、二面があると思います。今の時代は、そのどちらの方が大事でしょうか?」

桑子:さきほどからお話ししていますように、どちらも大切です。あまり面白い答えではないと思いますが。

上田:東工大の学生を事例に挙げますと、東工大生はみんな頭はいいけれど、多くの学生は恐ろしいほど知識がありません。自分がいま地図の中のどのあたりを歩いているかがわからない感じ、なんですね。

 地図を与えてあげると、それを見て歩いていけるんだけれど、そもそも自分の頭の中に地図がない。頭の中にある種の地図をおけるようになるには、ある程度の知識が必要ですし、社会的修練も大切です。両方あってはじめて頭の中に地図ができる。結果、どこに自由があるのか見つけられる。だから、その二つはどちらも大切、表と裏なんじゃないかなと思います。

「漁師として生活し、休日を家族と暮らすにはどんな教養が必要?」

池上:続いて、水産大学に通う女子学生の方からです。将来漁師になるのだそうですが、「漁師として、生活を安定させ、休日には家族と過ごすためには、いまどんな教養を身につけたらいいでしょうか?」。すごい質問ですね。

上田:まず池上さんだったらどう答えますか?

池上:家族と休日を楽しむ、会話をするには、何らかの共通のベースが必要です。家族といえども、それぞれが持っている知識や常識の量や種類は違いますから、話を合わせる必要があります。相手を理解する力、コミュニケーション力が必要だと思います。

 例えば配偶者の祖父や祖母の話を聞くに当たっては、つまらない講義を面白く聞き、孤独な先生の心に花を咲かせるかのような教養が必要になっていくのではないでしょうか。

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「「教養を学ぶにはどうすればいい? 3教授が答えます」」の著者

池上 彰

池上 彰(いけがみ・あきら)

ジャーナリスト

1950年生まれ。慶応義塾大学経済学部卒業後、NHK入局。報道局主幹を経て、2005年3月よりフリージャーナリストとして活躍中。2012年4月から東京工業大学で東工大生に「教養」を教えている。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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名和 利男 サイバーディフェンス研究所上級分析官