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LCCがもたらしたのは、価格破壊だけではない

差別化のカギは接客サービスよりチケットの使い勝手

2012年7月11日(水)

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 2012年春から、日系の航空会社による格安航空会社、いわゆるローコスト・キャリア(LCC)が相次いで就航した。東京-札幌(4590円~)、大阪-福岡(3590円~)という安さで、日本の航空業界でも、ついに価格破壊が始まったのである。筆者もスペインで初めてLCCを体験した際、あまりの安さ(マドリッド-リスボン間、2.99ユーロ、約310円)に大変感激したのを記憶している。実は、諸外国では、航空業界の価格破壊は約20年前に起こったので、LCC参入の業界全体への影響は既に収束している。そこで本稿では、英ガーディアン、英エコノミスト、 独シュピーゲル(経済紙)、英公共放送BBCなど数多くの欧州大手メディアで紹介された筆者の研究を応用し、欧州などにおけるLCCの参入と、それに伴う「空の価格破壊」がもたらした影響について経済学的な視点から論じてみたい。

従来型航空会社はブランドロイヤルティーが決め手

 LCCの参入が起こる以前の1980年代、伝統的な航空会社(レガシー・キャリア)の価格・競争構造についてよく知られていた事実がある。それは、「競争度」(ルートごとの航空会社の数)が激しくなると、価格分布(料金のばらつき)が大きくなるという関係だ。

 この場合、価格のばらつきは、一つの航空会社が同じルート(例えば、ニューヨーク~ロサンゼルス間)の異なる乗客に異なる料金をつける能力を測る指標、と考えてよい。だが教科書的な論法に従えば、これは逆の関係が成り立っていなければならない。つまり、競争度が増すほど、企業が乗客ごとに異なる価格をつける能力は下がり、極端な場合、完全な競争市場では、航空会社はただのプライス・テイカー(=自らの価格設定能力がゼロ)にならなければならない。

 これに対し、伝統的な航空産業で最も重要であると考えられてきたのが、ブランドロイヤルティー(ブランドへの忠誠心)だ。たとえば、あるビジネスマンがマイレージ・プログラムに参加しているなどの理由で、同じ航空会社を使い続けるとしよう。この場合、どのみち勤務先の会社が旅費を払ってくれるから、多少の値動きには関心がない。

 これに対し、安上がりに済ませたい学生や旅行者は、ちょっとした値動きにも敏感だ。ここで、新規参入などにより産業全体の競争度が上がると、ブランドロイヤルティーがある顧客層にはあまり影響がない反面、値段に敏感な顧客層を奪い合う競争が激しくなる。価格分布のうち低価格帯が強い影響をうけ、さらに価格が引き下げられるのだ。よって、競争度と料金のばらつき方の間に正の相関が生まれることになる、とされていた。

LCC参入によって業界の構造が変化

 しかしながらLCC参入後の欧米では、それ以前とは全く正反対の関係が観察された。つまり、競争度が増すほど、航空料金のばらつきが小さくなったのである。そしてその理由は、LCC参入により、業界全体の市場構造が徐々にではあるが変質したためだと考えられている。

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「LCCがもたらしたのは、価格破壊だけではない」の著者

渡辺 誠

渡辺 誠(わたなべ・まこと)

オランダ・アムステルダム大准教授

1996年早稲田大学政経学部経済学科卒。98年京都大学大学院経済学研究科修士課程修了。2006年英エセックス大学経済学博士。カルロス三世大学を経て現職。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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