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身体はとっくに限界、気持ちだけで1万2000キロを走り抜いた

第16回・中国、ユーラシア大陸横断ゴール編

  • 大角 理佳

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2012年7月26日(木)

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 ユーラシア大陸横断をめざすガリバーインターナショナル会長・羽鳥兼市氏の挑戦は、6月、いよいよ最後のヤマ場を迎えていた。最終ゴールは北京の日本大使館前。チームがパリを出発してからちょうど1年が経つ。中国に入国した当初は雪がちらついていたのに、6月になると30度を超えるようになってきた。

 羽鳥氏と、ともに走ってきたガリバー執行役員の須釜武伸氏、羽鳥氏の三男である彰人氏はそれぞれ違う形で、疲労のピークを感じていた。走っていると、予想もしなかったところに痛みを感じたり、突然の体調不良に見舞われることも。筋肉疲労や内蔵疲労もあるが、精神的にもギリギリの状態の中で自分をコントロールしていることは、誰の目からも明らかだった。帯同するサポーター全員の献身的なケアで何とか翌日につなげているような状態だった。トレーナーたちは、3人の筋肉の状態や疲労度を見ながら、休憩中やホテルでのケアの時間を増やした。故障や過労のためにランナーが走れず歩いている日には、一緒に歩いてサポートする日もあった。

 行ったのは治療だけではない。身体に合った日本食で、栄養補給と気分転換をしてもらえるようにと、サポート隊長・添田進二氏の料理の腕前はますます磨きがかかっていった。焼うどん、いなり寿司、冷やし中華に春雨サラダ、炊き込みごはん、麻婆ナス丼…。どれも「キャンピングカーで作る簡単メニュー」とは言えない、手の込んだ内容である。険しい走行ルートが予想されるときほど、状況に応じてランナーの喜ぶもの、気分転換になるものをと考えて、現地で調達できる食材を使いながら、毎日いろんな家庭料理を作り上げた。不調を押して走っているランナーには、少しでも胃に負担のかからない内容や量を添田氏が考えて、お粥などをそっと差し出した。

ショートカットと、その代償

 また、この頃からスタッフたちが力を注いだのは、1キロメートルでも短い距離で北京にたどり着くためのルートを見つけることだった。「Googleマップ」と紙の地図を照らし合わせながら、最短ルートを見つけ出そうと毎晩遅くまでスタッフミーティングが行われた。しかし地図上の近道を進んでいくと、思わぬ事態に出くわすこともあった。

 ある日、後半戦の20キロを走っていたときのこと。
 分かれ道で、トレーナーが「こちらを行けば1キロ短縮できます」と一方の道を指差した。それまでに走っていた道は路面に凹凸のない舗装道路。言われた道は、走りにくそうな砂利道だ。

 「俺は脚に負担の掛からない舗装を行く。行きたい人はどうぞ」と羽鳥氏。彰人氏もその言葉に従ってついて行った。須釜氏だけが、案内された不整地を選んだ。極度の疲労感に襲われていた須釜氏にとって、1キロでも短い道があるならそちらのほうが魅力的だったのだ。それに「苦労して探してくれたのだから」という、スタッフへの気遣いもあった。二手に分かれたランナーにはサポーターがつき、それぞれに走り出した。

 羽鳥氏の選んだ舗装道路はほとんどが下り坂。須釜氏が選んだ不整地は、道なき道を行くトレッキングのようなコースだった。しかし1キロのショートカットだと言われれば、須釜氏の心は軽かった。さて、道が再び合流地点に差し掛かったそのとき。

 はるか後ろを走っているはずの会長チームが須釜チームの前方を軽やかに通り過ぎていったのだ。実測してみると、須釜氏の走ったトレッキングルートのほうが舗装道路よりも700メートルほど長かったのだ。休憩場所にたどり着いてもしばらくは落胆を隠せない様子のスタッフと須釜氏だったが、会長はこの「ゲーム」の勝利を朗らかに楽しんでいる。その様子を見ているうちに、なぜか心地よい疲労感へと変わり、こう考えることにした。
 「次の成功につながるなら、この失敗も『良かった』じゃないか」。

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