• BPnet
  • ビジネス
  • IT
  • テクノロジー
  • 医療
  • 建設・不動産
  • TRENDY
  • WOMAN
  • ショッピング
  • 転職
  • ナショジオ
  • 日経電子版

第19話「離婚しちまったってわけか。ずいぶん過激な話だな」

2012年7月23日(月)

  • TalknoteTalknote
  • チャットワークチャットワーク
  • Facebook messengerFacebook messenger
  • PocketPocket
  • YammerYammer

※ 灰色文字になっているものは会員限定機能となります

無料会員登録

close

前回から読む)

 「社長、大変です。
 片岡の奴、女房と別れてしまいました」
 満田だった。あの男の部屋に駆け込むと、机の前で直立したまま報告した。

 「ふーん、どうしたっていうんだ」
 「あの女房ですよ。『あなたがそんな危ないことをするんなら、私の財産を分けてからにしてくれ』って言ったんだそうですよ。
 それで片岡の奴、『ああ、何もかも持って行け』だなんて言っちまって。社長がお会いになった、その晩のことだそうです」

 「おやおや、それはまた思い切ったことを」
 「そんなところのある女でしたがね、昔から。
 外見は、ごらんのとおり大人しげなんですが、どうしてどうして。
 芯が強いっていや聞こえはいいけれど、ほんの詰まらないことでも納得がいかないと梃子でも動かないってとこがありましてね。私も困らされたものです」

 満田は、しまったと思った。片岡克平の妻は自分の昔のガールフレンドでしたなどと、なにも社長に告白することはなかったのだ。

 「へえ、そうかい。
 君、他人の女房のことにしちゃ、よくわかっているな」
 あの男が微笑みながら問いかけた。

 「いえ、その。そうだって片岡がいつもこぼしていたので」
 「おやおや。
 君のものの言い方だと、自分の過去の体験、それも痛切な体験を、未だに褪せない記憶にもとづいて話しています、っていうようだったがな。
 ま、そんなことはどうでもいいさ。
 それより、片岡だ。
 離婚しちまったってわけか。ずいぶん過激な話だな」

 そう言いながら、椅子の座面の左下にあるフックに手を伸ばして、背もたれを後ろに倒す。

 「いや、勘違いするな。過激だというのは片岡のことだぞ。
 近ごろじゃあ、亭主のやることが気に入らないからって離婚するってのは、一定の金のある、中年以上の女性の間では珍しくもないさ。限られた、豊かな人たちにしか縁のないことであっても、もう女性は我慢しない。

 中には亭主の定年を待っている、っていうのもいるっていうことだそうだ。
 人は仕方がないから我慢ができるんだ。
 片岡だって、独立すりゃ、それなりのまとまった金が入るわけだしな。財産分与という名目で亭主から取り上げれば、税金もかからん」

 満田は、(それは違うんじゃないか)と思った。片岡慶子にとっても片岡にとっても、そんなに簡単なことではありえないはずだ。それを、目の前の男は金の高で測ってみせる、税金がなどと言う。そんなことってあるものか。だが、満田の口からはなにも出てこない。

コメント0

「あの男の正体(はらわた)」のバックナンバー

一覧

日経ビジネスオンラインのトップページへ

記事のレビュー・コメント投稿機能は会員の方のみご利用いただけます

レビューを投稿する

この記事は参考になりましたか?
この記事をお薦めしますか?
読者レビューを見る

コメントを書く

コメント入力

コメント(0件)

ビジネストレンド

ビジネストレンド一覧

閉じる

いいねして最新記事をチェック