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ついに寿命もおカネで買う時代に?

運動習慣から垣間見える健康格差のメカニズム

2012年7月2日(月)

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 仮説(2):健康が豊かさに影響する。
 仮説(1)とは逆の因果関係である。健康は人的資本・能力の一部であり、従ってその人の労働生産性を左右し所得水準を決定する。平たく言えば、病弱であるほど学業にも昇進にも支障が出やすく経済的成功のチャンスが小さくなる、という仮説である。比較的支持する経済学者が多い。

 仮説(3):豊かさと健康の間には直接の因果関係はなく、第3の因子によってもたらされる見せかけの相関である。
 「第3の因子」のもっともらしい例としては、遺伝子や生育環境があげられる。つまり、生まれながらに恵まれた人々が裕福かつ健康に生きているだけ、という説明である。

健康格差と所得格差の関係とは?

 因果関係の解明は、政策を考える上で決定的に重要である。健康格差を小さくする政策が望ましいという社会合意が形成されたとしよう。ではそれをいかに達成すればよいのだろうか?

 もし、健康格差が所得格差の結果なのであれば、所得再分配政策を強化し貧困をなくすことが大事になる。しかし、健康格差が所得格差の原因なのであれば、医療保険制度、保健衛生、医療技術開発といった政策がより重要になってくる。研究の進展が期待される。

 健康に関する議論では、時間軸も重要になる。健康は日々の出来事を反映しながら長い時間をかけて推移していくからである。時間軸を導入した理論を説明するにあたり、まず興味深いデータをお見せしたい。生活習慣病に顕著に関わってくる運動習慣に関するデータである。筆者が住むオーストラリアのデータを用い、運動習慣が所得階層によってどう異なっているかを、運動量を加味して図にしてみた(運動量は運動時間と消費カロリーから換算)。

図1 所得階層別に見た運動習慣

 低所得層は学生・主婦・非正規雇用者が含まれるため若干結果にばらつきがあるが、図からはっきり分かるのは、所得が高いほど運動習慣があり、かつ運動量も上がっていくという点である(米国でも類似の報告がある)。

 一方、学歴・所得の低い層ほど健康診断を受けない、という報告が数多くある。これは健診が無料のケースでも観察される結果である。なぜ、豊かな人ほど運動をし、なぜ低所得層は健康診断を受けないのであろうか?ここで重要なのが、人々は現在だけでなく将来を見越して意思決定を行うという視点である。ミクロ経済学を使ってこの点を考察してみよう。

 ミクロ経済学では健康を「健康資本理論」という考え方で捉える。そこでは「健康という資本」は一般の資本財と同様、放っておくと時間と共に棄損していくが、「投資」によって維持・増進できると考える。この場合の投資というのは、病院に行って健康診断や治療を受ける、体に良いものを食べ運動する、といったことである。喫煙はマイナスの投資といえる。人々は、この投資のコストとリターンに基づいて最適な投資水準を決定する。

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「ついに寿命もおカネで買う時代に?」の著者

丸山 士行

丸山 士行(まるやま・しこう)

ニューサウスウェールズ大研究員

2007年米ノースウェスタン大学経済学博士(Ph.D.)。専門は医療経済学・応用ミクロ経済学。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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