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第20話「男っていうのはいつも渇いているもんだって教えてやった」

2012年8月20日(月)

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 千代田区一番町にあるマンションの最上階、ペントハウスをあの男は所有している。東を向いて大きく開いた窓の外に皇居の緑が広がっていて、その向こう側には、はるかに丸の内の高層ビル群を望むことができる。東京ではこれ以上のところはない。

 そのダイニングで、あの男の朝ごはんが終わったばかりのところだった。

 「慶子、ご亭主と別れてしまったみたいね」
 テーブルごしに、あの男の妻が話しかけた。

 「いつも、あんなにご亭主の自慢ばかりしていたのに。いったい、どうしたのかしら。
 あなた、ご存知なんでしょう?」

 あの男は、ここで妻と一人娘と暮らしている。出張でもしなければ、毎晩ここで眠るのだ。だが、出張は数多い。自分で決める出張だ。

 娘は、入ったばかりの大学へとっくに出て行ってしまっている。
 目の前の妻は、アメリカン・ショートヘアの親子を二匹、膝に抱えていた。自分の朝食は、娘と二人、早くに済ませている。

 あの男が朝食を自宅でとることは平日には何度もない。それでも自宅で食べるときには、決まってフレッシュ・オレンジジュースに始まって、トーストと卵二つのハムエッグになる。妻の買ってきたヨーグルトがそえられて、季節の果物が並ぶ。今日は見事な大粒のイチゴだった。

 「知らんね。
 いや、片岡の奴が夫婦別れしたって話は聞いたさ。満田が部屋に飛び込んできて報告してくれたからな」

 「でも、慶子はあなたに言われたことがとってもショックだったみたいよ」
 「おやおや、片岡の夫婦別れまで僕のせいになってしまうのか。別れるとなっても、女房ってやつは亭主大事で、赤の他人が憎いってわけか。
 健気な女心だな」

 あの男は、軽く鼻をならすと、手元の紅茶の飲みさしに手を伸ばした。紅茶は冷めてからが美味しいといつも言っている。朝は、イングリッシュ・ブレックファストを飲むことに決めている。ミルクは入れないことが多い。

 「あなた、慶子になんて言ったの?」
 「なにも言わん。ただ、男っていうのはいつも渇いているもんだって、教えてやった。
 あんまり身勝手なんでな」

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